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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
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episode85 絶望

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「強すぎるッ…!」

「ロゼさんの負担が大きすぎます。一度、立て直しをしないと!」

「ソンナ隙ハ…無イ」


 体が若返り、全盛期の力を取り戻したミールに、『デクストラ』のメンバーは手も足も出ず、ジリジリと押されていた。


「はぁ…はぁ…【ヒール】」

「ロゼさん、変わります!」

「大丈夫…ミラさんが抜けたら、攻撃が…」


 そして、この中で一番消耗していたのはロゼ。

 大量に魔力が必要な『固有結界』の魔力のほとんどを、他のメンバーが集中できるように肩代わりし、味方の支援魔術に、回復魔術までも担当していたロゼ。

 いくらロゼがハイエルフで、底なしの魔力を持っていたとしても、魔術の維持や、使用には神経を使う。ロゼの体力は、もう、底を尽きかけていた。


「私は、前の守られているだけの私じゃない…強くなったんだ…」


 自分に言い聞かせるように呟くロゼ。

 息を荒らげ、大量の汗がロゼの顔を伝う。


 ロゼには、ニーツに弟子入りしてから、いや、弟子入りする前から決めていたことがある。


 『レオの支えになりたい』


 誰よりも強くて、誰よりも考えていて、誰よりも優しい。ロゼにとって最高に格好よくて、自分という存在を助けてくれた何よりも大切な人。

 だがレオは、ロゼのために様々な重荷を背負っている。まだ小さな背中で。

 ロゼは知っている。仲間が死ぬ度に一人涙を流すレオの姿を。辛くて、苦しくて、寂しい。そんな気持ちを自分達には決して見せようとしないレオの弱さを。

 だからこそレオの支えになりたい。

 レオが辛いなら、笑顔で大好物の卵焼きを作ってあげて、二人で食べたい。

 レオが苦しいなら、大丈夫だと声をかけてあげて、その痛みを分かち合いたい。

 レオが寂しいなら、傍にいてあげて、二人きりで出掛けたい。


 隣なんて贅沢は言わない。


 せめて後ろで、少しでもレオの助けになってあげたい。


 そんな強い気持ちを胸に、ロゼは元々苦手だった戦闘も頑張り、強くなった。


「限界は超えてからが本番だってレオ様が言ってた…だから、私はまだ大丈夫…、」


 歯を食いしばり、その綺麗な顔を歪めて踏ん張るロゼを見て、ミラは、適わないな…と思った。


「でも、総督を想う気持ちならミラちゃんだって負けませんからね!」


 ミラは、ロゼにそう言い残すと、ボロボロの体に鞭を打ってミールに向かって走り出す。


「ほんと、総督は幸せ者ですね。美少女二人をこんなに本気にさせて…」



「あぁ…美しくないッ…」


 全身に傷を作り、顔を血で染めたベッルスは呟く。


「なんて醜いんだッ…」


 自分が憧れたあの人は、こんな戦い方はしない。ベッルスは、自分の憧れと、今の自分を照らし合わせ、自虐的な嘲笑を浮かべる。


 ベッルスは既に限界だった。体は鉛のように重く、今すぐ休めと頭が警報を鳴らし、血を流しすぎて、視界が揺らぐ。

 何故、自分はここにいるのか。何故まだ戦わないといけないのかと、そんなことを不意に思ってしまう程追い詰められているベッルス。


「ベッルス!!」

「ッ!!」


 仲間の叫び声に、焦点を慌てて合わせるベッルス。だが、目の前には既にミールの剣があり、体を切り付けられ、後ろに吹き飛ばされる。


「ガバッ…」


 思い切り体を壁に叩きつけられ、肺の空気と、口に溜まっていた血が一緒に吐き出される。


「司令塔を失い、全員が満身創痍…降伏したらどうだ?」

「マダ…終ワッテ無イ!!」


 ベッルスを見下ろし、「これが実力差だ」と言わんばかりに呆れ果てたように呟くミール。

 だが、ここで諦めている者は誰もいない。ウムブラが、ここ一番の力を発揮してミールの首筋に短剣を突き刺す。

 だが、その傷も【癒しの檻】によって一瞬のうちに回復。振り向けざまのミールの剣が直撃したウムブラは、壁の端から端へと吹き飛ばされる。


 襲いかかる絶望。


 レオとカーリを相手にし、善戦をした『デクストラ』のメンバーたちは、自分たちならやれると思っていた。だが、自分たちの前にはばかった『公爵』という存在は、予想を遥かに越えて強かった。


「ごめ、んなさ…い…」


 そして、遂には力尽き、気絶してしまったロゼ。

 ロゼの気絶により、『固有結界』が保てなくなり、黒い壁は、早送りで劣化していくように崩れ落ちていく。


「ドラ、ロゼさんを安全な場所に移動させて!」

「カニス、マダ行ケル?」

「ハッ…心配すんな。俺を心配していいのは、兄貴だけだ…」

「ベッルスくん、立てますか?」

「すまない、イティネさんッ…!」


 互いに励まし合い、立ち上がる『デクストラ』の主要メンバー。

 一年半、一緒に苦楽を共にした仲間だ。互いのことはよく分かってるし、信頼もしている。

 そして、総督(レオ)の一番の腹心を争うライバルでもある。

 まだ他に諦めてない奴がいるのなら、自分も諦めない。


「オッ、旦那の方も終わった?」

「残念だったな、『デクストラ』の諸君。君達の総督殿は、力尽きたようだぞ」

「あいつ本当に十五歳で、伯爵生まれか?王族でも有り得ネェ強さだぞ」


 槍を肩に担ぎ、全身を血だらけにしたブローディアが、ミールの後ろから声をかけ、並ぶ。


「そんな…」


 そして、その後ろに、ネーザを握ったままピクリとも動かずに地面に倒れたレオの姿が。


「旦那、悪ィけど、俺はもう無理そうだから

あとよろしくな」

「承った」


 レオを失い、全員がボロボロ。

 そして、相手は公爵二人。

 絶望が、『デクストラ』を襲う。

明日は、デクストラがミールと戦っているあいだのレオとブローディアの戦いを書きます

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