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Eighth Doll  作者: セリカ
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先の予定


「エルナさん、無事に戻って来ることをお祈りしています」


 レンちゃんが私の手を取っていつものお祈りをしてくれます。

 私が森の探索に向かう時は、必ずレンちゃんが見送ってくれます。

 恋人関係になってからは、レンちゃんがとても積極的な行動をするようになったのです。

 今までは、恥ずかしがって直ぐに逃げ出してしまっていたのですが、一緒に居る時は私に尽くしてくれて探索などに出かける時は必ず戻ってきて欲しいとお祈りをしてくれます。

 性別は逆になりますが、私の知っている物語の主人公の彼女みたいです。

 私とレンちゃんは正式に恋人関係になったので、間違ってはいないのですが立ち位置が逆ですね。

 私よりも乙女度は高いので、守ってあげたい気持ちにもなってきます。


「いつもとは違って数日は掛かると思いますが、待っていてくださいね」


「お戻りになった日には、エルナさんに……頑張って尽くします……」


「は、はい……」


 レンちゃんが恥ずかしそうに私に尽くしてくれるなんて言うので、私も照れてしまいました。

 事情を理解しているフィスさんはニヤニヤしながら私を見ています。

 

「ふーん……エルナちゃんがついにレンちゃんに手を出したのね」


 その様子を見ていたシャーリーさんは何となく察したようです。

 そうです。

 数日前に私とレンちゃんは深い関係になってしまいました。

 間違っているとすれば、誘惑に負けて手を出されることを許してしまったことです。

 あんな可愛い子に言い寄られて受け入れない選択肢を取れる人はいないと思います。

 意外なことにフィスさんの英才教育の成果なのか、私よりも技能値が上です。

 技術力の高いお姉様に攻められて篭絡された……ような感じなのです。


「恥ずかしがっている所で申し訳ないのですが、改めてエルナ様に注意をしておきます。手強いと感じた魔獣との戦闘はなるべく避けるようにしてください」


 レンちゃんとの夜の出来事を思い出しているとフィスさんが警告をしてきました。

 手当たり次第に魔物を狩りまくっていたフィスさんが戦闘回避の提案をしてくるなんて意外です。


「フィスさんでも危険と思う相手がいるのですか?」


「今では知っている者も少ないのですが、あれは僕達が作られる前に開発されていた生体兵器とも呼べる存在です。僕達の実戦テスト用に生み出された魔物と違ってリミッターの外れているような存在も居るはずです」


 魔獣と魔物にそんな違いがあったのですか?

 最初に聞いた時は実験の成れの果てみたいな話を聞いていたのですが、兵器として生み出されているのでしたら話が変わってくると思います。


「こないだ聞いた時はそんなことを言っていませんでしたよね?」


「あの時は、他の者たちもいましたからね。中には僕達に近い戦闘能力を持つ魔獣も存在する可能性もあります。更に危険なのは他の生命体と組み合わせて生み出されて知能がかなり高い魔獣もいます」


「知能が高いと言うのは、ただ襲ってくるだけとは違うと言う事ですか?」


 もしくは、連携を組んだり不意打ちみたいなことをしてくるのでしょうか?


「うーん……教えてしまっても良いのか悩みましたが、もしもそのタイプに遭遇してしまった場合に知ることになってしまうので、危険回避の為にも教えておきます。知能が高い魔獣は人間と組み合わせて生み出された存在です」


「人間とですか!?」


「そそ。僕もルナティアから教えられた内容しか知りませんが、当時はかなり非道な実験をしていたそうです。人格以外にも知能が高い分だけ完全な支配が出来ないので計画破棄されたと聞いています。そののちに生み出されたのが僕達です。最初から主と定めた人物の為に行動するように仕組まれているのですが、柔軟な思考を持たせる為に最初の登録者を模倣しつつ時間経過が長いほど人に近い思考を持ってしまう長所であり欠点があります。だから最初さえ完全な支配下に置ければ、後の世代は近い思考を持つと想定された者が次の登録者になれば良いと言う設定になっているのです。その設定と言うのが最初の登録者以外とは適合率が低いと弱体化してしまうと言う欠点です。僕達のことはいいとして、古参の魔獣の中には長い時を生きている個体も存在しています。そいつらは逆に時間経過で強力な力を持っている可能性があります」


 魔獣のことについてはとんでもない内容です。

 どのような実験をしていたのか分かりませんが、古代の人達は恐ろしいことをしていたのが分かりました。

 数日にわたって森で魔獣を倒していたのですが、中には人間と組み合わされた存在も居たのかもしれません。

 ふと考えてみると……中には人型に近い魔獣もいました。

 頭部は獣で体格も良かったのですが、なんて言っているのか分かりませんが会話と言うか連携が取れていた魔獣もいたと思います。

 もしかすると……しかし、相手も敵対行動を取るのですから、戦わない選択肢はありません。

 それで、躊躇などしていたら、こちらが殺されてしまいます。

 相手との会話が可能だった時に考えることにしたいと思います。

 他にも自分のことも教えてくれましたが、特に適合率については毎日のように私とレンちゃんに子供を作るようにせかして来るので……理解はしています。

 ですが、古参の魔獣と言いましたが、どのくらいの昔のことなのかは知りませんがそんなに長生きしている魔獣もいるのでしょうか?


「古参の魔獣と言いましてもフィスさんより長生きしていることはありませんよね?」


「知能が高く会話が出来る存在と遭遇すれば知ることができますが、生体兵器の研究と同時に権力者の欲望の研究もされていたのです。その研究内容はこの場では言えませんが、もしかしたら知ることができるかもしれません」


 会話が可能な魔獣もいるみたいです。

 生体兵器と言うのは、戦争に関係すると考えられますが、権力者の欲望とは別なのでしょうか?


「教えられない研究内容とは、私が知るといけない事なのですか?」


「いけないと言うよりも知らない方がいい人がいるからです。誰とは言いませんが、僕は行かない方が良いと思うんですけどねー」


 フィスさんはそう言いながら、コレットちゃんに視線を飛ばしています。

 まさかとは思いますが、コレットちゃんに関係することなのでしょうか?

 それに気づいたコレットちゃんが答えました。


「古代都市の資料で気になることがあったので、わらわも確認がしたいのじゃ。それに東の渓谷と言うのはライラの言っていた施設があるのかもしれん。そこに行けばこれが役に立つのかもしれんしな」


 そう言ってコレットちゃんが首に下げていた綺麗なカードを取り出しました。

 あれは、以前にライラさんがくれた物です。

 コレットちゃんに関係があるようなので、渡しておいたのです。


「なんだ、カードキーを持っていたのですか。それがなければ重要な施設には絶対に入れないのですが、知らない方が良いと思うんだけどなー」


「お主がそう言うと言うことは、間違いなく施設が存在しているんじゃな」


「僕は警告しました。後は自己責任ですよー」


「どんな結果であろうともわらわの探究心は止められんのじゃ」


「それなら構いませんが、頑張ってください。それでは僕達は、皆様のお帰りをお待ちしています」


 コレットちゃんとの会話が終わるとフィスさんはスカートの裾を掴んで私達にお辞儀をしています。

 同じくレンちゃんも倣っています。

 二人とも同じメイド服を毎日着ていますので、現在の立ち位置は私の専属メイドになっています。

 もっともフィスさんはいつもどこかに出かけていますので、常に行動を共にしているのはレンちゃんだけです。

 話が終わると二人に見送られて森に向かうことにしました。




 

 ――――――――――――――――――





「お父様、お帰りなさいませ」


「うむ。エルナ殿が見当たらぬが、勉強でもさせておるのか?」


 ヘレナが出迎えてくれたが、エルナ殿が見えぬな。

 時間的には昼食の時間の前だが、何かしらの講義でも受けておるのかもしれない。

 わしは、特に何も言わなかったが、ヘレナが最低限のマナーだけは覚えさせると言っていたからな。


「あの子は森の奥地にある渓谷に向かいました」


「あそこか……我々と違って十分な戦力があるので問題はないと思うが、お前が許可を出したのか?」


 ヘレナは部隊を一度壊滅寸前に追い込まれて以来は、渓谷には行かなくなった。

 古代の個体であるノルンを連れていても戦闘に特化していない護衛型一人では対処が間に合わなかったようだ。


「エルナさんは粗削りですが、技術さえ身に付ければ私やノルンよりも強くなれます。それに最小人数ですが、シアさんやシャーリーさんもいます。私の時とは違って大丈夫だと思っています。それに危険と判断したら、無理をせずに戻る約束もしていますからね」


「フィス殿は、一緒に行かなかったのか?」


 エルナ殿に惚れこんでいるので必ず付いて行くと思うのだがな。


「何か私用があるようで残っています」


「あのシャーリーと言う者もやはり人を超えているのか?」


「私の見立てでは、フィスさん達に近いと思われます。仮に諜報型の能力を使っているとしても直接接触してしまえば、ノルンにも認識は可能なのに古代の個体と認識が出来ないみたいなのです。他の者たちも気付いていませんが、私から見れば本人はそれらしく振舞っていますが違和感があります」


 ヘレナはわしに似ておるのか、昔から勘が良いからな。

 わしは、当時に死体と思っていた者が次に遭遇した時に動き回っているので確信をしておる。

 それに見た目がなんとなく若返っておるような気もする。

 古代都市に交代要員として派遣していた者達によれば、立ち合いをすると負け知らずらしい。

 エルナ殿と同じで、仮に生きていたとしてもあの状態から直ぐに立ち合いなど不可能だ。

 恐らくはエルナ殿と同じような方法で復活したと考えるのが正しいのであろう。


「何人で向かったのだ?」


「エルナさんとシアさんを含めたお仲間だった五人です」


「わしらと違って少数で行けるとは羨ましい限りだな」


 わしも若い頃は奥地を目指したものだが、強力な魔獣と遭遇すると勝ち目はないからな。

 消息不明となったナンバー・サードのカリスがいれば対処は出来ていただろうな。


「夫のラグナルもじきに到着すると思います」


「そうか。アヴェルにもノルンを連れて参加するように伝えておいてくれ。あれも先に到着しているはずだ」


「あの真面目人間は、私の誘いを断って詰まらない事務仕事をしています。エルナさんは私の誘いに乗ってくれるのに実の息子と娘は少しも私に似なかったのがとても残念です」


 ヘレナには二人の子供がいるがどちらも婿のラグナルに似てしまった。

 副官としては有能だったが面白みに欠けるのが欠点だったからな。

 わしとしては、ヘレナがあの堅物と結婚をしたのが不思議でならない。

 わしがラグナルの立場なら、いくら上官の娘とはいえ問題ばかり起こす娘の後始末をする度に早くどこかに嫁いで退役して欲しいと考えるんだがな。

 最後に起こした問題が、責任を無理矢理取らせて婿養子にしたことだ。

 わしとしては、有能な跡取りが出来て助かったがな。

 その後、今後のワグナー家の方針を決める話し合いの場が持たれた。

 まず、ラグナルから本国での報告だ。

 古代都市における古代の魔道船の改修可能な件が挙げられると複数の家が個体の所持を明らかにして、魔道船の譲渡を求めてきた。

 やはり古代の個体を秘匿しつつも隠蔽しておったが、量産型とは言え古代の魔道船が手に入るなら名乗りを上げたな。

 数の少ない強力な個体は手に入らなくとも標準型の個体は探索次第では手に入れることは可能だ。

 その為に未発見の古代の遺跡の探索にはどの家も力を入れておるからな。

 問題なのは、手つかずの古代の魔道船の方だ。

 こればかりは未発見の浮遊島を探し出すしかない。

 地上の遺跡はあらかた探索されておるので、港らしきものはあっても船は無いのが大半だ。

 恐らくは過去の大戦で地上の兵力は破壊されたか全て使用されたに違いない。

 残っているとすれば、戦火を免れた浮遊島にだけ存在している。

 まあ、王家に莫大な資産を払って自身の家の武威を示すのは良いが戦力が揃ったところでバートランド王国との戦いに駆り出されるだけだがな。

 バートランド王国の残りの戦力が、フィス殿の内容通りのままなら、数年後には開戦に踏み切る可能性が出てきたわけだ。

 我が家に対しては、エルナ殿を本国に連れてくるようにとの催促が来ておるらしい。

 不明の個体であるシア殿の見定めと追従しているフィス殿を見極めたいのであろう。

 特に古代都市を目覚めさせたシア殿に命じて他の沈黙している古代都市に関しても復旧が可能なら言うことは無いからな。

 能力次第では、差し出すように命じられそうだがな。

 他には現在でも握りつぶしているが、求婚状が連日のように送られてきているそうだ。

 わしがアヴェルの相手にせずに養女としたからだ。

 可能な限りの情報隠蔽はしたのだが、我が領内にも密偵の多いことだな。

 エルナ殿とは少々話をしたが、あの娘も特殊故に簡単になびかせるのは難しかろう。

 わしが生きている内は無理かもしれんが、アヴェルの代で取り込めれば良いと考えておる。

 フィス殿の予定も考慮すれば、ワグナー家の権威はその時に取り戻せる。


「閣下、ドゥーラ伯爵家から養女になった娘を息子の婚約者になるように取り計らって欲しいと内密に話が来ておりますが如何なさいますか」

 

 ラグナルの報告を聞き終えて最後に個別の婚約話か。

 ドゥーラ伯爵家とは、八十年前にトウェルヴとその母艦を失った家だ。

 馬鹿な息子の所為で最強の船とも言える要塞艦を無くした為にこの国での権力が大幅に低下したのだ。

 本来なら、ワグナー家と同じ公爵家だったが、降格処分にされてしまった。

 あれを失ったことで、他の国に対する軍事的な優位性を失ってしまったからな。

 今回の古代の魔道船の改修後に譲渡を求めなかったところを見ると、古代の個体を所有していないのであろう。

 そこに古くからの付き合いのある我が家が公式的には三体も確保していることは知ったので欲しているという所だろう。

 敵対している訳ではないが、ドゥーラ家が落ち目になった所為でうちにも色々と影響が出ている。

 わしは知らんが三百年前のカリスが行方不明になった時は世話になったらしいので、無視も出来ぬな。


「本人の意思に委ねているので、欲しければ自身の力で何とかすれば良いとだけ伝えておくといい。その為にこちらに滞在することも許可するが手助けはせぬとな」


「宜しいのですか?」


「お前はまだ会ったことはないようだが、エルナ殿を落とすと言うことはヘレナを落とすのと変わらんかもしれん。要するに普通の令嬢と思って対処をすればまず不可能だ」


「それはとても分かりや!?」


 隣にいたヘレナが作り笑顔でラグナルを見ているが痛みに耐えている所を見ると足でも踏まれたか脇腹に強烈な一撃でももらったな。

 我が娘ながら、未だに手の方が早いのは健在だな。

 

「ノルンにも聞きたいのだが、エルナ殿達はどのくらいのものだと判断したのだ」


 わしが声を掛けるとアヴェルに目配せをしてから答えた。

 我妻を登録者をしている頃と変わらずに主の顔色を窺ってから答えるのは変わらないな。


「報告しますと……あの中で一番怖いのはシアです。予想では私が全力で防御に回っても負ける可能性の方が高いと思います。次にフィスですが少しは耐えられれば良い程度の差です。次にトランも私よりも少し怖いです……基本は同じ標準型なのですが、能力的に私を上回っている気がします。次にアヴェル様の妹君になられましたエルナ様なのですが……なんとなく私達に近い気がします。戦ったら最終的には互角か負ける気がします。もう1人確認ができていないのですが……妹君の護衛騎士になっているシャーリーです。彼女もなんとなく私達に近い気がするのですが、接触をしても確認が取れませんでした。そして、彼女は私よりも怖い気がします。いつも陽気な感じなのですが時折見せる動きから私よりも能力値が上と判断します。私が怖いと判断するのはこの五名です」


 ノルンは自分よりも強い相手を怖いと表現する。

 最初の登録者がかなり臆病だったからと伝わっている。

 それよりもノルンがエルナ殿を脅威と感じている点だ。

 やはりエルナ殿は何らかの生体強化を受けて死の縁から目覚めたとと言うのが正しいのであろう。

 その後、今後の方針を伝えて解散した。

 アヴェルの奴は事務仕事が残っているらしくさっさといなくなってしまった。

 久しぶりに義理の息子であるラグナルと飲もうと考えていたのだが、ヘレンの奴に引き連れられていなくなってしまった。

 去り際にヘレナの奴が「久しぶりに帰ってきたのですから、次の子が欲しいわね」などと呟いていた。

 あの様子では朝まで解放されんだろう。

 一人で考え込んでおるといつの間にか目の前に温かい飲み物を差し出された。


「ワグナー家の方針は決まりましたかなー」


 いつ部屋に入ったのか分からなかったが、メイド姿をしたフィス殿が目の前にいる。

 考え事をしていたとはいえ、誰かが室内に入ってきたことぐらいには気付ける。

 わしはそこまで耄碌をしていない。

 せっかくなので、入れてくれた茶を一口飲んでから答えることにした。


「大体はな」


「ふーん。それにしても長い時間を掛ける方針ですねー」


「聞いていたのか?」


「聞いていたというよりも聞こえていたんですよね」


 そう言いながら花瓶の方を見ている。

 確かこの屋敷で毎日のように女中のようなことをしていると聞いている。

 フィス殿の属性は水だったな。

 

「もしやとは思うが花瓶の水を入れたのはフィス殿かな」


「爺さんは察しが良いですねー。そうです。あれに入っている水は僕が作り出した物です。だから僕の魔力が共感できる範囲に入れば盗聴器の役割もしてくれます。僕の属性って結構便利でしょ?」


 そうなるとこの屋敷の至る所にある水に関係する物はフィス殿の魔力で生み出された水に入れ替わっている可能性が高いな。

 これは変な会話をすれば即座に敵対行動を取られる可能性がある。

 だが、わしの方針ではフィス殿も含めて取り込む案なので問題はない。


「聞いていたのなら話は早い。来るべき時が来たら、我が家の力になって欲しい」


 会話が筒抜けなら、初めから味方に誘っておくべきだろう。

 わしはその為の布石に過ぎない。


「構わないけど、ちょっと戦力不足かなー。だけどその時の為にもまずは確認したいことがあるんだよね」


「何が確認したいのだ」


「カリスの母艦『サード・エンジェル』とその護衛艦はまだ健在のはずです。僕とカリスも意図的に直接交戦は避けていたので僕の知らない所で撃沈されていなければ健在のはずなんだけどどうかな?」


 大戦時から対立していなかったとはな。

 いや、初めから登録者同士が敵対関係ではなかったと言うことだ。


「健在だ。ただし動かせないので落ちた浮遊島の施設に眠ったままだ」


「そうか。落とされているとはいえ浮遊島の施設まで生きているのならなら、そこそこの兵力は確保可能だね」


「施設は数千年前から沈黙したままと聞いている。母艦に関しては対となる個体であるカリスがいないのでは起動不可能だ。それともフィス殿になら動かせるのか? それともシア殿になら可能なのか?」


 それが可能なら即戦力の確保が可能だ。


「僕は無理だけど、シアなら可能かもしれない。恥ずかしい話なんだけど、僕の『フィフス・エンジェル』の優先順位はシアの方が上なんだよね」


 本来の持ち主よりも優先順位が高いだと?

 そんな話は聞いたことがない。


「それは本当なのか?」


「本当だよ。それどころかシアが操船した方が全盛期の力を発揮するというオマケ付です」


 しかも能力低下も見られないとはな。


「それが事実だとすればシア殿は何者なのだ?」


「シアの個体番号は秘密ですが、僕達とは明らかに別の方面で生み出されています。しかも理由は分からないんだけど、情報の欠陥があるらしくてエルナ様と出会う前に目覚めたみたいです。そして、現在はエルナ様を登録者とするユニット個体です」


「そうか。わしが滞在中にエルナ殿が戻ったのならば『サード・エンジェル』が起動できるのか試してみる価値はあるな」


 あれが起動できるとなれば、その護衛艦も起動が可能かもしれん。

 

「試すのは良いんだけど、聞いておいてなんだけど色々と暴露してもいいのかな?」


「どうせ動かせない物なら構わん。わしは、フィス殿と同じく次の世代の布石を考えておるだけだ。わしが祈ることはその布石が無駄にならないことぐらいだ」


「爺さん達がエルナ様を裏切ったり見捨てたりしなければ、上手くいくよ。その為にも爺さんの孫にも早く嫁を見つけないと計画が狂うよ?」


「そこが問題だな。見ての通りの仕事人間で面白みのない奴だ。あんなのと一緒になるワグナー家に貢献してくれる嫁が欲しい所だ」


 わしとヘレナが持ってくる縁談を尽く断るか会うだけで終わりと言う始末だ。

 そんなことが続くので、いまでは縁談話も来なくなってしまった。


「あいつ面白みに欠けてそうだからね。僕もエルナ様のような人材を探し出すのに数百年以上待ったよ。だから、エルナ様は絶対に諦める訳にはいかないんだよねー」


 フィス殿の話を聞いているとアヴェルの奴の相手を探すのはまだ諦めるには早いな。

 差し当たって、アヴェルの副官にヘレンなのような強引な女性をつけるようにするとするか。

 確かヘレナの直属の騎士団に本人に似ている行動力のある者が何人かいたはずだ。

 気に入った者を見つけては自分の騎士団に身分を問わずにスカウトしているからな。

 明日にでもヘレナに話しでもしておくべきだな。


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