episode97 魔術の才能
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今日は、魔術に関する詳しい話なので、本編にはあまり関係ありません。
「おいヴィデレ。俺の実験台になれ。」
「なんだ小僧、また新しい魔術でも思いついたか?」
「新しい魔術ではないんだが、相手の魔力を使い、体内で魔術を使用。【火属性】の魔術で内部から爆発できないかと思ってな。」
「おい小僧、師匠である私を実験台にするどころか、何度も殺す気だろう?」
「ああ。日頃の恨みも込めてな。」
「首を引き千切ってやろうか」
午前の修行を終え、昼食を取っていたレオとヴィデレ。
互いに憎まれ口を叩くものの、ヴィデレは、レオの後ろから抱きつくような姿勢で血を吸い、レオはそれを気にした様子もなく親子丼(卵とじではなく、卵焼きとじ)を食べている。
互いを罵倒しても、喧嘩をしているわけではない。これが、二人の距離感で、この一年で定着した関係性だ。
月一くらいで、ヴィデレがレオに一日中甘えまくるという謎の日がある。レオは『デレデレデー』などという効果音のような名前で呼んでいるが、この日だけは、いつものようにヴィデレを罵倒したら、からかうと、怒るを通り越して泣き止まなくなるので、この日だけは、ヴィデレの言いなり状態になっている現状だ。
「以前、他人の魔力を利用する魔術を開発していた研究者がいたが、生涯をかけても完成することは無かったな…」
「ほう。俺の前に、これを思いつくとは、かなり優秀な研究者だな。」
「周りからは、変わり者扱いされていたが、それはもう頭が良かったな」
ふと思い出すように語るヴィデレ。
その研究者の名は、アーカンと言って、頭が良くかなり優秀な研究者だったのだが、今まで誰も思いつかなかった『他人の魔力を利用する』という研究に障害を捧げていたため、変わり者扱いされていた。結局、理論上は可能。ということだけを突き止め、人生の幕を下ろしたそうだ。
「理論上可能…ふむ、それだけ分かれば、一ヶ月ほど無駄にしなくて済んだな。一週間で完成させたやろう。」
「人一人の生涯を捧げ、成し遂げられなかった研究を一週間とは…」
(やはり小僧は、魔術に関する全ての才能を持ち合わせた天才だな…。)
長年生きてきたヴィデレですら、見たことの無い程の魔術の天才。魔術の申し子とも呼べるべきレオの才能は、破格だった。
そもそも、魔術とは、魔力を持つ者なら誰であろうと使えるのが前提のものだ。ただし、人に限っては、魔術回路と呼ばれる器官が必要となる。
だが、その中にもやはり優劣が付き、才能と言うものが大きくわけて三つ存在する。
一つ、魔力の最大量。
魔術は、その規模によって必要最低限魔力が違う。初級よりも、中級。中級よりも上級といったように、魔術のグレードが上がれば、必要とされる魔力も変わってくる。
人は、空気中の魔素を体内に取り込み、タンパク質と結合させることで魔力を生み出し、体内を循環させている。
レオやヴィデレといった吸血鬼は、隠れている腰の翼。ロゼのようなエルフは、特徴的な耳。獣人や亜人は、尻尾など、個体によって魔力を作り、貯蔵しておく場所は変わってくる。
そして、その魔力を貯めておける最大量も、人や個体によって様々で、当然の事ながら、魔術に必要な魔力を下回っていれば、使うことができない。
二つ、魔術陣の構築。
普段、レオや、ベッルスなどは、呼吸をするように魔術を使っているが、魔術陣を作るには、属性、特性、性質によって形がバラバラになる。
詠唱は、あくまでイメージを掴むもの。自分に暗示をかけているようなもので、魔術陣の構築とは無関係。
初級でも、少なくて百工程。対軍級にもなると、三十万工程にもなる。
これを覚えるとなると、魔力以前に、多くの反復練習と暗記が必要になる。
だが、魔術陣には、魔術の公式的なものがあり、属性や性質によって決まった形や、型があるため、それを感覚で掴むと、『雷属性→打撃付与→威力に合わせて雷の威力も上昇→【雷同】』といったように公式をなぞるだけで、暗記をせずとも無意識に使うことができる。
これができるのは、一部の天才か、努力を重ねたものだけなので、魔術陣を作るにも、才能がは必要となる。
三つ、魔力の放出量。
魔術において、これが一番重要な才能と言われている。
これは、体内から体外へ、一秒あたり出せる量の事で、これは、基準となる値が存在し、測定することもできる。
初級魔術に必要な魔力放出量を一とし、一般人の平均で五、魔術学園の卒業生で十八。
以前、リベリオンの平均値を出すたまに、測定した結果が、
カーリ《百二十四》
ロゼ《五十二》
ミラ《八十》
ウムブラ《三十》
ドラ《九》
ベッルス《百八十八》
ニーツ《二百十》
ヒカル《七百四十三》
ヴィデレ《千二百三十》
となり、やはり貴族のベッルスや、ニーツは、異常に高く、ヒカルとヴィデレに関しては、論外だった。
対軍級魔術に必要なのが二百なので、使えるのは、ニーツがギリギリといったところだ。
どれだけ魔力を貯める場所がプールのように大きくても、外に出すものがバケツならば、宝の持ち腐れ。
これが、魔力の放出量が、魔術において一番重要な才能だと言われている理由だ。
ちなみにレオが、【ギアス】を全開放し、潜在能力がマックスの状態でこっそり測定した結果、《二千六百》を記録し、これを後日知ったヴィデレの、レオを見る目が変わったのはまた別の話だ。
カーリは、魔力の総量少なくても、魔力の放出量は多く、ロゼは、魔力の総量が多くても、魔力の放出量は少ない。
魔術に至っては、他の戦闘のように何か一つの才能を持っていても、強くはなれない。そういうことだ。
他にも、魔力の回復力、魔術陣の構築の速さなど細かい才能も含め、レオは、均等にヴィデレの中でも高く、魔術の才能に至っては、レオがトップだ。
「よくもまあ、そんなにホイホイと思いつくもんだ」
「天才だからな。」
「今、開発中の魔術がいくつあるんだか…」
「雷化の魔術、全ての魔術を直列に繋げることができる関節材となる魔術、体の性質を鉄に変える魔術だな。」
「…どれも出来たら、厄介極まりないものになりそうだな」
レオの開発中の魔術を恐る恐る聞くヴィデレだったが、やはりというか、予想的中の馬鹿げた魔術にらため息をこぼすヴィデレ。
とんでもない弟子を取ってしまったと、後悔少しと、嬉しさ大量のヴィデレだった。
設定が曖昧なところがあるので、詳しく書きました。