episode77 ネーザ
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『ご主人、寝れないのなら、ネーザちゃんとの出会いも思い返してみたらどーです?』
「貴様との出会い…。」
ヴィデレとの眷属の契約という、レオ的に苦い思い出を思い出し、完全に目が冴えてしまったレオ。
ネーザの提案に乗るのは癪だが、特にやることも思いつかないので、思い出すことにしたレオ。
「…忘れた。」
『絶対嘘ですねー!ネーザちゃんとのあの刺激的な出会いを忘れられるわけねえじゃないですよ!』
「ちっ……。」
☆
「魔王シリーズ…?」
「あのヒカルが魔王を倒した時に、魔王からぶんどってきた十の武具の事だ。その中の一つ、魔剣ネーザを小僧に託すと」
「最近、並の剣では俺の魔力に耐えられず、俺がセーブしていたのが悩みだったからな。その剣ならば、耐えられるかもしれんな」
カーリとヒカルが、勇者試練で天界に行っているため、負けないように今まで以上にハードな訓練をしていたレオ。
そのヴィデレとの訓練の終わりに、ヴィデレに渡された一振の剣。
「刀身が黒いな…。確かに、凄まじい魔力を感じる。」
「アイツが、貴様に合わせて色々と調整をしたから、多分安全だと言っていた」
「不確定要素がある中で、安全という言葉を使うのはどうかと思うがな。」
ヴィデレから渡された剣を、手に取り、まじまじと眺めるレオ。
いつも使っている、学生用の剣よりも大きい大人用の両刃剣。
柄から、刀身まで全てが美しい黒曜石のような黒色をしており、自然と視線が吸い込まれるようなミステリアスな雰囲気を出している。
ずっしりとした重みが手に伝わり、軽く振るうと、風の抵抗を感じさせない、一振りで分かるほどのいい剣だ。
「『システム:魔剣起動』と唱えると、その魔剣は目覚めるらしい」
「目覚める?」
「人格が魔剣に宿っているようだ。意思を持つと言った方が正しいか」
「面倒なモノじゃ無ければいいが…『システム:魔剣起動』」
レオは、最近増えた面倒事が、更に増えることを懸念して、どうかまともであってくれと心の中で願いながら、魔剣を起動する。
『むっ、相性九十八パーセント…シンクロ率は二パーセントと低いが、そのうち上がるか…です』
「おい、この意思を無くすためにはどうしたらいい?」
「いや、早すぎだろう?」
「嫌な予感しかしないんだが。」
魔剣ネーザの開校一言目を聞いて、何かを察したレオ。
レオの望みは、叶わなかったようだ。
『えーっと、なんて呼べばいいんですかね、ご主人様?』
「様はいらん。」
『じゃあご主人で』
「そういう意味では無いのだが。」
『というわけで、初めまして魔剣のネーザだ、です。よろしくしろでいやがります』
「なんだその、ド平民よりも酷い敬語は…。」
口調の安定しないネーザに、ため息を零すレオ。
魔王の使っていた剣ならば、魔王シリーズと呼ばれるほど強力ならば、もう少しまともであってくれと思うレオ。
☆
「昔の方がまだマシだったな。今からでも、山に捨ててくるか。」
『なっ!?酷いですよ!やっともうすぐシンクロ率が五十パーセントいくというのに、捨てちゃうんですか!?』
「魔剣の力を引き出すよりも、俺のストレスの方が死活問題だ。」
ネーザとの出会いを思い出したレオ。
まだ昔の方が、遠慮もあり、可愛気があったが、今ではその面影も無く、所有者のレオに悪態ばかり付く生意気な剣。
本当に、そろそろ捨てようかと悩み始めるレオだった。
すみません、今日かなり短めです




