episode76 眷属
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「そういえば、吸血鬼になって長くなるな…。」
『ご主人、ネーザちゃんと出会ってからも、長いですよ!!その、すっかすっかの脳みその中に叩き込んでおけですよ!』
「うるさい。」
ベッルスとの模擬戦が終わり、夜も更けたことで、自室のベッドの上で寝転がっていたレオ。
吸血鬼になってからと言うもの、元々寝なくてもフル活動できる体質だったのが、完全に夜型の体質になってしまい、なかなか寝付けないのが吸血鬼になってからのレオの悩みだ。
「懐かしいな。」
『そんな黄昏ていると老けますよー?まぁ、脳はもう衰えてるようですけど』
「本気で折るぞ。」
何もする事が無く、独り言を呟くレオに、毎回野次を入れるネーザ。
一部の変わった大人達なら喜びそうなネーザの毒舌も、自身も毒舌なレオには、ただの耳障りなようだ。
レオは、これ以上喋っても、ネーザにからかわれるだけなので、吸血鬼になった事を静かに思い出した。
☆
「おい、今すぐ俺と眷属の契約を結べ。」
「い、いやだ。小僧にはまだ早い!」
「待て!くっ、日差しがこんなにも辛いとは…はぁはぁ…ちっ。」
ヴィデレを見つけるなり、ヴィデレの肩を掴み、真剣な表情でヴィデレに眷属の契約を頼み込むレオ。
だが、ヴィデレは、顔を真っ赤にして逃げてしまう。
ヴィデレの後を追おうとするレオだが、吸血鬼の弱点である日差しが強く、すぐに息が切れてしまい、途中で見失ってしまう。
吸血鬼になり、新しい力を手に入れようと焦っていたレオ。
ヴィデレと契約を結ばなければ、吸血鬼になってもデメリットの方が大きく、このままでは、弱体化して終わってしまう。
そんな事を許せるレオではなく、吸血鬼になった後、ヴィデレを見つける度に、眷属の契約を結べと迫っていたレオ。
だが、ヴィデレは生まれてからこの方、人型の生物の血を吸ったことのない吸血処女。いつも、血石と呼ばれる石を、動物の血に溶かし、人間の血に近づけることで、それを飲み、吸血の代わりにしていた。
「訓練は、今までよりも本気のせいで触ることも出来ない。訓練が終わったらすぐにどこかに行って、訓練が始まるまで絶対に姿を見せない…。詰み…むっ?」
シムルの夕飯を食べ終わり、休憩をしていたレオ。
吸血鬼になったことで、夜になればなるほど、レオの力は高まる。それは、吸血鬼になったメリットで、前よりも研ぎ澄まされた感覚が、一つの気配を捉える。
「あの野郎、また勝手に風呂を使いやがって…だが、今日ばかりは好都合だ。」
レオは、脱衣所までの廊下を静地を使って一気に走り、ドアを思い切り開ける。
「なっ!?小僧、何しに!?」
「何しにだと?決まっているだろう。眷属の契約だ。」
「完全に気配を消していたのに…そうか、吸血鬼になったことで活性化しているのか…」
「冷静に状況を分析している場合か?」
レオが、浴室のドアを開けると、シャワーを浴びているヴィデレがおり、レオは、ヴィデレを壁に押し付け、壁に手を置いて逃げないようにする。状態だけ見れば、壁ドンだが、裸の少女を押し倒す少年。完全に危ない状況である。
「早く血を吸わせろ。そして吸え。」
眷属の契約を結ぶ場合、互いの血を吸う必要がある。
どちらにせよ、吸ったことも、吸われたこともないヴィデレ。
レオが、自分の首筋に歯を当てようとしているのをようやく、理解し、現実から帰ってきたヴィデレは、必死の抵抗を試みる。
「ちっ…。」
「馬鹿が!小僧如きが、我を押さえつけられるわけなかろう!」
レオの歯が、ヴィデレの首筋に当たる瞬間、ヴィデレの蹴りがレオの腹に直撃。
通常の少女の蹴りとは比べ物にならない衝撃がレオを襲い、ヴィデレの手を離してしまう。
その隙に逃走を図るヴィデレ。
「【鎖よ】」
「小僧、貴様!」
ヴィデレが、浴室の扉を開けようとした瞬間、レオがヴィデレの魔術を模倣し、ヴィデレをにげられないように、手足を鎖で拘束する。
「体を洗う約束だろ?」
「今日はいい!離せ!」
「絶対に出さない。」
「ならば私は、湯に浸かる!」
「おっと、湯が急に沸騰したようだ。」
ヴィデレが湯船の方へ無理矢理行くために方向転換しようとした瞬間、湯船の中に火属性の魔術を無詠唱で使い、湯を急激に温めて沸騰させる。
初めてヴィデレと風呂に入った日にやられたことをそのまま返すレオ。
「小僧…っ!」
「覚悟を決めろ。可愛い弟子のためだ。」
「…そりゃあ、私だって一人でしたこともあるし、妄想もする…」
ヴィデレの一人でしたことがあるというのは、決していやらしい方では無く、自分の腕から吸血をする自慰的行為の事だ。
「だが、生みだされてから何十億年と優柔不断に、この事は後回しにしてきたのだ…」
現在、六百七十億と四千六百三十二歳のヴィデレ。
少し真面目な雰囲気で何故歳をサバ読む必要があるのか、乙女心は分からない。
「た、確かに小僧は、真面目だし、誠実だし、初めての相手としては申し分ないと思うのじゃ」
「のじゃ?」
「だ、だがな、私とて、一応、女の子じゃ」
「じゃ?」
急に頬を染め、吸血に一歩踏み出せない事情を話すヴィデレ。
だがレオは、ヴィデレの急についた変な語尾が気になり、話そっちのけで頭の上にハテナを浮かべるレオ。
「だからな…その…」
「踏み出す勇気が無いのなら、俺からしてやる。じっとしていろ。」
「いや、ちょっ…まっ、まって…まってほしいのじゃ…」
口ごもるヴィデレに、焦りに焦っているレオは、限界を迎え、ヴィデレの肩を強引に掴み、ヴィデレの体を自分に引き寄せる。
お忘れだろうが、ヴィデレは、裸だ。だが、それを気にするレオでは無い。
雰囲気も何も無いこの状況だが、レオはお構い無しに、ヴィデレの首筋に歯を突き立て、ヴィデレの血を吸う。デリカシーが無いのか、敢えて無視をしているのか。
「ほら、貴様も吸え。」
「お、終わったのか?私の初めてが、こ、こんな強引に、すぐに?何の感想も無く?」
血を吸われ、パニック状態のヴィデレ。
「ここまで来たんだ。さっさと吸え。」
「うー…こうなったらやけじゃ!ええい、ままよ!」
ヤケになったのか、その場の空気に流されたのか、ヴィデレも、レオの首筋に鋭く尖った歯を突き立てる。
「してしまえばなんて事は無い。どうだ?」
「うむ、美味じゃ…」
レオの言った通り、思ったよりもあっけらかんとしていたのか、血を味わうくらいには余裕が生まれたヴィデレ。
「これで眷属の契約は結ばれた…」
「何か変わった様子は無いがな。」
「そのうち、自然と分かる。眷属の契約は、位の高い私が上。だが、眷属は、家族同然。心で繋がっている…責任、取ってもらうぞ?」
「言っただろう。貴様となら、悪くないかもと。」
眷属を持たずにずっと一人でいたヴィデレに出来た初めての眷属。
決して告白ではないが、二人は、永遠に近い時間を過ごす約束をした。二人は、眷属として、師弟としも、繋がったのかもしれない。
「これを、あのハイエルフに言ったらどうなることだろうなぁ?」
「…冷静さを欠いていたとはいえ、流石に不味いか。」
「これでまた、貴様の弱みを握ったわけだ。クックックッ、覚悟しておけよ?」
狭い浴室の中で二人。青い顔をするレオと、高笑いするヴィデレ。
シムルがこれに気づき、包丁片手に殴り込みにくるのは、時間の問題だった。
☆
『どうしたんですご主人?顔が青ざめてますよ、死に際ですか?』
「いや、何でもない。だが、今夜は眠れなさそうだ…。」
真面目で、クールで、完璧な我らが総督。
だが、そんなレオにも、苦い記憶は存在する…。
十月くらいから、新作で週一連載始めようかなと考え始めた作者。
タキリベは、毎日投稿頑張ります




