プロゲーマーと異世界
この本に奇跡的に辿り着いた読者の皆様。
よろしくお願いいたします。
誤字脱字や色々なミスがあるかもしれませんが、一生懸命書かせていただきます。
君に与えられたのは宿命だ。
宿命から逃れるのは容易ではない。
オレも君と同じ望んでもいない宿命を背負わされた人間だ。
これだけは言っておく、諦めろ。不運な人よ。
ソイツの撃鉄が君を救う事を切に願おう。
藍色より
異世界転移が起こるなんて漫画の世界だけだと思っていた。
だが、残念ながら――いや幸運?――この世には存在してしまったらしい。
それもクラス全員で飛ばされるという珍事だ。
「よくぞ来てくれた! 異世界の勇者たちよ! 我らが星インフェリオの人間を救い賜えぇ!」
「うん全然分からん!」
突然の勇者認定にキョトンとして、俺は叫んだ。
総勢三十二人のクラスメイト達の表情は様々だがそんなことはどうでもいい。
一番大事なのは周囲の状況だ。
とても豪華な造りの大きな部屋。窓はなく、周囲の明かりは俺たちの足元で光っている漫画とかでよく見る魔法陣らしきものと、周囲に立てられた街頭のようなものだけだ。
「私はこの王国の王だ。どうか私たちを助けてほしい!」
「頭沸いてんのか? あのおっさん」
そして、唯一の扉には自称王様とその脇に控える完全武装の兵士が六人。その隣には見目麗しいという表現が似合う青髪のお姫様。
王の印象は胡散臭いだが、姫の印象は冷たい。
なんだこれ? 異様な光景じゃないの?
まるで牢屋に閉じ込められた囚人に看守が語り掛けるような光景だ。
俺は再度周辺を確認する。場所と状況に加え、一人ひとりの情報をできる限り収集する。
そして、問答無用の説明が始まった。
いや、突っ込みどころ多すぎだろ。
この世界には魔王というのがいるらしい。ありきたりだなぁ。
とにかく魔王を倒したいので、異世界から勇者を召喚したということを建前に誘拐を平然とやってのけてとのことだ。
何てことしてくれてんだ!?
そして、異世界から来た人間は共通してタレントが存在しているらしい。
タレントとは才能とのことだ。この世界の住人も成長と同時にタレントが出現する人間もいるが、多くは出現しないので自力で努力して様々な力を得るらしい。
タレントとは、その力を最初から持っているという非常にラッキーな状態らしい。しかも、異世界から来た人間には複数持ちも多いとのことだ。
ゲームのようにステータス画面が自分の目の前に表示される。これはほかの人間には見えないらしい。
ご都合主義はこの際ありがたくいただいておく。
ステータス画面を見る。
名前:古河 春樹 ――――うん。俺の名前だ。
年齢:十八歳――――まぁ、高校三年生だからね。
性別:男性
レベル:1
ふむふむ。なんかレベルが存在しているらしい。
騎士の話を聞くと、このレベルは基礎レベルとタレントレベルの合計値で判断される。
基礎レベルとタレントレベルを合わせて、マックス100レベルまで上げられるという事らしい。
極端な話、タレントレベルを全く上げずに基礎レベルだけで100レベルも目指せる。
めんどくせぇ。もっとシンプルにならんのか?
基礎レベルが上がることが、そのまま強さの指標になるらしい。そして、タレントレベルが上がる事で熟練度が上がり、色々スキルを覚えることができる。
ちなみにタレントを持たない場合はジョブとなり、ジョブレベルを上げることで色々スキルを覚えるらしい。ジョブは複数持ちも可能とのことだ。
タレントの方が様々な面で有利らしく、才能を伸ばすという事がいかに大事かを完全武装近衛騎士が語る。
余談だが、フルプレートメイルって重そうだなと思った。
「さて、タレントは……」
【シューティングプレイヤー】【ギャンブラー】【ジャマー】【ビルダー】
シューティングプレイヤーって何よ?。
完全武装近衛騎士が口を開く。
つか、さっきからこの人ばっか説明してんな。王様いらねぇじゃん。
「タレントはいずれも強力だ。それは才能そのもの。場合によっては世界を変えるだけの力をだけの力を身に着けられるだろう」
世界変えられる? やるなギャンブラー。
きっと地下王国でもチンチロ最強ですぐ出られそうだ!
冗談はさておき、【ギャンブラー】は凄く強いのかもしれない。でも、イチかバチかの印象で使いどころ難しそうだ。
そして【シューティングプレイヤー】。お前はなんだ?
とりあえず…………言わないでおくか。
なにせ、俺は魔王討伐なんぞにやる気ない。
こっちは別に人生に不満を持ってる高校生じゃねぇんだ。
わざわざ魔王なんてものに挑むなんて命知らずな事はする必要がない。
「あ~ぁ、大会賞金……振り込まれるの今日だったのになぁ」
思わず天井を見上げる。
法律が整備されてから業界が盛り上がって、毎日五時間以上トレーニングして、日本代表でアメリカまで行って、プレッシャーの中で優勝して、それでこの仕打ち?
賞金は日本円で五千万円以上も入るはずだった。
そしたら新しい椅子買って、パソコンとディスプレイも買い替えたかった。
しかも、今一番ドハマりしているヤツの高額賞金大会の開催が決まってテンション上がってたのに最悪だ。ホント最悪。
あ、そういや妹が泊まりに来るんだったっけ? あの機械音痴に色々PCいじられねぇだろうか。
古河春樹――職業は高校生兼プロゲーマー。
シューティングゲームを主戦場とする一流プロゲーマーである。
プロゲーマー。いわゆるeスポーツ界隈に詳しい人もいらっしゃると思いますが、作中と現実の矛盾は理解した上で、作者も書いております。後々、何かしらの形で説明すると思いますのでご了承ください。