episode78 ご褒美
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「見てください総督、ミラちゃんに似合いそうなヘアピンがありますよ!しかも、こんなにお安く!!これは買うしか無いのではーって先行かないでくださいぃぃぃぃぃ!!」
昼下がりの元学園街。
多くの賑わいを見せることは無いが、そこそこの人数が従来する道の真ん中で、アクセサリーを販売している露店を見て、回りくどいお願いをレオにしいたミラ。
だが、当然の如く無視されて、置いていかれている。
リベリオンの【兵科】や【救護科】のような戦闘員、その家族や、リベリオンを支える裏方仕事をしてくれているメンバーは、全てこのリベリオンの敷地内で生活している。
元の学園の場所に加えて、一部の森を開拓し、その一部をリベリオンに参加している人々の家としている。
当然、生活する以上、様々なモノが必要となり、買う必要がある。
それを賄うのが、元学園街、二年ほど名前募集中の商工街だ。
「総督、もうちょっとミラちゃんに優しくしてもいいと思うんですけど?」
「貴重な訓練の時間を割いて、貴様に付き合っているだけでも感謝しろ。」
「付き合うならちゃんとしてほしいですー」
「…一理ある。」
本日、レオとミラは、元学園街で買い物中。
レオが、普段頑張っているベッルス達腹心にボーナスとして何が欲しいか訪ねたところ、ベッルスは、リベリオンの中でバラ園を作りたいと言うことなので土地と施設を用意し、ウムブラは、新しいリボンが欲しいと頼まれたので、赤、青、黄、などといった多くの色のリボンの詰め合わせをプレゼントしたレオ。
そして、ミラにボーナスの事を聞いた結果…
「二人きりで買い物したいです!」
「却下だ。」
「ご褒美なんですよね?なら、聞いてくれてもいいじゃないですかー!」
「買い物したところで、褒美にはならんだろうが。」
「これは、私の価値観の話であって、総督の価値観の話ではないです!」
「ちっ、ド平民ならばこれで何とか誤魔化せるのだが。」
物でねだられたら、それを買うだけで楽に済むのだが、この手のご褒美で一番面倒なのが、自分が何時間も時間を消費すること。
【覇王祭】のニーツに、膝枕拘束されたように、今まで立てていた予定や、日課が崩れてしまう。
褒美として与えるので、断れないが、できればそれは避けて欲しかったレオは、なんとか誤魔化そうとするも、相手は見た目と言動は馬鹿だが、実際はそこそこ頭のキレるミラ。そう上手くはいかなかった。
「はぁ…帰りたい。」
「始まって小鐘二つも経ってないのに、そんなのでよくロゼさんとデートできますよね」
「苦じゃないからな。」
「ミラちゃんととは、苦だとでも言うんですか?」
「ああ。」
「即答!?でも、ミラちゃんめげない!」
普段真面目で、常識人なレオが、ミラと一緒だと何故かボケ役に回って会話をする。
こういう、レオが誰かをからかうような会話が出来るのは、ミラだけだろう。
そう考えれば、誰でも高圧的な態度をとるレオの圧が小さくなり、調子を狂わされるニーツと同じ『特別』というやつだろう。
「総督、持ッテキタ」
「ウムブラ…例の書類か。」
「王国ノ分。全部アル」
「机の上に置いておいてくれ。」
「了解」
そして、レオがなんだかんだ文句を言いつつ、ミラに付き合って色々な店を見て回っていた時、唐突にレオの背後にウムブラが現れ、耳打ちをする。
要件が終わると、ウムブラは、再び気配を消してどこかに行ってしまった。
「ウムブラ、何の用だったんです?」
「王国の兵士の、五人将以上の兵士の細かい情報を【諜報科】に頼んでいたんだ。」
「ご、五人将含めたら、何百人なんて量じゃないですよ!?最近、【諜報科】の人がクマ作って何かしてると思ったら、そんなことさせてたんですか!?」
王国の軍には、それぞれ大きいまとまりから、極小さなまとまりまで様々に分かれている。
一番小さなまとまりが、先程レオが言った五人将。王国では、基本的に戦場で五人組で動くため、そこに五人将というリーダーを置き、統率を取りやすくしている。
その五人組を二十集め、その中でリーダーをするのが百人将。
そこから、まとまりの人数が増えていき、五百人将、千人将、五千人将と増えていく。
そして、五千人以上の軍をまとめるリーダーが、『軍神』ニスル=イムペラートルなどの総大将と呼ばれる七人の英傑達だ。
「その資料は、どんなことが書かれているんです?」
「年齢、性別、出身、家族構成、経歴、趣味、特技、資格、参加した戦場、好む戦術、得意な武器、人間関係とか、諸々だな。」
「それを全部把握するんですか?」
「ああ。リベリオンのように全員把握することは出来ないが、五人将以上は絶対だな。戦場では、情報が多い方が有利…そして、それは細かく、より正確な程良い。」
「いつ寝てるんですか…」
「睡眠は取っている。こういう情報は、日常的に並列思考で頭に入れている。」
「うわぁ…凄いですね」
レオの超人ぶりに圧倒されつつ、関心を隠せないミラ。貴族の生まれとはいえ、自分よりも年下なレオが、修行から、リベリオンの運営、そして敵の情報などなど、通常では考えられない事を平然とやってのけるレオを素直に尊敬しながら、何か力になれないかと考えるミラ。
「余計な事を考えるな。今は褒美の時間だろ?素直に楽しめ。」
「あ、ありがとうございます」
ミラが余計な事を考えていると、ミラの細かい表情に気づいたレオは、ミラの頭に手を置いて微笑む。
「この前の橋の件…裏の森で取れば安く済むな。」
「総督…」
自分には余計な事を考えるなといいながら、自分は並列思考でリベリオンの運営事情を考えているレオにジト目を向けるミラ。
「普段からそんなことしてるんですか」
「ああ。情報の整理、リベリオンの運営、それと魔術開発だな。」
「心配して損しました」
想像よりも、色々考えていたレオに呆れ果てるミラ。
「ほら、総督!次行きますよ!」
「腕を引っ張るな。」
「こうしてみると、ドキドキしません?」
「いや、全く。俺にまともな妹がいて、平民の生まれならば、こんな気持ちだったのだろうとは思うがな…おい、腕をつねるな。」
その後、レオの発言によって不機嫌になったミラは、帰りにレオがサプライズでプレゼントを渡すまで、続いたそうだ。
祝・1万PV達成!皆様、ありがとうございます!