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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
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episode84 暗転

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

緊迫した状況の中、互いに動きを見せず、睨み合うレオとブローディア。

 レオは、少なからずブローディアの情報を事前に握っている。だが、それも戦闘に役立てるほどのものではなく、情報を手に入れるのは、戦闘の中。

 それは、ブローディアも同じで、あの性格からしてもレオの情報を事前に入手している可能性は少ない。


(それよりも、左目の治りが遅すぎる…あの槍に何かしらの能力が付いているな。)


 普段ならば、左目の損傷という重症も一瞬で治るはずだが、未だ血が止まることはなく、ドクドクと心臓の鼓動に合わせて涙のように溢れ出る。


「コッちはもう治ッたゼェ」


 左目の血を拭い、ゆっくりと左目を開けるブローディア。

 当然ながら、左目の損傷はすぐに治るほどの怪我では無く、手当をすぐにしなければ失明に繋がるほどの重症だ。

 だが、そんな常識は、公爵に通じるはずもなく、ブローディアは、左目を斬りつけられたとは思えないほどの意気揚々とした態度を取る。


(魔力の流れが不自然だな。ブローディアから槍に流れているのではなく、槍からブローディアの方へ流れている…。あの槍は、相手の回復を遅らせるだけじゃ無さそうだな。)


 回復が遅らされる能力や、他にも能力があると見る限り、これ以上あの槍で攻撃を受けるのを避けたいレオ。後続で来る男爵級や、『デクストラ』のこともあり、できれば早期決戦を望みたいところだ。


「ふぅー…まずはあの槍の性質を暴く…。話はそれからだ。」

「ハッ!近づけると思うなよ!」


 呼吸を一つゆっくりと置いたレオは、ネーザを再度強く握り直す。


(対軍級魔術や、範囲系の魔術を使えば、デクストラ(アイツら)の固有結界の維持を邪魔する可能性がある。)


「【幻歩】」


 大技を使えば、『デクストラ』の邪魔をする可能性があり、中級を遠距離から放っても、公爵相手牽制ですら通じるとは思えないレオ。

 ならばと、レオは、正面突破が一番早いと、再び【幻歩】でブローディアに突っ込む。


「んー、ここら辺か?」

「っ!」


 絶対に見えないはずのレオの動き。

 だが、ブローディアは、【幻歩】の攻撃を一回受けただけで、そこから相手の位置から自分の位置までの移動距離と時間で、レオが大体どこにいるのかを予想。

 レオの腹めがけて唐突に突き出された槍に、レオは慌てて減速して避けるが、背中に冷や汗が流れる。


「剣の仕組みは見えていないが、俺の動きの仕組みは見えていたか…。」

「もうその技は俺には通じないぜ?」

「面白い。【幻歩】。」


 見破られたのにも関わらず、再度【幻歩】を使ってブローディアとの距離を詰めにかかるレオ。


「次は外さネェ!」

「【静地】、【幻歩】」

「ま、まじかよ。あのスピードからの直角ターンとか頭イッてんだろ」


 二度同じ攻撃が通じないのは、レオも同じ。

 ブローディアの槍が的確にレオを貫こうと迫り来る瞬間、流れを断ち切り、【静地】で直角に方向転換。そして、すぐさま【幻歩】で姿を消すレオ。

 これには、ブローディアも、驚きを隠せずにいた。


「【支配(インペリウム)】」

「ぐオッ…体が重ッ…」


 そして、姿を消したレオは、ブローディアの動きを見つつ、【深淵】による支配を開始する。

 支配するのは空気。ブローディアの頭上にある空気を圧縮させ、全ての流れを下向きに支配する。

 そうすると、圧縮させ、少なからず質量を持った空気が、勢いよく下向きに動き、台風のような強風がブローディア一点に集中して襲う。

 その激しい衝撃にグッと歯を食いしばり、耐えながら、警戒を続けるブローディア。


『ご主人、さっきからブツブツと独り言酷いですけど、友達いなさ過ぎて遂には空気が友達みたいな危ない人にでもなりやがりました?』

「うるさい。今、あの槍の性質を魔眼で見ているんだ。静かにしろ。」

『あの槍?あぁ、魔槍(まそう)バールバディのことでいやがりますか?』

「知っているのか。」

『知ってるも何も、あれはネーザちゃんが使って…間違えた…ネーザちゃんを使っていた魔王様の所有物、魔王シリーズの一つですよー』


 意外や意外。灯台もと暗しとはこの事だろうか。

 ブローディアの持っていた槍は、ネーザと同じ魔王シリーズの武具の一つだったようで、身近によく知る()がいたようだ。


「何故それを早く言わん。」

『てっきり知ってるかとー』

「あの槍について知っていることを話せ。」

『魔槍バールバディ。別名【全喰(ぜんくう)の槍】。その穂先で突いた対象の生命力、体力、気力、魔力、身体能力、あらゆるものを喰らい、それを所有者に引き渡す厄介な能力ですねー、もちろん、回復力も例外じゃ無いです』

「なるほど、全てが合致した。」


 全てネーザの言った通り、魔槍バールバディは、穂先で相手のあらゆるものを喰らう。入学式でレオが戦ったグランの剣の性質である魔力喰い(マナ・イーター)に似たものがあるだろう。

 そして、レオの傷が治りにくかったのも、ブローディアの傷の治りが早かったのも、魔槍がレオの回復力を奪い、ブローディアに譲渡したからだ。


「それで、一回に取られる力の量はどれくらいなんだ。」

『一回につき、子供一人分ぐらいですかねー。奪い取る力にランダムで偏りがでますから、さっきは回復力をごっそりいかれたのかとー』

「かなりのものだな。生命力を持ってかれたら終わりだ。」


 様子を伺ってブローディアの目から逃れながら会話していたレオ。

 魔槍の事を知れば解決の糸口が掴めると思っていたレオだが、ますます近づけなくなってしまった。


「厄介極まりないな…出来れば使いたくなかったが、時間が無い。」

「オッ、ミッけー!」


 【幻歩】で姿を隠していたレオだったが、ブローディアから少し距離をとった場所に流れを断ち切り、姿を現したレオ。

 それを見つけたブローディアは、待ちきれないとばかりに、穂先をレオに向けたまま突進を始める。


「もラッタァー!!」

「【暗転】」


 ブローディアの穂先が、レオの右目へと鋭く向かう。

 ブローディアが、これは避けられないと確信の声をあげた瞬間、辺りが『闇』に包まれる。

 そして、先程まで目の前にいた、レオの姿が再び消える。


「『固有結界』!?」

「今日は、いい月だな。」

「ッゥ!!」


 周辺全てが真っ暗になり、辺りを見渡すブローディア。そして、上から唐突にかけられる声に反応し、上をむく。

 そこには、満月の真下で魔術陣の上に仁王立ちし、月明かりに照らされたレオの姿があった。


 【暗転】。

 レオがこの半年で作り上げた、自分の周辺を【夜】へと作り替える固有結界。

 吸血鬼は本来、夜にその実力を発揮する。ヴィデレの眷属であるレオは、昼間でも問題なく活動できるが、やはり、本質は吸血鬼。夜になれば、吸血鬼としての真価を発揮する。

 そして、最強の吸血鬼の眷属であるレオは、夜になった時の力の上げ幅は、他の吸血鬼の比ではない。


「魔力の消費が激しいので、あまり長引かせたくはない。すぐに決めよう。」


 そして、レオの姿が闇に溶け込むように消えていく。

 【幻歩】とは違う、吸血鬼本来の力。闇に溶け込み、暗躍する。それこそが吸血鬼の本来のあり方だ。


 レオは、自分の指を噛み、血をわざと流し、地面にポタポタと垂らす。


「【血塗れた刃(サングイス・クルテル)】」


 そうすると、レオの血は、尖ったナイフのように形を変え、ブローディアに向かって飛び出す。


「クッ…!」


 ブローディアは、急に後ろから襲いかかる無数のナイフを槍を使って叩き落とす。

 が、ナイフと槍が接触した瞬間、ナイフは水のように弾け、元の血に戻る。

 その血は、ブローディアの顔にかかり、ブローディアの視界を防ぐ。


「【雷同】」

「がハッ!!こノッ!」


 ブローディアの視界が潰した隙を付き、レオが横腹に【雷同】を叩き込む。

 その衝撃に体勢を崩したブローディアだったが、レオに向かって槍を振るう。


「ナッ…なんなんだよこれ」


 ブローディアの槍は、レオに当たることをなく空を切る。

 そして、ブローディアが見たのは、自分の目でも捉えきれないレオの動き。

 そして、不気味に光るレオの魔眼が残した一筋の軌跡。


「早急に決めるぞ。」


 レオの声が、闇の中に響く。

すみません、少し遅れました

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