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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第六章 おかえりなさい
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episode94 ファトゥウス

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

 『ファトゥウス』の絆は、家族の絆。

 仲間を親子供、兄弟のように扱い、誰かが傷つけば全員で敵討ちし、誰かが何かを成し遂げれば、自分の事のように喜ぶ。

 それが、ビスティアが率いてたいた頃からのルールで、当たり前のことだった。


「はい、カーリさん…あーん」

「いや、そういうのは…ちょっと困る」

「今日も熱々っすね親方!」

「ひゅーひゅー!羨ましい!!」


 それは、頭がカーリに変わってからも健在で、『ファトゥウス』のメンバーは、とても仲が良く、家族のように、『タキオンストリート』の中で、元々三階建ての貴族の生徒用の高級宝石店だった建物をそのまま使い、そこを家にして全員で住んでいた。


 ビスティアからカーリに頭が変わってから、変わったこともある。

 それは、男女比だ。

 ビスティアの頃は、男十割だったが、カーリが頭に変わってから、男の割合は、九割九分まで下がった。

 数字的に見たら大差は無いが、実際はそうではない。男達の中に、女の子が一人入ったのだ。

 紅一点。むさ苦しい雰囲気も、少しばかりは改善されたように思える。


「私のことはお嫌いですか?」

「いや、嫌いではないけど…ほら、師匠の妹さんってこともあるし…」


 カーリが『ファトゥウス』の頭になると同時に、入ったカーリと同じ位の年齢の少女。何を隠そう、カーリの今は亡き師匠、ビスティアの妹、ティアナだ。

 ビスティア譲りの赤髪を肩の高さで揃え、腕に黒いリボンを結んだ少女。


 レオが、【覇王祭】の初日に、ビスティアの事を調べ、本人に内緒で家族全員を招待。子供や兄の最後は、家族が見届けるべきだという、レオの優しさからきたものだ。

 そして、【覇王祭】が終わり、そのままの流れでビスティアの家族一家は、リベリオンに参加。

 弟のビストロは、【兵科】に。決勝での戦いぶりを見てカーリに一目惚れしたティアナは、カーリと同じ『ファトゥウス』に入ったわけだ。


「じゃあ何も問題ありませんね!」

「いや、あるから!超あるから!」


 カーリが、ロゼを思う気持ちは今も変わらずで、一途に思い続けているのだが、ティアナの積極性は、ラティスに似たものがあり、不器用なカーリでは、やり過ごす事が出来ない状況だった。


「親方も済におけねぇな」

「ビスティアの旦那は、女に興味がなさそうだったからなぁ」


 最初は、ビスティアの妹とはいえ、女のティアナが入り、不満が少なからずあった『ファトゥウス』のメンバー達。

 だが、ティアナの才能はかなりのもので、鎧を着込んでも通常と変わらず機敏に動け、細長い円錐型の槍、『ランス』の扱いは、使い手が少ないこともあるが、実力は確かで、この前の初陣では大活躍を収めた。

 実力主義のこの世界で、実力さえあれば、性別など関係なく、ティアナの明るい性格もあり、直ぐに打ち解けていった。

 更に、ティアナの気前の良さ、見た目の可愛さにおじさん達はメロメロになり、今では娘を可愛がりたい、普通のお父さん状態だ。


「おい、貴様ら。騒ぐのもいいが、時間を考えろ。連日、夜中に騒ぎまくりやがって…苦情が殺到しているぞ。」

「あ、レオ」


 この状態からは察しにくいが、現在夜中の二時半。

 皆が寝静まり、今起きているのは、吸血鬼のレオとヴィデレ、見回りの【兵科】の十人ほどだろう。

 だが、連日どんちゃん騒ぎを繰り返す『ファトゥウス』に、周辺に住むリベリオンのメンバーから苦情が殺到し、レオが直々に言いに来たところだ。


「おいおい、総督さんよ…確かに俺たちはリベリオンの一員となったけどよぉ」

「俺達が着いてきたのは、カーリであって、お前じゃねぇんだわ」

「悪いが、帰ってくれ」


 『ファトゥウス』は元々、何者にも縛られない『傭兵』の集まり。

 戦以外は、それぞれが好きな時に寝、食べ、過ごす。それが、傭兵という生き物。

 そして、仲間意識の強い『ファトゥウス』だが、裏を返せば、仲間以外には厳しい。

 カーリの事は仲間として、頭として認めた『ファトゥウス』だったが、レオのことは、自分たちの総督として認めてはいなかった。


「か、えーれ」

「かえーれ!かえーれ!」


 そして、レオに浴びせられる「帰れ」コール。


「お、おいお前ら!」


 あまりの酷さに、カーリが止めに入るが、止まることは無い。


「…【ギアス】。」


 そして、無言で『ファトゥウス』の罵詈雑言を流してレオが、【ギアス】を解放する。

 圧倒的な魔力の塊。

 本能が恐怖するような魔力の多さに、『ファトゥウス』達の口が止まる。


「部下の躾も、上司の務めというやつか…。来い、その体に刻んでやる。」


 口元に嘲笑を浮かべ、顎を突き出して完全に舐めきった態度で、『ファトゥウス』を煽るレオ。

 『ファトゥウス』の副リーダーであるエドラスは、こいつらには、これが一番いいだろう。と、後方で見守っている。


 そして後日。


「おはようございます、総督様!」

「「「「おはようございます!!!」」」」

「ああ。」

「総督様、今日のご予定はなんでしょうか?」

「着いてくるな。鬱陶しい。」


 すっかりレオに調教された『ファトゥウス』の姿がリベリオンの中で見られた。


「あれ、俺は?」


 そして、すっかり、リーダーの座を取られたカーリは、一人寂しく首を傾げるのだった。

明日から、神獣討伐に向けてシリアスな展開が増えると思います

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