episode73 再会
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「交通証の提示を…あ、貴方は…」
「知っていますか?最近、王国では、【リベリオン】に対する悪い噂が流れているんです。」
「いや、え…」
「それともう一つ。今、貴族や王族の間では、【リベリオン】に寝返る者が少なからずいるのです」
純白のドレスを身に纏い、腰まで伸びた桃色の髪を揺らして、【リベリオン】の門を守る衛兵に、微笑む少女が一人。
「待ッテタ」
「ウムブラ様!」
「イイ。私ノ客」
衛兵が、少女の扱いに困っていると、レオの腹心であるウムブラが衛兵に声をかける。
「通シテ」
「は、はい!」
衛兵も、立場が上のウムブラに逆らうわけにも行かず、少女を門の中へと通す。
「久しいですね、元気そうでなによりです。ウムブラ」
「姫様モ元気ソウ」
「それで、彼は?」
「訓練場…イツモ通リ」
「二年半経っても変わりませんね…」
ウムブラと少女は、肩を並べながら、昔馴染みの少年の話をしながら盛り上がる。
「付イタ」
「そういえば、第八訓練場の方に移ったんでしたね。この景色、懐かしいです」
「中ニ入ル」
久しいぶりに会う彼の事を想像し、胸の高鳴りが抑えられない少女。
会うのは二年半ぶり。互いに成長期だけあって、少女もかなり自分で成長したと思っている。彼もどんな風に成長しているのか、元々凛々しかった顔は、もっと格好良くなっているのではと想像してしまい、頬の緩みが止められない少女。
「お久しぶりです、レオ様!」
訓練場の扉を開け、中に入る少女。
「レ…イオ……ス…様…?」
「違ウ、レオ」
「いえ、それは分かっているのです。ですが、あれは私の知っているレオ様じゃないです」
「…?イツモ通リ」
レオを訪ねたのは、レオの元婚約者であり、王国の『元』第四王女のラティス。
レオの事が忘れられず、悩みに悩み、王国を裏切り、レオと共に添い遂げることを誓った健気な少女。
だが、ラティスの目に映ったのは、想像もしていなかった光景だった。
「私の知ってるレオ様は、紅色のオーラなんか纏っていませんし、目も赤くないです!それに、金色の三角形が目の中にありません!なんで左腕が黒いんですか!空飛んでますよ!翼生えちゃってます!!!二年半で変わりすぎですよあの方!!!!」
「落チ着イテ姫様」
「なんだ?騒がしい…貴方は…」
「おほん…お久しぶりですレオ様、ラティスです」
ラティスの元姫とは思えないほどのはしたない大声に反応し、ヴィデレとの修行を止め、入口の方を見るレオ。
レオの視線に気づき、わざとらしく咳払いをしたラティスは、礼儀正しくドレスの裾を少しつまみ、軽く頭を下げて挨拶する。
「ウムブラ、何故、この方がここにいる。」
「姫様ハ、国ヲ裏切ッタ。コレカラ、仲間」
「なんだと?」
「私もこれで、ただのラティス。一緒にいても問題ないですよね?」
「何故そんなことを…。」
レオはあの時、ラティスの安全を思って国から出ていくように忠告した。
だが、ラティスは、それを良しとはしなかった。ずっと許嫁として側にいた。誰よりもレオを理解している自分が何故、レオの隣にいないのか。
国を裏切り、親を裏切り、全ての娯楽と幸せな生活を捨て、レオの元へと戻ってきた。
そんな事をする理由は簡単だ。
なぜなら…
「貴方に恋をしたからです」
女だろうと、男だろうと、誰かのために体を張るのは、その人が好きだから。
好きだから、損も、不利益も、何もかもを考えずに、行動する。
ラティスは今、王女ではなく、一人の恋する女の子なのだ。
「なっ!?いや、ですが…。」
素直に想いを告げられ、動揺するレオ。
ラティスとの関係は、政略結婚。互いに恋心など無いと思っていた相手に、いきなり国を裏切り、好きだと言われたら、さすがのレオでも驚くだろう。
「ひゅーひゅー」と口笛を鳴らして悪ノリするヒカルとヴィデレを魔術でお仕置きしながら、レオは口ごもる。
「お返事はいりません。レオ様も大変なことは分かっていますから…。ですが、すべて終わったら、お返事はいただきますよ?」
頬を髪と同じ桃色に染め、上目遣いで、レオを見つめるラティス。
「新タナ恋敵出現…?」
首を傾げ、周りからラティスに向けられる敵意を察知したウムブラ。
突如現れた、元王女ラティス。【リベリオン】に新たな風が吹くのは間違いないたまろう。
新章なので最初は短めです。
久しぶりのラティスの登場。なぜ、ウムブラがラティスのことを知っていたのか…そこは、後日、全部書きます!episode4貴族の伏線が…。