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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第四章 師匠
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episode64 決勝トーナメント三回戦【ミラvsビスティア】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

『さあ、決勝トーナメント三回戦も半分を折り返し、第三試合へと突入。続いてはまたもや【リベリオン】同士の戦い、ビスティア選手対、ミラ選手です』

『両選手を一言で表すと【非凡】と【天才】。ビスティア選手は生まれつき、魔術回路を持たず、魔術を使えません。そして、ミラ選手は【万能(オムニポテンス)】と呼ばれる全ての属性で上級以上の適性を持つ、魔術の世界における最高峰の才能です』

『先に登場したのはミラ選手。小柄な体格に似合わない、強大な魔力をその身に秘めています』


 水色のツインテールをぴょこんぴょこんと揺らしながら、ステージに登るミラ。

 観客の一部のおかしな連中から「ミラたーん!!」という謎の歓声がこだまする。


『続いて、ビスティア選手の登場です』

『黒のバンダナと、灼熱色の髪が特徴的な選手ですね』


 ビスティアも、今までに無いほど集中した様子でステージに上る。

 ビスティアの、どんな才能をも叩き潰す努力の力に憧れを抱いた者が多いのか、「大将ー!」「次も魅せてくれよー!」などと応援の声がかけられる。


『では、第三試合開始です』

「【初撃一撃】」


 開始の合図と共に放たれる、ビスティアの蹴り。カーリとは違い、間合い関係無く鞭のように打ち出されたビスティアの蹴りは、小柄なミラの側頭部をえぐるように吸い込まれていく。


「【雷の障壁】!!」

「悪いな嬢ちゃん、俺の蹴りに防御は効かねぇ!!」


 ミラは、慌てて側頭部に【雷の障壁】を発動させるが、ビスティアの蹴りは、それをいとも容易く砕くと、ミラを場外へと叩きだす。


「ちっ、手応えが無ぇ」


 ビスティアは、すぐに自分が蹴った相手が、ミラの作った【身代わり(デコイ)】だと察すると、ミラの気配を探す。


水槍(アクアランス)


 ミラは、既にビスティアの上を取っており、上空から【水槍】を放つ。


「しゃらくせぇ!」


 ビスティアは、少し苛立ったようにミラの放った水槍を蹴りで打ち消す。


「なっ!?魔術をただの蹴りで消すとか化け物ですか!」


 【初撃一撃】の対策に加え、完全に隙を付いて魔術を放ったのにも関わらず、対処されたことで着地しながら驚くミラ。


「俺には負けられない理由があるんだ、時間がねぇんだよ!」

「ミラにだって負けられない理由くらいありますよ!…そ、そう!優勝したら総督が土下座してミラをお姫様扱いしてくれるんです!!」


 鬼気迫るビスティアの叫びに、ムッとなって言い返すミラ。全く張り合えていないが、ミラも負ける気はないようだ。

 ちなみに、そんな約束はしていない。


「行きますっ!」

「魔術師が、正面からとは愚策だな!!」


 ミラは、レオやカーリに比べたらまだまだだが、それでも鋭い足運びでビスティアとの距離を詰める。


「【二重魔術陣 直列式 雷同】」

「はぁぁぁ!!!」


 ミラは、拳に二枚重なった魔術陣を浮かべると、レオの使う【雷同】よりも破壊力の篭った一撃をビスティアに向かって放つ。


 多重魔術陣 直列式。

 魔術陣に刻まれた模様を合わせ、更なる威力を生み出す、火力を底上げする魔術陣の使い方。

 二枚組み合わせれば、一枚に比べて、その十倍の威力は出ると言われているほどだ。

 だが、この組み合わせが見つかっているのは、初級魔術の極々一部。ただでさえ謎の多い魔術陣を直列に繋げるには、多くの研究と、(たまたま)必要になってくる。

 更に、直列式を放つためには、繊細な魔力のコントロールが必要になる。


 これを見ていたレオも、まさか【雷同】を直列に繋げる方法をミラが見つけていたとは想像もしておらず、思わず舌を巻いたほどだ。


 だがビスティアは、その強力なミラの拳に、正面から打って出る。


 ぶつかる拳と足。


「はぁ…はぁ…」


 この正面からのぶつかり合いを征したのはビスティア。

 ミラは、ビスティアの蹴りを受けて、骨の折れた右腕を力なく庇うように左手で押さえる。


「慣れないことはしないことだ…くっ…」


 満身創痍のミラに、忠告を送るビスティアだったが、途中で右足に走る痛みに顔を歪める。


「右腕一本犠牲にしましたけど、ただではやられません…ミラだって総督の側近の一人です。才能だけの模造品なんてもう呼ばせません」


 いつに無く真剣なミラ。

 いつもおちゃらけて、バカ騒ぎしているミラにだって口には出せないような、真剣で、本気で、一生懸命な負けられない理由が存在するのだ。


 ミラは、元々シルフォード王国立第一魔術学園の生徒だった。

 生まれつき【万能】の才能があったミラは、そこでも優秀な成績を収めていた。

 貴族の少ない第一魔術学園では、教師も含め、平民出身が多い。

 学園の歴史の中で最も優秀な生徒が排出されると考えた教師は、ミラを贔屓した。

 まだミラが貴族の出だったのなら、ほかの生徒も諦めがついただろう。だが、ミラは自分たちと同じ平民。

 嫉妬と憎しみがミラを日常的に襲うようになった。


 そして学園に入学して一年。ミラは、他人の魔術を真似することしか使えない、『才能だけの模造品』と裏で囁かるようになった。

 明るく、笑顔の絶えない普通の十三歳の少女を襲った、陰口、仲間外れ、気味の悪いものを見る眼差し、それを普通の少女の心を壊した。


 ミラは、中等部二年生の途中で、同級生に危害を加えたとして退学。

 そこからミラの顔に笑顔が浮かぶことは無かった。


 そして、それから半年後。両親の勧めで学園だけは出ておいた方がいいと言うことで、入学に年齢制限が大幅に取ってある【勇者魔術記念学園】に入学した。


 その入学式で起きた事件。

 王国によるヒカルの暗殺未遂及び、ロゼの誘拐未遂。

 当然、新入生だったミラはその場におり、避難するまでの間の一部始終を見ていた。


 入学式で見せたレオの戦い。

 それが、ミラの心を動かした。


 自分の地位も、尊厳も、誇りも、何もかもを捨てて大事なものを守るために立ち上がる、誰もが憧れる英雄をミラは見てしまった。

 誰かのために戦うレオは格好良くて、ミラの壊れた心を震わせた。


 この人のためなら、模造品でも力になりたい。


 直感的なものだが、ミラはそう思ってしまった。


 そして入学式の後、レオが王国に反旗を翻すと聞いて我先に志望し、ヒカルに頼み込んでレオの側近の一人に加えてもらった。


 初対面なのにいじられるたり、ぞんざいに扱われたり、久しぶりに浮かべた笑顔と馬鹿みたいなテンションを否定されたりと、酷いものだった。

 でも、ミラの気持ちに揺らぎは無かった。もっとこの人の力になりたい。不器用なこの人を支えたい。そんな気持ちが大きくなった。


「だから決勝であの人と本気で戦って言ってもらいたいんです。認めて貰いたいんです。『側近がミラで良かった』って。だから負けられません」

「ふぅー…そうだったな、負けられないのは、真剣なのは俺だけじゃねぇ…その覚悟受け取った」


 ミラの覚悟の篭った言葉に、ビスティアは腰に手を当てて大きく息を吐くと、これまでの鬼気迫った焦っているような顔つきは消え、ただひたすら真っ直ぐにミラを見つめる。


「【二重魔術陣 直列式 雷同】」


 ミラは再び、拳に二枚の魔術陣を発動させると、ビスティアに向かって左の拳を振るう。


「悪いが、これは勝負だ」


 ビスティアは、ミラの拳をを体を逸らすことで避けてみせる。

 本当はビスティアも正面から勝負がしたかった。だが、ここでリスクを負うわけにはいかない。ミラの攻撃が脅威だからこそ避けたのだ。


「【三重魔術陣 直列式 雷同】」

「なっ…だがっ!」


 ビスティアの横を通り過ぎ、空を切るミラの拳。だが、ミラはそこまで読んでいた。

 振り返りざまに放たれた、ミラの右の裏拳。


 ビスティアもまさか怪我をした右で攻撃してくるとは思っておらず、反応が遅れたものの、なんとかミラの横腹に蹴りを放つ。


「はぁ、はぁ…危なかった…」


 最後に立っていたのはビスティア。ミラの拳が届く寸前、ビスティアの蹴りがミラを吹き飛ばし、気絶させたのだ。

 大量に吹き出す汗を拭いながら、ビスティアは、本気で自分の負けを危ぶんでいた。


『勝者、ビスティア選手!』


 アナウンスの勝利コールに会場が湧く中、ビスティアの顔が晴れることは無い。

個人的に女の子キャラでお気に入りランキングは、1位ニーツ、2位ミラ、3位ネーザです。

キャラが一際目立ってる三人が本当に強い。

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