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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第四章 師匠
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episode65 決勝トーナメント三回戦【ラートルvsヴィデレ】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

『続きまして、本日最後の試合。ラートル選手対、ヴィデレ=アルケー=ヴァンパイア選手です』

『ラートル選手は、獅子の獣人。屈強な体を活かした豪快な戦い方は見るものを引きつける魅せる戦い方をします。そして、ヴィデレ選手は、誰もが一度は絵本で見たことがあるでしょう。神に造られし原初の個体の一人。世界最強と名高い実力者です』

『世界を救った英雄に、世界最強…【リベリオン】の戦力って凄いことになってませんかね。私も絵本で見たした、憧れの存在が目の前で試合している実感がまだ湧いてません』

『多分私も、宿に戻ってから、サインを貰わなかった自分と、この立場を酷く恨むことでしょう』


 既に慣れた様子の二人の掛け合い。会場も、それを楽しみながら、試合開始を今か今かと待ち望み、会場全体がソワソワとしている。


「試合にもならんだろうな。」

「同感っすね、兄貴の師匠は本当に桁違いですから…あっ、兄貴も桁違いですよっ!?」

「いい。【深淵】を使っても勝てるイメージが一つも見当たらないのが実際のところだからな。」


 観客席でため息を零しながら、並んでヴィデレの試合を見つめるレオとカニス。

 観客席は三回戦ということもあり、ほぼ満席で、後ろの方に座っているのにも関わらず、先程からチラチラと視線がぶつけられ、少し鬱陶しく思いながらも、試合をしている時よりはマシかと割り切るレオ。

 ちなみに現在ヒカルは、祝勝会の資金稼ぎに魔獣を討伐しに行っている。


「ところで兄貴は、おそらく瞬殺で終わる試合を見に来たんです?試合あとでお疲れっすよね?」

「試合後にアイツがわざわざ俺にここに来るように言ったんだ。面倒だと断ったら、師匠やめるとか駄々をこねるので、それこそ面倒だったから渋々来た。」

「大変っすね…」


 意外にしょうもない理由にカニスは苦笑いを浮かべる。

 ヴィデレは隠しているつもりだが、レオと二人きりなると甘々のデレデレになるのは、結構周知の事実だったりする。


『まず最初に登場したのはヴィデレ選手。余裕たっぷりの笑みを浮かべ、ステージに上がります』

『毎試合、違った戦い方をするヴィデレ選手。今回はどのような戦いを見せてくれるのか楽しみです』


 まるで朝の散歩をしているように、自然に、普通に、変哲無く、ステージに上るヴィデレ。

 だが、ヴィデレは自然でも普通でも何でもない。原初の個体。始まりの吸血鬼。世界最強。

 ここにいる誰よりも強い存在。


「本能で恐怖しろ。(われ)の名は、ヴィデレ=アルケー=ヴァンパイア。神に造られし【最強】だ…!」


 ヴィデレは、自己紹介とばかりに少しばかし殺気を体から漏らし、右手を掲げる。


「いやぁ、兄貴も相当っすけど、兄貴の師匠も演出家ですよねぇぇぇ腕がまがるぅぅぅぅぅぅ!!?!?」


 ヴィデレの会場を盛り上げるための演出と、それを見て湧いた会場全体を見ながらカニスは笑顔でレオに笑いかけるが、それは地雷だったようで、レオに左腕を捻りあげられるカニス。


『続いて登場したのは、ラートル選手。ヴィデレ選手ほどの大きさの大剣を片手に、百獣の王たる獅子の貫禄を見せつけます』

『流石獣人といいますか、大きいですね。私の倍くらいありそうです』

『これは流石のヴィデレ選手も不利でしょうか』

『そんなことはありません。レオ選手やミラ選手がいい例ですが、この世界では年齢、性別、体格の有利不利は才能の前には霞んでしまう。ヴィデレ選手は、見た目こそ年端もいかない少女ですが、本気を出せば国が一つ滅びます』

『おっと、そんな人が参加している時点でこの大会の目的が丸つぶれなので、運営側としてはラートル選手を応援したいところです』


 大剣片手に、会場の歓声を飲み込むほどの大きな雄叫びをあげて登場したラートル。

 獅子の顔と人間の骨格に近い屈強な体。鎧を付けず、自らの素肌を晒しているのは、自信からくるものだろう。


「世界最強かなんか知らねェけどよ、俺様の圧倒的パワーとスピードの前には何も意味ねェよ」

「…」

「無視すんじャねェ!」

「失敬、獣が吠えているのでてっきり餌が欲しいのかと思って、何か無いかと思い出していたのだ」

「てめェ…!!」


 流石レオの師匠と言うべきか。相手を煽る口の技術も天才的で、挨拶代わりに相手を挑発してみせる。


『それでは第四試合、開始です』


 スタートの合図と共に、怒り狂ったラートルは、ヴィデレのその体格に似合わず素早い動きで距離を詰める。


「【鎖よ】」


 だが、ヴィデレは眉一つ動かすことなく、ラートルの動きに合わせて魔術陣から鎖を放出。

 ラートルの動きを封じる。


「こんな鎖で俺様を止められるかァァァ!!!」


 体を縛られてもなお、その歩みを止めることの無いラートル。

 ギチギチと鎖が音を上げながら、ゆっくりとヴィデレに近づく。


「ほう、まあだが…【鎖よ】」

「んぐゥッ!?」

「数を増やせば問題の無いことだな」

「き、さま…!!」

「さて、躾の時間だ獣よ。ただで終わるのも観客が冷めてしまうからな」


 目の前で多くの鎖で縛られたラートルの体を撫でて微笑むヴィデレ。

 ヴィデレの瞳が朱殷色に変化し、金色の五芒星が瞳の奥で輝く。


「獣よ、貴様には確かにパワーもスピードもある。だが、それを扱う技術(テクニック)が不足している」

「何を…!?」


 教師が生徒に教えるように、ゆっくりとした口調でラートルに話しかけるヴィデレ。

 その際に、耳にかかった銀髪を掻き上げる姿さえも理性が飛ぶような色気があり、思わず動揺して歯向かう言葉が上擦るラートル。


『ここでヴィデレ選手、妖艶な雰囲気でラートル選手に迫りました。会場の多くの男性が前かがみになっているのは気の所為でしょうか』

『気の所為でしょう』

『絶賛前かがみ中のアドレスさんに言われても困ります。私の中でアドレスさんの評価が爆下がりしている中、ヴィデレ選手に動きがあります』


 ヴィデレは、手を伸ばし、ラートルの顎を飼い猫をあやす様に撫でる。


「貴様はまず見習うことを始めるといい。私の弟子のレオのように、パワーもスピードも、テクニックもあれば一流の男になれるぞ?小僧のテクニックは特に凄くてな。夜のテクニックは戦闘のテクニックの比にならないほどだ」


 何が始まったと思えば、ただの惚気及び、弟子自慢。

 ほんのりと頬を染めて、恋する少女のようにレオの事を語るヴィデレに、会場全体は呆気に取られている。


「流石兄貴!その年で夜のテクニックまで持ってるとは!」

「真に受けるな馬鹿が。吸血行為の話だ。あいつが血を吸うだけで妙に艶かしい声をあげるだけであって、俺は普通に吸ってるだけだ。」

「無意識テクニックってやつですね!」

「知らん。」


 下で飛んでも発言があれば、上で漫才が行われる。

 なんとも忙しい会場だが、ヴィデレのような美少女から「夜の」という単語が出て更に男性陣が苦しそうに呻き、多くの者がトイレへと走る。


「いつまでも撫でていたい艶のあるサラサラの黒髪…私と(・・)お揃いの真紅の瞳、服の上からだとわからないだろうが鍛えぬかれた筋肉…卵焼きを食べる時の少し頬の緩む表情、負けた後の拗ねていつもより冷たくなる態度、寝ている時に手を近づけると無意識に握る子供らしさ、それに…!!!」


 まるで親バカの如く出てくるレオの褒め言葉は、止まることを知らず、どんどん加速していく。


『弟子やめる。』

「…!?!?!?」

『嫌なら早く片付けろ。』


 だが、それを止めたのは、やはりレオの一言。風魔術でヴィデレの耳元だけに音を運び、声を伝えたのだ。

 レオの弟子やめ宣言にヴィデレはギョッと驚き、その声に従うが如く、ラートルの腹に拳を打ち込んでノックダウン。


『し、試合終了』


 アナウンスも会場もびっくりな幕引きに、五日目が終了する。

盆休みあたりに、過去の話を一気に編集したい。。。

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