表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第四章 師匠
68/286

episode67 準決勝二回戦【ビスティアvsヴィデレ】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

『意外や意外、試合途中の口喧嘩、勝利したはずのレオ選手の棄権と驚きの連続だった準決勝第一試合。昼休憩を挟み、次なる第二試合はどんな試合になるのか!ビスティア選手対、ヴィデレ=アルケー=ヴァンパイア選手です』

『両選手は、それぞれカーリ選手、レオ選手の師匠でもあります』

『それでは、弟子対決の後に、師匠対決が見れると言うわけですね』

『この試合も、目の離せない素晴らしい試合になるでしょう』


 昼を挟み、チラホラと会場に再び観客が戻った頃、アナウンスが少しずつ始まると、一気に人が押しかけ、ものの五分で満席になってしまう会場。


『それでは、両者入場です』


 アナウンスに合わせて噴出する煙の中から現れたビスティアとヴィデレ。

 両者、ヒカルお手製の軍服に身を包み、神妙な面持ちで登場する。


「ノースリーブ小僧と手合わせするのは初めてだな」

「絶対負けねえ…俺の蹴りで最強を越える」

「そう焦るな。ノースリーブ小僧にいい話を持ってきたんだ」

「いい話?」


 ステージ上で、敵意むき出しでヴィデレを睨みつけるビスティアに、ヴィデレは余裕たっぷりに話題を振り、会話を続ける。


「ノースリーブ小僧に試練をやろう」

「試練…?」

「貴様の【初撃一撃】が(われ)の最強の防御を打ち破ったなら、貴様に勝利を譲る。いい話だろう?」

「…上等!」


 ヴィデレの提案に、少し考える素振りを見せたビスティア。だがすぐに、決断すると鋭い犬歯を覗かせて笑う。


「だが、急に何故試練なんか?」

「試練とはどういうものかわかるか?」

「試練…乗り越えて強くなるものだな。少なくとも俺はそう思っている」

「ククッ…まあ、それも正解だが、間違いだ」


 ビスティアの答えにヴィデレは喉を鳴らして笑う。


「その考えは、挑戦者の考えだ。試練とは、強者が弱者に対して行う慈悲、譲歩、そして気まぐれだ。私の試練を受けた時点で、貴様は貴様の中で自分を私より下と判断したのだよ」


 「それではまだ最強は程遠いぞ?」と言ったように笑うヴィデレ。


「ハッ…最後の最期で、俺の最強の夢には時間が足らないことがよくわかったぜ…」

「どうする?これを聞いても試練を受けるか?」

「ああ…今は、決勝に上がる可能性が少しでも欲しい」

「そういう欲に素直なところをうちの弟子にも見習って欲しいところだ」


 同じ弟子を持つ師匠同士。

 自分の最期に愛弟子の成長を感じたい。それも、周りの目があり、自分の弟子は強いだろ?と主張できる場所で。

 その気持ちが痛いほど分かるヴィデレ。


 自分が本気を出さずに手加減をしてビスティアに勝たせる。そんな方法も考えなかった訳では無い。

 だが、そんな事をしたらビスティアには失礼に値する。なによりも、自分の愛弟子がそれを許さないだろう。

 だからこそヴィデレは試練という方法を選んだ。レオの納得を得るために本気で戦い、そして同じ師匠として、ビスティアを決勝に行かせてあげたいという自己満足を通すために。


「私の最強の盾を持って、貴様の最強の矛を防いでやろう」

「……感謝する。あの生意気で頑固なレオ(クソガキ)が、アンタをなんで師匠として慕っているか少し分かった気がするぜ」


 ビスティアは、黒のバンダナを、心と一緒に締め直す。


『それでは準決勝第二試合、開始です』


 アナウンスの合図が流れるが、二人に動きは無い。両者、睨み合ったままだ。


「【魔の眼は全てを知らせてくれる 六芒星が空に輝き 我が身を照らした時 星の輝きはその力を発揮する 星文様の盾(スクトゥム・レーグラ)】」


 ヴィデレの魔眼が光り、瞳の奥の六芒星が明るい空を包み込むような強い光を放ち、空に六芒星を描く。

 その光が、光を放ったヴィデレを包み込むと、ヴィデレの前に体を隠すほどの六芒星の模様が刻まれた薄い水色の透明な盾が出現する。


「これが私の知る中で最強の盾。これを破ることはできるか?」

「ここでやらなきゃ男でじゃねぇ…それに、その最強を破壊すれば、格好いいだろ?」

「さぁ来い、貴様の最強を私の記憶に刻ませろ!!」


 最強の盾を前に、気持ちの高鳴りを抑えきれないビスティア。

 今の自分がどこまで通じるのか、この大会に参加する参加者として、カーリの師匠として、一人の武闘家として、挑戦せずにはいられないのだ。


 時計の秒針を追い越して高鳴る鼓動。

 早くやらせろと疼く右足。

 燃えるように熱い心。


 今までに無いほど自分の全てを感じられる感覚に、ビスティアは確信した。


 ──────いける。




「【初撃一撃】」



 振り抜かれるビスティアの右足。


 ヴィデレはそれを盾で正面から受け止める。


 最強の矛vs最強の盾


 全身全霊を込めたビスティアの蹴りは…


「まさか、この盾が壊される日が来るとはな…」

「ふぃー…悪いな、今日の俺は絶好調だ」

「……」


 ビスティアは、嬉しそうに笑うと、コールを聞かずにステージを後にする。


(魔人化が始まっている…ノースリーブ小僧が蹴りを放った瞬間、足に微量ながら魔力が付与された…本人は気づいてないみたいだが、本当に明日で魔人になるな…)


 真剣な顔つきでビスティアの背中を見るヴィデレ。


「明日は荒れそうだ…だがまあ、後は当人次第だな。私は常に傍観者だ」


 観客席にいるカーリを見上げ、指を指すヴィデレ。

 準決勝が終わり、【覇王祭】も残り一日。

 

 運命の日はすぐそこに迫っている。

あと二、三話で四章完結です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ