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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第五章 憧れ
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episode81 デクストラ

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「イムペラートル伯爵、何故このタイミングで我々を投入したか、聞いてもよろしいかな?」

「…トーナリ公爵か。何故か…私が同じ立場ならそうするからですかね…それを食い止めるためには、トーナリ公爵達の力でないと駄目…ということでしょうか……すみません、口下手なもので。」

「良い。伯爵にしか分からないこともあるのだろう。今は私の方が伯爵の部下だ。指示には従おう。」


 レオ達とは真反対の場所に位置する王国軍の本陣。

 そこに、今回の総大将である常々無敗の『軍神』、ニスル=イムペラートル伯爵と、【文体祭】の時にいた、ミール=トーナリ公爵の姿が。


 ニスル=イムペラートル。『軍神』と呼ばれる王国歴代で最優と名高い男。

 息子のニアと同じ青色の髪を短髪に揃え、未来を見通すような鋭い同色の瞳。

 彫りの深い顔つきで、体も屈強。まさに『武人』という言葉が似合う。


 そして、ミール=トーナリ。

 トーナリ公爵家当主、【文体祭】同様、白髪をオールバックに硬めており、新しく顎に白ヒゲを携えている今年六十四歳の歴戦の貴族。その実力は、ヒカルのお墨付きで、レオと同格かそれ以上だ。


「何でもいいからヨォ…早く行こうぜ」

「まあ待て。あと五分だ」

「チッ…あー、暴れテェ…」


 大槍を肩に背負い、気だるそうに呟く若い青年。

 ブローディア=マールス公爵令息。金色の長髪に、緋色の瞳。体つきは細いが肩幅は広く、上半身が逆三角のような筋肉付きをしている。

 未だ、当主の座を継げていないものの、実力は十分。彼の槍捌きは、王国で一、二を争う程だ。


「緑の煙、五。」

「はっ!」

「…私は彼を油断しません。彼は、私と同等の知恵を持っている…」


 ニスルとレオは、直接話したことは無い。

 が、互いが互いを遠目から見て知っている。


 ニスルが常勝無敗の将なのは、相手の参謀の策略を的確に当てることが出来る。

 それは、ニスルが相手の情報を元に、相手の人格、性格、思考を限りなく本人と近い形で想像出来るから。

 だが、レオだけは例外だった。情報が少ないのもある。が、今までそういった状況でも確実に相手の策略を当ててきたニスル。だが、レオの思考は読み切れなかった。

 だかりこそニスルは、レオの思考を読むのをやめた。


(この戦争、もし私が同じ立場だったら、彼と同じ作戦を取る…)


 ニスルは、レオの思考を読むのではなく、相手になりきるのではなく、自分が同じ立場ならばとして考えた。

 そして、この考えを的中させたニスルは、レオへの評価を自分の持てる全ての最大へと引き上げた。

 レオは、常勝無敗の自分と同じだけの作戦を思いつく、知恵、判断力、才能を兼ね備えている。


「だが、今回はそれを読んだ私の勝ちのようだな……」



「来る…。全員、戦闘準備。【ギアス】、【魔闘気】、【魔眼解放】、『システム:魔剣起動』。」

「「「「【魔闘気】」」」」


 急激に迫ってくる二つの気配を感じ、レオは、『デクストラ』全員に戦闘態勢の指示を与える。

 いつも通りの戦闘準備をするレオ。

 そして、この一年半、鍛え続けてきた『デクストラ』のメンバー達の【魔闘気】。

 各々のこの戦いにかける思いが篭った色とりどりの【魔闘気】が彼らの体を包む。


「総員、詠唱開始。」

「「「「「【彼の者を閉じ込める牢獄 これより展開されるのは我らが支配領域 閉じ込められるは罪人 我らは断罪者なり】」」」」」

「ヒャッハァ!!見っけタァ!!」

「気をつけろブローディア!」

「分断しろ。」

「「「「「【牢獄(エルガストゥルム)結界(オービス)】」」」」」


 槍を片手にレオ達に突っ込んでくるブローディアと、剣を腰に携えたミール。

 だが、二人がレオ達に近づいた瞬間、『デクストラ』の魔術が発動する。

 二人の間に、黒い壁が地面から轟音をあげて現れる。

 そして、ミールを取り囲むように次々現れる黒い壁。


「ブローディア=マールスだったか。貴様の相手は俺だ。」

「ヘェ…面白レェ!フィエルダー家の神童、聞いてるぜその噂ァ…強いんだってナァ」

「ああ、俺は強いぞ。」

「ヘッ!その傲慢な態度、嫌いジャネェぜ」


 剣の使い手の多い王国では、槍使いは珍しい。

 剣の戦いに慣れたレオにとって、槍使いのブローディアはやりにくいのは必然。

 そして、ブローディアの身長よりも長い長槍は、レオに取っての天敵とも言える。

 超近距離戦が得意なレオと、リーチを活かした戦い方をする槍使い。

 槍使いは、相手と常に距離を取り、剣の届かない範囲から攻めるのが定石。それも相手は公爵令息で、王国でも一、二を争う程の槍の使い手。これは厳しい勝負になりそうだ。


「それよりヨォ、お前さんはいいかもしれネェけど、他の奴らはいいのか?ぶっチャけ、お前さん以外そこそこ強いけど、微妙なメンバーばかりジャね?」

「フッ、それはお門違いもいいところだ。あいつらは、俺の右腕(デクストラ)。リベリオン最強の戦力だ。むしろ、そっちの連れの心配をした方がいいぞ。」


 『デクストラ』は、レオの腹心のベッルス、ミラ、ウムブラを始め、イティネ、ドラなどの実力者を集め、レオが一年半鍛え続けてきた先鋭達。

 そして、『デクストラ』が作られた目的。

 それは、【格上狩り(ジャイアントキリング)】。自分たちよりも遥か強い相手を想定し、連携を活かして戦うリベリオンが誇る最強メンバー。

 レオとカーリが二人がかりで『デクストラ』と一度戦ったが、かなり手こずり、一歩間違えたら負けていた程だ。


「向こうは気にせず、俺達も始めよう。」

「見かけによらず血の気が多いネェ…理解してる?お前さんを殺せば、リベリオンの反乱は終わり。大将首だってことがサァ」

「貴様も理解していないようだな。貴様如きでは、俺の首は、取れないってことが。」

「ヘェ…」


 レオの挑発に、目を鋭くし、全身からピリピリとした威圧感を出すブローディア。完全に戦闘態勢だ。


 模擬戦では無い命をかけた本当の死合。

 作戦を完全に読まれた負い目もある。レオに取って絶対に負けられない戦い。

 レオと『デクストラ』の今後を賭けた、撤退戦が始まる。

このまま五章終わりまで戦闘シーンが続きます。

かなり濃密に書くつもりなのでお付き合いお願いします。

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