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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
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episode90 撤退

誤字脱字、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「【僕の可愛い花達よ 君達の強さはそんなものない? もっと見せておくれ 酸沼(アキドゥス・パールス)】」


 体を毒に侵食され、回復する度に血反吐を吐くミール。繰り返され、終わりの見えない地獄を味わう。

 そこに追い討ちをかけるように、ベッルスが、ミールの足元に魔術を発動させる。

 花の持つ強力な酸で出来た底なしの沼。苦しみで反応が遅れたミールの足をしっかりと掴み、引きずり込んでいく。


「ッゥ!!」

「【可憐な花達よ その棘を僕のために使っておくれ 花棘(フロース・スピーナ)】」


 靴を溶かし、肌を焼く強力な酸に顔を歪めるミールは、痛みに耐えながら、上空に飛ぼうと試みるが、それを阻むベッルス。

 ミールの足は酸の沼に飲まれ続け、ついには足を出すことも困難な状況まで陥ってしまう。


「チェックメイトッ!僕とは相性が悪かったみたいだッ!来世で出直してきたまえッッ!!」


 ミールの戦闘スタイルは、【癒しの檻】で高速再生をしつつ、全盛期の体による剣での制圧。凶悪犯罪グループを数々潰した『執行者』の名は伊達ではない。

 だが、高速で体を回復させても、毒が取り除ける訳では無い。徐々に体を蝕んでいく毒は、体の機能をストップさせていき、地獄の痛みを味わさせていく。

 そして、ミールの動きを封じる酸の沼。今ではもう、太ももの半ばまで浸かった沼は、ミールの足を回復した傍から骨まで溶かしていく。


 【癒しの檻】という回復魔術の中では最高峰に入る魔術に頼り、全盛期に頼り、解毒の魔術や、遠距離の攻撃の修練を疎かにしていたミール。

 たとえ、公爵の名に相応しい力を持っていたとしても、自らの力を過信してしまえば、その先は無い。


 その事をベッルスも胸に刻みつつ、勝利を確信したベッルスは、撤退の準備を開始している仲間の元へ駆けつける。

 そんなベッルスを見た仲間達は、彼が『デクストラ』のリーダーに選ばれた理由を理解したと共に…


「本気出すなら早く出してください!ミラちゃんのキメ細かない美雪のような肌が傷つきました!!」

「全力ヲ出サナイノハ、美シクナイ」

「しゃしゃってんじゃねぇぞ!兄貴の一番は俺だっ!!」

「帰ったらベッルスを練習台にするぞー!!」

「「「おう!!」」」


 袋叩きだった。

 胸ぐらを掴まれ、地面に投げられ、鳩尾を殴られ、急所を全力で蹴られる。


「ま、待ちたまえッ!まだ総督がッ!」

「あぁ、それなら大丈夫です。あの人ももうすぐ終わると思うんで」

「見テオクトイイ」

「あれが、僕達の総督。僕達を導いてくれるお方の背中をね」


 完全にレオの勝ちを確信し、微笑む仲間達に小首を傾げながら、レオの戦いを見るベッルス。


「ハハッ…確かに心配するのは、無用だったようだねッ」



(おかしい…)


「【風刃・連】」


(おかしイッ…)


「【支配】」


(なんで俺の…俺の攻撃が当たらない…)


「【血影の姫君達の乱舞】」


(なんで俺が…俺が地面に倒れている…)


「【五重魔術陣 直列型 雷同】」


(俺は公爵で、お前さんは伯爵だろ…)


 爵位の差は、絶対なる力の差。

 爵位が一つ違えば、勝利は確定し、二つ違えば、覆されることはない。

 伯爵と公爵。爵位が二つ違うはずのレオと、ブローディア。

 なのにも関わらず、今、両の足で大地に立っているのはレオで、地面に突っ伏しているのはブローディア。


「俺は、マールス公爵家次期当主、ブローディア=マールスだゾッ!!!」

「だからどうした。貴様が目の前にしているのは、次期国王。この王国を変える男、レオだ。頭が高いぞ…!!」


 血走った目で叫びながら、槍を振り、立ち上がるブローディア。

 だが、レオはそれを許さない。

 槍を避け、ブローディアの頭を抑え、再び地面へ頭をぶつけさせる。


「【螺旋・雷陽(コロナ・コクレア)】」


 ブローディアの頭をしっかり抑えたレオは、対軍級魔術である【螺旋・雷陽】を発動する。


 天に昇る雷が、太陽と重なり、ブローディアに降り注ぐ。

 辺りを覆うほど白く眩く光る雷がブローディアを襲い、一拍遅れて鼓膜を劈くような轟音が鳴り響く。


「首を取ろうと思ったが、塵すらも残らなかったか。」


 雷が降り注ぐ寸前までブローディアを抑えていたレオは、地面が抉れ、黒い煙を立ち昇るブローディアのいた場所を見て呟く。


「総督!」

「やりましたね!!」

「まだだ。」


 レオの勝利を喜び、レオの元へと我先に走り出す『デクストラ』のメンバー達。

 だが、レオの顔は険しいままだ。


「え?」


 困惑した様子の『デクストラ』のメンバーの耳に、ドドドという地面が鳴り響く音が届く。


「時間を掛けすぎたようだ。」


 遥か先に見える王国軍一万の兵。

 槍や剣を構え、今にもこちらを殺そうとする勢いで、でこちらに向かっている。


 『デクストラ』のメンバーの顔が、さらなる絶望を見たように染まる。


「レオ!!!全員の撤退が終わった!!」

「丁度こちらも片付いたとろこだ。後は任せたぞ。」

「任せとけ、『ファトゥウス』!全員、死ぬ気で止めるぞ!!」

「「「「おおおぉぉぉ!!!」」」」


 そこへ駆けつけたカーリを含む『ファトゥウス』のメンバー。

 撤退の先行を務め、全員が森へ撤退したことを確認すると、引き返してきたのだ。


 カーリの合図で、野太い声をあげて王国兵へ正面から突撃する『ファトゥウス』。


「十分でいい。十分経ったら、引き返してこい。」

「聞いたか野郎ども!十分で全員蹴散らすぞ!!!」

「はぁ…ミラ、疲れているとこ悪いが、十分経ったらこいつらを連れてきてくれ。」

「あいあいさー!」


 人の話を聞かないカーリにため息を一つこぼしたレオは、ミラにカーリの監視を頼み、『デクストラ』のメンバーと共に森へ走り出す。


「ウムブラ。森の奥で控えているはずのニーツ姉さんのところに先に行き、王国に向かわせてくれ。」

「エッ…デモ、カナリ遠イ」

「問題無い。膝枕、耳かき付きとだけ言えば、リベリオンに着く頃には王都に着いてくれる。」

「変ナ信頼…」


 レオは、王都で控えているヒカルの元への伝達として初めから用意していたニーツへ、ウムブラに命令を出す。


「…。次は、負けない。」


 レオは、後ろを振り返り、小さく呟く。


 ニスル=イムペラートル。『軍神』に作戦を読まれ、もしかしたら自分も負け、『デクストラ』を失うところだったレオ。

 完全にニスルにしてやられたレオは、借りを返すため、強い雪辱の気持ちを持って前を向く。


 二度やられるわけにはいかない。



 ─────次は、必ず。



後味の悪い感じで終わりましたが、これで五章完結です。

レオ『タキオン』vsニスル『軍神』は、必ずもう一度書きます。五章は、その時を盛り上がる大きな伏線だと思ってください。

明日から六章、次は、前半がロゼメイン、後半は、『デクストラ』がメインです。

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