登校
「ふわぁあ...んー...」
いつものように朝を迎えいつものように洗面台に向かおうとしたがいつものようにはいかなかった。
「オハヨウゴザイマス」
「...」
最近疲れてるんだな、顔でも洗ってさっぱりすれば幻覚も消えるよな。
そして洗面所から顔を出すと。
「オハヨウゴザイマス」
「夢な訳ないよなー、幻覚なわけないよなぁ!」
現実逃避、失敗。
「これからどうするかなー...」
俺は端末の前に座るとこれからについて考え始めた。
まずゼウス計画について、これは確実に阻止したいよなー今の生活結構気に入ってるし、でも阻止するって言ったって適正<0>の俺1人じゃどうすることもできないし...
いっそのこと端末ごと捨ててしまうのはどうだ?全て忘れて元の生活に戻ればいいんじゃないか?でもそうした場合ゼウス計画が予定通り進んで戦争起こって生活とか行ってる場合じゃないよなー、この選択肢は無しか。
誰かに譲って俺の代わりをしてもらうっていうのはどうだ?お、いいじゃん、これなら世界も守られて俺の安全も保証される。でも譲って言ったって俺の周りに適正<0>いたっけ...
くっそぉぉぉぉお!結局逃げ場ねぇぇ!
ピンポーン
床で転がりまわっているとインターホンが鳴った、こんな朝早くに誰だろう俺は今色々忙しいんだが。
居留守を使うことにした。
ピンポーン
ふっ、居留守使えばそのうちどっかいくだろ、何か宅配される予定もなかったはずだし新聞の勧誘とかなら面倒だ。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポピンポピンピンピン
「おいやめろ」
インターホンが壊れる勢いで連打するので流石の俺も出るしかなくなりドアを開けるとそこには俺の幼馴染で同じ上桜高校1年 西城 綾乃が不機嫌丸出しの顔でそこに立っていた。
「真琴、あんた今何時だと思ってんの」
「いやまだ朝の7時半...」
今日は水曜日、世間一般で言うところの平日というやつであるそして俺は学生である、そこから導き出される答えは...
「遅刻コースじゃねぇかぁ!」
「や、やめて!私に当たらないでよ!ちょっと!」
「くっそぉ!」
綾乃の肩を前後に揺らしていた俺は急いで部屋に戻り制服に着替えて外に出た。現在の時間は7時40分、ホームルームが始まるのは8時なので自宅から学校まで自転車でも30分以上かかってしまう俺は本来なら確実に遅刻コースなのだが。
「行け、我がしもべ、アヤノンマークII!!」
「あんたまじで置いてくわよ」
「すみません、連れて行ってくださいお願いします」
「はぁー...コネクト!<能力上昇>!ッ」
綾乃は端末を起動すると<能力上昇>という綾乃の能力を使った。この能力は現在の使用者の運動能力などを倍にする能力で綾乃の場合適正が<8>なので8倍になる。
そして綾乃は俺をお姫様抱っこすると一気に跳躍した。
「やっぱ爽快だな!」
「あんたは気楽でいいわね!」
綾乃は俺が遅刻しそうになるといつもこのように学校まで運搬してくれる、俺が遅刻数0回なのは綾乃が大いに貢献してくれているおかげなのだ。
しかしこの運搬されている状態の時には大きな問題が発生する、そうとても大きな問題だ。綾乃はジャンプして建物などの障害物を飛び越える形でショートカットして時間を短縮する、たまに電線に当たりかけて危ない時があるがそれはそれほど問題ではない。ジャンプ、ジャンプが問題なのだ。飛び上がり、着地時に反動で俺の肩に柔らかいものが当たるのだ、綾乃の柔らかいものがなにとは言わないが柔らかいものがそしてついつい言ってしまうのだ。
「綾乃」
「何?私今ちょっとあんたを運搬するのに忙しいんですけど...」
「またでかくなってね?」
「!!?ッ」
顔がみるみるうちに赤くなるのがわかる、耳なんて真っ赤である。
「俺はちっさいのも好きだが、大きい方が...」
好き、そう言いかけたところで浮遊感が俺を襲った。綾乃が俺を投げたのである。
「綾乃さん?綾乃さん嘘ですよね、流石に死んでしまいます、綾乃さん!?綾乃さぁぁん!様!綾乃さまぁぁぁあぁぁあ!」
ドボォォン!
俺の1日は水浴びから始まるらしい。