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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
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episode87 敗北。そして。

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「はぁぁぁぁぁ!」

「シャらくセェ!」


 互いに獲物を握り、ぶつかり合うレオとブローディア。

 予測不可能な角度から繰り出されるブローディアの槍を、ネーザで叩くレオ。

 その隙に、ブローディアとの距離を詰め、自らの間合いに飛び込んだレオは、その小さな体を活かして、ブローディアの懐で一回転。遠心力を使った鋭い一撃が、ブローディアの横腹に放たれる。


 伸ばしきった左腕と、槍を叩き落とされたことで離れたブローディアの右腕。

 伸ばした左腕を戻したとしても、体を使わずに腕だけで戻し、レオの背中を石突きで突いたとしても止まらない。

 そして、ブローディアが取った行動は…


「フッ!!」

「チッ…!」


 ブローディアは、左肘を曲げ、左手を肩の後ろに回して、横腹に放たれたレオの剣と、自分の体のあいだに槍を挟み込む。

 敢えて大きく外に回すことで、遠心力がつき、加速。ギリギリのところでレオの剣を柄で受け止めたブローディア。


「ハッ!お前さん、体術までいける口か!」

「貴様も槍以外に何か出来たとは驚きだな。」


 レオの剣を受け止めたブローディアは、右膝を、レオの右肩へ放つ。

 レオは、ネーザをもっていない右腕で受け止めると、自分の背中と、ブローディアの正面に存在する少しの間に、体を捻って右足を素早く上げてブローディアの顎を蹴りあげる。

 ブローディアは、レオの蹴りを上体を逸らして避けると、後ろに下がって距離をとる。


(くっ、視界が眩む…回復するか?いや、ここで回復したら駄目だ。)


 表情には出さないが、自分でもかなり無茶なことをしたと思うレオ。

 ブローディアも、気丈に振る舞っているが、よく見ると、足元がたどたどしく、フラついている。ブローディアも、かなり効いているようだ。


「お前さんが持ってるその剣、この魔槍と同種のやつだろ?なんでその剣をきちんと使わネェんだ?」

「時間稼ぎで、俺が力尽きるのを待つつもりか…?」

「そんなわけネェだろ…ハァ、ハァ…単純に思っただけだ」

「貴様に答える筋合いは…ないな…!」


 距離を取り、レオに話しかけるブローディア。

 余裕がない状態での事なので、レオは無理矢理話を終わらせ、ブローディアに突っ込む。


(分かっている。俺が、ネーザを扱うほどの実力が無いことを…。)


 そんな中、レオは、ブローディアに言われた一言を気にしていた。

 ネーザの能力を何故使わないのか。

 否、レオは、能力を使わないのではなく、使えないのである。


 魔王シリーズと呼ばれる武具は、一つ一つが、『最強』を争う程の能力を持っている。

 ブローディアの持っている魔槍も当然そうで、力の吸収及び譲渡は、破格の力だ。

 そして、ネーザにも、それに負けないくらいの能力が秘められている。

 だが、その能力をレオは使うことができない。魔眼を手に入れ、深淵を支配し、修行を積み、幾度と無く壁を乗り越えたレオですら、扱うことすら許されないネーザの能力。

 自分の実力不足に、レオは歯がゆい思いをしていた。


『ご主人!死にますよ!!』

「っ…!!?」

「直撃は避けたけど、掠ッたな」


 ネーザの事で集中が別の方に向いていたレオ。ネーザの声にハッと集中を取り戻し、ブローディアの槍を回避しようとするも、穂先が頬を掠める。


(血を流しすぎて、集中が散漫になっている。俺らしくもない…。)


 レオは、再度集中しなおし、ブローディアの追撃をネーザを使って逸らし、ブローディアの肩にネーザを突き刺す。


「「ガバッ…」」


 二つの声が重なる。喉から込み上げてくる血を思い切り吐いた両者。

 そして、そのまま地面へと倒れるレオ。


「掠ッたのが、生命力を根こそぎ持ッて言ったか…運に救われた感が凄いが、勝ちは勝ちだ」


 動かなくなったレオを見て、勝利を確信したブローディアは、ミールの方へ歩き出す。


「オッ、旦那の方も終わった?」


 レオらしくも無い集中力の欠如というミスを犯し、ブローディアに敗北したレオ。


「総督…!」


 『デクストラ』のメンバーのレオを呼ぶ悲痛の叫びが戦場に響く。



 この一年半、修行を積み重ね、確実に強くなった。


『自信と慢心を履き違えましたねー』


 新しい魔術を開発し、剣術も、体術も、何もかもを極めた。


『手を出しすぎですね~、それじゃあダメです』


 俺は間違っていたのか。


『自分の強みを忘れていませんか?』


 俺の強み…?


『確かにご主人は、何でも出来ます。けど、全部使うから負けるんです』


 相手に手を読ませない。多くの手を使うのも大切だろ?


『そうですね。でも、ご主人のは中途半端なんですよ。使うならちゃんと出し切ってください』


 全力は出している。それは、俺の実力が足りないから…。


『違います。ご主人は逃げているんです。【魔眼】や【深淵】という大きなものに頼って、今まで積み上げてきたものから逃げている』


 俺が逃げる…だと…?


『悔しいですか?ぷぷぷ、ご主人のへっぴりごしー!…早く、ネーザちゃんを使いこなしてください。待ってますから。』


 …。





「情けない声を出すな…まだ、負けて無いぞ。」




もう少しでくらいまっす!!

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