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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
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episode89 最善

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

 ベッルスの使う【自然属性】の魔術。

 草木や花を急成長させたり、その特徴を魔術により大幅に増加させて相手を攻撃、足止め、味方の回復等を行える万能な属性。


「【美しき花達よ 恥ずかしがらないで 僕に見せておくれ 君たちの秘めた刃を 毒の粉ウェネーヌム・ケールッサ】」


 ベッルスは、胸元からバラを取り出すと、いつも魔術を使うように一振り。


「魔力の反応が無い…?」

「違う旦那ッ!今すぐ逃げロッッ!!」


 空中に散るバラの花びら。

 これまでの魔術とは違い、魔術陣はどこにも無く、ヒラヒラと舞い落ちる花びらを見ながら不思議に思うミールだったが、ブローディアの言葉に慌てて後ろに飛び退く。


「【僕の可愛い花達よ 君達の強さ見せてくれ】」

「ガハッ…」

「旦那!!」


 ベッルスが再び魔術を詠唱すると、ミールが、胸を押さえて血反吐を吐く。

 そして、【癒しの檻】で瞬間的に回復するミール。


「グフッ…」


 だが、ミールは回復した瞬間から、再び血反吐を吐き、膝を折る。


 美しくない。

 そう思って封印していた。自分の本気。

 使わないくらい強くなればいいと思っていた【自然属性】の奥義。

 毒、酸を使った相手を嬲るように殺す、美しいとは言い難い醜い技。

 だが、ベッルスは気づいた。

 またそれも、新しい美しさの一つなのだと。


「僕の魔力が尽きるまで続く、毒の牙。貴方の魔力と僕の魔力、どちらが先に尽きるか勝負といこうじゃないかッ!」


 ベッルスの使った魔術、【毒の粉】は、最初はただの目に見えない程の微細の粉を操り、相手の口や鼻から侵入する。

 そして、そこで魔術を再び発動させると、人間では即死レベルの劇毒となり、体内を蝕んでいく。

 醜いと忌み嫌い、封印したきたベッルスの、この魔術は、暗殺や闇討ちでは最強と言える。

 リベリオンで、暗殺に一番向いているのは、ウムブラではなく、ベッルスだろう。



「他を心配している余裕が貴様にはあるのか?」

「ッ…!」

「お陰で、かなり回復できた。礼を言うぞ。」


 血を大量に吐き出すミールを心配するブローディアに、レオは、口の中の血を吹き出しながら、ネーザを向ける。


「部下がまだ頑張っている中、トップの俺が、情けない姿を晒すわけにはいかないんでな。」

「生命力も、回復力も根こそぎ取ってヤッたのに、まだそんなにピンピンしてんのかよ」

「貴様を殺す程度にはな。」


 レオが自分で刺した傷は、いつも溜めていた余剰魔力を使って回復魔術と、吸血鬼の再生能力で既に塞いだが、まだ戦闘するには、厳しいといっていい状態だ。


「【幻歩】」

「そコッ!!」


 そして、最初に仕掛けたのはレオ。

 【幻歩】を使ってブローディアとの距離を詰める。

 だが、ブローディアも見慣れた技。レオのスピードは把握しており、的確に槍を繰り出す。


「ナッ!?」


 ブローディアが突いた先には、レオの【身代わり】があっただけで、レオの姿はどこにも無かった。

 レオの魔力を探して、辺りを見渡すブローディア。

 しかし、レオの魔力はおろか、気配すら察知することができないブローディア。


「フィエルダー式剣術【紫角】。」


 そして、突如、ブローディアの目の前に現れたレオ。

 レオは、ネーザをブローディアの首筋へと突きを放つ体勢を作っており、完全にブローディアを射程圏内に収めた。

 ブローディアは、野生の第六感とも言える超反応でその場を飛び退くも、首筋にネーザがかする。


「完全に捉えたはずなのニッ!」


 レオが今使ったのは、【幻歩】と【身代わり】のコンボ。

 自分の最速の場所に【身代わり】を置き、【幻歩】を使い姿を隠し、歩いて(・・・)近づく。

 剣を振るう瞬間こそ、流れが複雑で【幻歩】を維持できず、ブローディアに反応されたものの、ブローディアにはわけがわからない程の攻撃だっただろう。


 今まで、レオは、【幻歩】を使った時、自分の持てる全力を出してブローディアに近づいた。

 それが最速だからだ。だが、レオの最速は、公爵のブローディアにとっては、見えなくとも少し速い程度のこと。すぐに捕まってしまい、攻撃を受けてしまう。

 だが、【幻歩】において、最速を出す必要は一切無い。剣を振るったりなどの複雑な行動をしなければ、相手に感知されないのだから。


 全力を尽くすのではなく、最善を尽くす。

 ネーザの言葉を通して、レオが新しく辿り着いた戦闘スタイル。

 真の意味で冷静さを取り戻したレオは、これまでのレオとは違い、何癖も強くなっている。


 そして、距離を取ったブローディアを追いかけるレオ。


「チッ…!!」


 ブローディアは、レオに対して槍を突き出す。

 だがレオは、それを避けることなく、無詠唱で自分と槍の間に土の壁を出現させる。

 当然、土の壁は一瞬で破壊され、土の壁を出現させたと同時に右に避けたレオを追うように手首を曲げるブローディア。


「甘い。」


 レオは、再び、自分と自分を追いかけるように迫る穂先の間に土の壁を出現させる。

 またもや、一瞬で破壊される土の壁だが、一瞬が二回もあれば、レオでも穂先をくぐり抜けることはできる。


「【三重式魔術陣 直列型 雷同・連】」


 そして、レオは、ネーザと、自分の両手両足に【雷同】の魔術陣を付与。

 槍を突き出してガラ空きのブローディアの体にネーザで袈裟斬りを繰り出し、追撃を加えるように足を払い、空中に浮いたブローディアの腹に右手を振り下ろす。


 全ての攻撃に【雷同】を付与するというこれまでに無いレオの攻撃。

 ブローディアにとって、レオの攻撃はまだ軽いも、多重式の直列に繋いで威力を底上げした【雷同】を叩き込むことによって足りない火力をカバーする。


 一つ一つの攻撃を欲張って繰り出すのではなく、全てを合わせてコンボで相手に叩き込む。

 大きな力を使わなくとも、これまで積み重ねたものを合わせれば、大きな力となる。


「強ェ…」


 肌で感じる、レオの強さにブローディアは、思わず口に出してしまう。

 それほどまでに、最初に戦ったレオのは別人のように強いのだ。


 元々それが出来る力を持っていた。だが、新しく手に入る大きな力に頼りすぎていたレオは、今までのものを使うことで、更に攻撃のバリエーションが増え、相手を簡単に追い詰めることが出来た。


 これが、本来のレオの強さ。


「これが、王国を変える男の強さだ。」


 地面に倒れ込むブローディアを見下しながら、レオは、呟く。


 もう、レオに勝てるものは、ここにはいない。

次で5章終わります!多分!

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