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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第四章 師匠
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episode68 決戦前夜

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「師匠!」

「…」

「はぁ、はぁ…やっと見つけました」


 試合が終わり、控え室から出ていこうとしていたビスティアの前に、カーリが現れる。

 ビスティアがカーリに自分の死を告げてからというもの、ビスティアは試合以外で顔を見せることは無く、カーリは、試合後になると、まだ近くにいるはずのビスティア必死に探していたが見つかることは無かった。

 だが、準決勝の後、この日になってようやく見つけることができたカーリ。


「何で、何で逃げるんですか」

「…死に際に多く語る男は格好悪ぃからな。お前に話すことはもう無ぇよ」

「そんなことないです!俺はもっと、師匠と話したいことが…!話したいことがあるんです!」


 ビスティアの進行方向に両手を広げて通せんぼするカーリ。

 瞳に大粒の涙を溜め、控え室前の通路に大きく響くような声で叫ぶ。


「【初撃一撃】」

「っ……!」

「弱いお前には、話すことは無い」


 ビスティアは、そんなカーリに本気の蹴りを放つ。

 カーリもそれに反応して慌てて衝撃に構えるが、ビスティアの蹴りは、カーリの顔の横スレスレで止まる。


「じゃあな」

「師匠!」


 カーリの横を通り過ぎるビスティア。


「────決勝で俺を殺せ」

「え?」


 通り過ぎる直前、ビスティアがカーリの耳元で囁く。


「師匠ー!」


 離れていくビスティアの背中を、今のカーリには、追いかけることはできなかった。



「君がこんな落ち着いた酒場に来るなんて珍しいですね。みんな警戒してますよ?」

「師…学園長」


 明るく賑やかな酒場を好むビスティアが、今日はそういう気分にもなれず、薄暗い静かなバーへと足を運んでいた。

 明日自分は魔人となって死ぬ。そう考えると、自然と静かな方へと足が向いていたビスティア。

 アルコール度数の高い酒をガバガバと飲み、周りから嫌な目で見られたとしても構わず飲んでいたビスティアの隣の席に座る影が一つ。

 ビスティアの師匠のヒカルだ。


「師匠でいいですよ。今の私は、学園長では無く、リベリオンの一員に過ぎませんから。」

「何か…御用ですか?」

「いえ、少し話をしようと思ってね。あ、マスター、私にはこの人と同じのをストレートで」

「話…?」

「私は強いので、話すことはありますよね?」

「聞いてたんすか…」


 ビスティアの隣のカウンターに座りながら、さり気なく注文するヒカル。

 掴みどころの無く、だけどいつも自分を見てくれている。そんなヒカルに、まだまだ適わないと呆れながらグラスの中の酒を飲み干すビスティア。


「で、君はどうしたいんです?」

「どうしたい…なかなか難しいですね。」

「シンプルで、核心をつく質問ですからね」

「……助からない事は分かっます。でも、強くなることに人生を捧げたからこそ、死ぬ時は、戦って死にたい…。これが、師匠とかそういう立場を抜いた時の俺の本心です」


 少し悩む素振りを見せたあと、真剣な顔つきでビスティアは語る。

 生まれつきハンデを背負い、それでも諦めきれなかった。男として生まれたからには、絶対になりたかった。この、様々な最強がいる中で、『最強』になりたかった。

 でも大人になるにつれて、見えてくる現実、追うことだけを許されない大人としての責任。やりたいことができるのは、子供までだということに気がついた。


「ならそれでいいじゃないですか。最期くらい皆、我儘を言っても許してくれますよ」


 そんな簡単な事じゃないことはビスティアだって分かっている。

 でも、その言葉をさらりと、挨拶をするように言ってくるのがヒカルという人間。

 ヒカルは、この人は、いつもビスティア(自分)の欲しい言葉を欲しい時に言ってくれる。


「…ありがとう、ございます……」


 声を震わせながら、下を向いて、周りの目など気にせず涙を流したながら何度もお礼を述べるビスティア。


「君の最期の試合、楽しく見させてもらいますよ」


 ビスティアの背中に手を置いてさするヒカル。

 夜が明けるまで、二人は過去話をしながら、酒を飲み交わした。



「よお、馬鹿。」

「レオ…」

「前日に体いじめてどうする。しっかり休め。」

「寝付けなくてな…」


 宿の外の小さな庭で新調した剣を無我夢中に剣を振り、汗を拭くことも忘れて振るカーリ。

 そんな所に声をかけたレオ。

 レオに気づいたカーリは、ようやく剣を振るうのを止め、汗を拭くカーリ。


「明日、どうするつもりなんだ?」

「どうする…どうする、か…どうするんだろうな」


 レオの問いかけに、困ったような笑顔を浮かべて答えるカーリ。


「はぁ…これだから馬鹿は。」

「すまん…」

「構えろ。気が済むまで付き合ってやる。」


 腰からネーザを抜き、カーリに剣先を向けるレオ。

 元から軍服を脱ぎ、肌寒い時期に半袖半ズボンで外に出てきたあたり、元々こうする予定だったのだろう。


「ごめん…」

「こういう時は謝るものじゃないと思うがな。」

「…ありがとう!」


 試合開始まであと、九時間。

多分あと2話!

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