episode96 運命操作
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「使い物になるのは、五、六人…うん、微妙な感じ」
「はぁ…はぁ…化物かよこの人」
「化物じゃなくて、神様だけどね。うん、心外な感じ」
レオがいつもヴィデレと使っている第八訓練場に、対『ゾーウモス』用に編成されたメンバーが、レオに呼ばれ、演習相手としてリベリオンを訪れたフォルス相手に訓練を行っていた。
だが、結果から言えば、惨敗も惨敗。手も足も出ずに、死屍累々の如く、全員が倒れていた。
「次は、俺の番だな。」
「メインディッシュ…うん、楽しみな感じ」
集団訓練を始めてからまだ四日だが、これでもリベリオンの先鋭を選んだレオ。あまりの不甲斐なさに、ため息を零しながら、ネーザを構え、フォルスと対峙する。
「【解放】」
レオの新魔術。【ギアス】、【魔闘気】など、レオが戦闘前に行う準備を全て詰め合わせたもの。
無詠唱でも発動できるこれだが、無詠唱だと、詠唱をした時よりも僅かに時間がかかる。一つ一つ発動しても、時間がかかる。
僅かな差だが、戦闘においてこれは、かなりの時間短縮が出来るため、実用的な魔術だ。
「前は、三分四十秒。記録更新いけそ?うん、応援してる感じ」
「フッ、愚問だな。今回は、倒させてもらう。」
どんな相手にでも、ビッグマウスは欠かさないのがレオ。
だが、そこには絶対なる自信の裏に、フォルスの一挙一動を見逃さず、勝ちへの道筋を立てる冷静さがある。
初陣を経験して、一番成長したのは、レオかもしれない。
「【幻歩】」
先に動き出したのはレオ。【魔眼】でこの世界の流れを読み、新たな流れを自分で作ることで、相手から自分の姿を隠す。
「【運命を確定せよ】」
何度かレオと手合わせをしているフォルスにとって、【幻歩】は初見では無い。
軽く人差し指を前に突き出し、魔術を詠唱すると、指先に小さな魔術陣が現れ、眩く光る。
フォルスは、運命を司る神。次に起こる【運命】を自分の思うままにすることが出来る。
フォルスの魔術が発動した瞬間、フォルスの前方が、地面がゴッソリ球体状に削れる。
フォルスが新たに作った運命は、『フォルスの前の空間が無くなる運命』。
本来なら絶対に有り得ない運命…未来を作りだすことができるフォルスは、上級神の中でも、初代勇者で上級神の一人、ハセガワに次ぐ二番目の実力を持っている。
【深淵】
だがレオは、その運命を、自分の体を【深淵】で覆うことで空間事消されるのを回避するレオ。
【深淵】は、神にとって唯一の天敵と言えるもの。上級神に常識が通じないならば、【深淵】には、異常すら通じない。
運命だろうが、因果律だろうが、全てを跳ね除けるのが、【深淵】。
普段、対人戦に使えば、周りの仲間も【深淵】の余波に辺り、気が狂ってしまうため使えないが、今は、フォルスが特殊な結界を貼ってくれているため、使い放題のレオ。そこには、一切の遠慮が無い。
「防がれた…うん、厄介な感じ」
「【四重魔術陣 直列型 雷同剣式・深淵】」
フォルスの攻撃を防いだレオは、そのまま一気にフォルスとの距離を詰め、ネーザの切っ先に四重に重ねた雷同と、深淵を纏わせ、フォルスの肩に突きを繰り出す。
「【運命を確定せよ】」
深淵には通じないが、それ以外には、絶対的な力を発揮する、フォルスの運命操作。
フォルスは、『レオの攻撃を予測し、避ける運命』を作り出し、レオの攻撃を完璧に避けきって見せる。
「【運命を確定せよ】」
そしてフォルスは、『フォルスがレオを投げ飛ばす運命』を作り出す。
まるで、熟練の戦士のように体を捌き、レオの突き出した右腕と、軍服の襟を掴むと、一本背負いのようにレオを地面に投げるフォルス。
運命があれば、本人の技能など関係ない。なぜなら、それが起こってしまう運命が決まっているのだから。
だが、レオは投げ飛ばされている空中で、しっかりと体を立て直し、綺麗に受け身を取ると、地面に着いた左手を主軸に大きく半円を描き、螺旋階段のように足を下からフォルスの横顔へ上げ、蹴りを放つ。
「【運命を確定せよ】」
小柄なフォルスは、レオの蹴りを受けて空中へと吹き飛ぶものの、『フォルスが綺麗に着地をする運命』を作り出し、空中で膝を抱えて三回転ほどすると、軽々しく衝撃を受け流して着地をするフォルス。
リベリオンの神獣討伐メンバーも、このフォルスの運命操作の前に手も足も出ず、やられてしまった。
これが、最高神、ハセガワに次ぐこの世界で三番目に強い神の力。
「【支配】。」
だが、レオもフォルスと手合わせをするのは、初めてではない。
フォルスの足元の地面の動きを支配し、地割れを起こさせる。
「【運命を確定せよ】」
「そこだ!」
フォルスが、再び『フォルスが助かる運命』を作り、地割れから脱出するが、それを読んでいたレオ。
フォルスの出処に蹴りを放ち、フォルスの体をくの字に居らせる。
周りから見たら、お兄ちゃんが妹を殺しにかかっているような絵面だが、ここには、それにツッコミを入れる余裕のあるものはいない。
なぜなら、あのヒカルですから、上級神であるフォルスにレオが食いついている事に目を見開いて驚いいるからだ。
「【運命を確定せよ】」
「ぐぅ……!!」
「ふぅ…今日は仕事があるからもう戻る、うん、名残惜しい感じ」
「チッ、また駄目か。」
「ううん、確実に強くなってるよ、うん、安心して欲しい感じ」
そして、約束の夕方五時の時計が鳴り響くと、フォルスは、レオを瞬間的に地面に叩きつけ、強制的に試合を終わらせる。
「途中でごめんね?うん、申し訳ない感じ」
上級神としての仕事があるためとはいえ、大好きなレオの力に最後までなれなかったことに落ち込んだ様子のフォルス。アホ毛まで萎れている。
「いや、これほど濃密な修行は無い。いつも助かっている。また来てくれ。」
「うん、こっちからお願いしたい感じ」
地面に叩きつけられたレオは、体の土埃を落とし、ハンカチで手を綺麗に拭うと、フォルスと握手を交わす。
また来てくれ。というレオの言葉に、フォルスもすっかり元気を取り戻し、笑顔で手を振りながら神界へと帰っていった。
「いやぁ、フォルスさんマジパナイですね」
「まあ、まだ手加減されているがな。」
「えっ!?」
模擬戦が終わり、結界が解けたので、ミラがレオに近づいて話しかける。
「当たり前だろう。やろうと思えば、自分が勝利する運命を作り出すこともできるのだからな。」
「うわぁ、ミラちゃん生まれてきた中で一番のビックリですよ」
「それに、貴様ら、休養中だからといって気を抜きすぎていたな。いつもよりも、動きが雑だ。全員、今から外周、百週だ。」
「それって、本の中に出てくるような、オチに使うあれですよね!?本当にやりませんよね!?」
ただでさえ、フォルスと模擬戦をしてクタクタの討伐メンバー。
今から外周を百週すると聞いて、それが現実であることを受け入れることのできないミラを含め、全員が頷いている。
「…?百週にまけてやったんだ。俺は今から三百くらい走るが?」
「全員が、総督みたいな訓練狂の体力お化けじゃないんですかね!…あっ…」
どこまでも自分で墓穴を掘っていくのがミラのスタイル。
「そうかそうか、貴様もそんなに走りたいか。じゃあ走らせてやる。今から俺と、五百週だ。」
「だれかたすけてぇぇぇぇぇぇ!!!」
結局、討伐メンバーは百週を走り、レオも五百週を走りきった。
墓穴を掘り、レオのお怒りを受けたミラも、二百五週ほど走ったところで体力が尽き、部屋に運ばれたいった。
これまで、あまり接点の無かったレオに対し、編成メンバーは、この人に逆らったら殺されるという共通認識が出たそうだ。
最近、フォルスがお気に入りなので、どんどん出していきたい…!




