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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
83/286

episode82 始まり

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「『固有結界』…分断を狙ったか。そして、この魔力の密度。中々に手強そうなのが揃っているようだ」


 自分を取り囲むように大きく配置された黒い壁を見て、感心したようにミールは呟く。


 『デクストラ』のメンバー全員の魔力を集結させ作り上げた魔術。

 自分達の有利な状況、環境を作り、相手に地の利を与えない空間を作る魔術なので、『固有結界』は、かなり高度な魔術の一つに数えれている。


 訓練場の半分ほどの大きさで、天井は八メートル程。

 一定間隔に壁に配置された不気味に光る蝋燭の灯火が、ミールの顔を照らす。

 ここはまさに、重犯罪者が送られるような窓も無く、太陽の光が入り込まない厳重な牢屋。


「シフト『ジャイアントキリング』を開始するッ!」


 そして、今まで気配を隠していた『デクストラ』のメンバーのうち、二十人がベッルスの指示で天井からミール目掛けて降り注ぐ。

 全員が片手に比較的リーチの短い剣を持っており、もう片方の手に魔術陣を配置している。


「そんな奇襲が通じるとでも?」


 ミールは、特に驚いた様子も無く、ゆっくりと腰から剣を抜剣する。


「散開ッ!」

「ふむ…」


 ベッルスの次なる指示で、空中でそれぞれ二人組で手を取り、互いを足場にして空中で散らばる。


「ツーマンセルアタックッ!」

「っ…」


 先程まで余裕のだったミールの表情が一瞬にして、焦りの表情に変わる。


「くっ…なんだこの攻撃は…!」


 そして、戦闘が始まって五分。ミールの体には無数の小さな傷が刻まれていた。

 五十年以上戦場で生きてきたミールですら、初めて見る動き。


 最初は、壁を足場に鋭い動きで大人数で攻めるだけだった。

 ミールはそれを、剣を使い余裕は無いが、完璧に捌いていた。

 だが、途中からその動きは豹変した。

 他人の展開した魔術陣を足場に急激な方向転換。

 空中で、互いの足裏を合わせて勢いを付けての加速。

 仲間が傷つけば、すぐさま死角から攻撃し、そのものを救出し、端で待機していたメンバーによる回復。

 待機メンバーに意識を置けば、すぐさま四方八方からの攻撃。

 二十人にが思い切り動くには狭い空間。だが、それを最大限に活かし、休む暇無く攻撃を与え続け、息付く暇を与えない攻撃。それが、『デクストラ』の『格上狩り』を成すための技。


 【多次元立体起動攻撃】。


 レオすらも手を焼いた厄介な連携だ。


「だが、もう二人組のペアは見切った…反撃させてもらうぞ」


 だが、ただでやられるミールでは無い、ツーマンセルのペアを見切り、空中で方向展開をしようとしたペアのところへ飛び、剣を振るい、リズムを崩す。


「この攻撃は、永遠に続く攻撃が主。一つ止めてしまえば、自然と狂うだろう」

「スリーマンセル、焔陣(ほむらじん)ッ!」


 勝ち誇ったように笑うミールを裏切るように、ベッルスが次なる指示を全体に与える。

 リズムが崩されることなど想定内。それくらいで敗北するのなら、レオが手を焼くはずがない。


 この攻撃の強みは、複数のリズムを持っていること。

 一つのリズムが崩されても、すぐさま別のリズムに切り替える。

 そして、そのリズムは、加速する。


「【花棘(フロース・スピーナ)】」

「【雷同】」

「【水槍】」


 そして、スリーマンセル(三人組)からは、攻撃も多種多様に分かれる。

 絶え間なく続く、リーチの短めの剣の攻撃に加え、ベッルスやミラの比較的詠唱の短い攻撃系魔術や、後方で控えているロゼの【他強化】の魔術、ウムブラやイティネの即席の罠による小技。

 初見ではとても対象できないような攻撃が、次々と飛び出し、ミールに手を出すことを許さない。


「一気に決めるッ!」



「まずはその槍の腕前、見せてもらおうか。」

「あんま余裕ブッこいてんと、お前さんすぐに死ぬぜ?」

「問題無い。」

「アァそう…ジァ死ね」


 レオの挑発に容易く乗ったブローディアの構えは独特なものだった。

 半身の姿勢で、大きく足を開き、右膝を軽く曲げてレオの方に向け、左足はピンと伸ばす。

 そして、左手で槍の柄の真ん中を持ち、右手は、槍の後方…石突きと呼ばれる柄の尻の部分を持っている。

 普通ならば、細い槍の石突きを手のひらで包むように持てば、力が入りにくい。

 だが、ブローディアには何か意図があってやっている。それを一瞬で感じ取ったレオは、魔眼へ神経を集め、集中する。


「疾ッ…!!」


 そして、放たれたブローディアの一撃。

 空間を切り裂くように、レオの顔へと放たれた高速の槍をレオは、首を捻って回避を試みる。


(穂先が、離れない…!?)


 確かに首を捻り、槍の起動から顔を外したはずのレオ。

 だが、レオの左目には穂先がしっかりと映っていた。


「魔眼…ダッけか?厄介だから一番最初に潰させて貰ったぜ」


 ブローディアの槍の穂先は、レオの左目をしっかりと捉え、瞼を瞬間に閉じたレオの左目を(えぐ)る。


「相手の動きを見てから、左手を離し、石突きを持っている右手で槍全体を動かして穂先の軌道を変えたのか。その柔らかでしっかりとした手首だからこそできる技と言ったところか。」

「ヘェ…初見でこの槍の仕組みを見切ッたのはお前さんが初めてだゼェ?」


 左目を潰され、閉じた瞼の間から血を流すレオ。だが、左目を潰された代わりに、ブローディアの槍の仕組みを一撃で見抜いたようだ。


「俺の槍は相手の動きを見てから変幻自在に起動が変わる『後出しの槍』。躱すことはおろか、盾で防ぐのも無理だぜ?」

「そうか。【幻歩(げんぽ)】。」


 意気揚々と喋るブローディアの話の途中で、攻撃を仕掛けるレオ。

 一瞬にして、目の前にいたレオの姿が消え、戸惑うブローディア。


「【剣式・雷同】」

「グッゥ!!」


 そして、次の瞬間、ブローディアの左目にネーザが突き刺さる。

 急な激しい痛みに苦痛の声をあげるブローディア。


「お返しだ。これで手の内はお互い明かしたな?"正々堂々真正面から相手してやるよ"」

「野郎…コッちはソッちの剣の仕組みなんて見れてネェよ…!」

「何を言っている?チャンスは与えてやったんだ。見切れない貴様の実力不足だろう。これでは、公爵の名折れだな。」


 左目を抑えるブローディアに、挑発的な笑みを浮かべ、煽りに煽るレオ。


「ほら、早く構えろ。次だ。」


 公爵二人対リベリオン。

 最初の牽制は、リベリオンが優勢で始まった。

今日から戦闘シーン続きます

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