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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第四章 師匠
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episode63 決勝トーナメント三回戦【レオvsヒカル】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「準備は整った。」


 ガランとした選手控え室の中で一人、レオは黒のロンググローブを二の腕あたりで紐で止めると、レオは一呼吸を置く。


 次はあのヒカルとの戦い。相手は元世界最強。魔術回路を失って中級魔術ほどしか使えないとはいえ、油断はできない相手だ。


『さあ、伝説の英雄ヒカルの登場で大いに盛り上がる会場!続いてレオ選手の入場です』

『彼は、今大会最年少の十三歳。ですが、王国が今、最重要警戒人物として定めている【リベリオン】の総督でもあります』

『レオ選手の実力は未だ未知数…レックス選手に見せた実力の更に上があると見て取れますね』


 自分の紹介のアナウンスと、大きな歓声を耳にしながらも、レオの目に映ってるのはヒカルただ一人。

 いつもの寡黙な表情でステージへと足をかけるレオ。


「私も今日は本気です」

「手加減する余裕がないからな。うっかり死んでくれるなよ?」


 ヒカルは、胸ポケットから黒色のピッチリとした手袋を取り出すと、ロンググローブを外し、そちらの手袋を手にはめる。

 対してレオは、いつも通りネーザを腰に下げるシンプルでベストな装備。


『それでは第二試合、開始です』


 スタートの合図と共に、今まで賑わっていた会場が静かになる。


「絶対に倒す…!」

 

 レオはネーザを腰から抜くと、切っ先をヒカルに向けてそう言い放つ。

 強く固められた強い意思のこもった言葉。その決意を押し出すようにレオの軍服の着丈が風で揺れている。


「レオくんのいけないところは、戦闘前から、【ギアス】や【魔闘気】を発動しないことですよっ!」


 一瞬でレオとの距離を詰めたヒカル。丁寧にアドバイスまで付けてレオの腹へ拳を打ち込む。


「いつから、俺が詠唱ありでないと発動できないと思っていたんだ?」


 ヒカルの拳から伝わった感触は、体の芯を貫いた時のものではなく、完全に受け止められた時の拳が包まれている感触。


「常に周囲を欺く、それが強者のやり方だ。」


 ヒカルは、ドヤ顔で自分を見つめるレオに悪態ついた表情でギリッと奥歯を強く噛む。


 レオの言った通り、ヒカルは勘違いをしていた。【ギアス】、【魔闘気】、【魔眼】、全てに省略ながら詠唱が必要だと。

 だがそれは、レオが相手にそう錯覚させるために行っていたもので、実際はそうではない。


 既にレオの体は、【ギアス】による黒い靄を立ち昇らせ、紅色の【魔闘気】身にまとい、真紅の瞳を朱殷色に変えおり、戦闘準備は万端だ。


「そうでしたね、君は天才でした!」


 ヒカルは、受け止められた拳を中心に、体を片手で側転するように回し、レオの顔へと蹴りを叩き込む。

 が、レオはそれを見切っていたように、軽く上体を後に逸らすだけで避けてみせる。


「【万視】の魔眼ですか…」


 ヒカルは、未来を見たかのように自分の攻撃を避けたレオを見て、瞳の奥に輝く金色の正三角形を見つめる。


「今の俺は強い。誰よりもな。」

「そろそろ手を離して貰いますよっ!」


 ヒカルは、レオの右頬に向かって渾身のストレートを撃ち込む。

 だが、それを首を捻るだけで避けるレオ。


「逃がすわけないだろ。俺の戦い方は超近接戦闘。これが俺の【支配領域(テリトリー)】だ。」

「本当に君は厄介です!」

「貴様もな。」


 ヒカルの拳をレオが握っているため、互いの左腕は封じられている。

 この互いを繋げた『鎖』は、何があろうとも外れることはなく、距離を取ることは許されない。


「はあ!」

「【剣式雷同】」

「くっ…この距離で剣を使うのは、君くらいですよ」


 ヒカルが、蹴りを放つ。

 レオはそれを軽く躱し、ヒカルの首めがけて突きを繰り出す。

 ヒカルはそれを、ギリギリのところで左手の甲で弾く。


「【雷槍(ボルトランス)】」

「はあっ!」

「ちっ…。」


 レオは、ヒカルの背後から【雷槍】を放つが、ヒカルは繋がれた腕を強引に引っ張り自分とレオの位置を入れ替える。

 自分目掛けて加速しながら飛んでくる雷槍を見ながらレオは舌打ちをこぼしながらも、慌てて入れ替わったことでまだきちんと地面を踏めていないヒカルの足の右足で刈り取る。


「なっ…!?」


 宙を浮くヒカルの体。レオは、ヒカルの拳を掴んだ腕を体を後にブリッジのように倒すことで雷槍と自分の間にヒカルを割り込ませる。


「くっ…!」


 レオの放った雷槍は、ヒカルの背中に直撃。軍服を頑丈にしたおかげで、傷を負うことは無かったが、激しい痛みに、苦痛に顔を歪めるヒカル。


「はぁっ!」

「【闘気】」

「なっ…いや、使えて当然か。何度でも!!」


 レオが、ヒカルに剣を振り下ろす。が、瞬間、ヒカルが碧色の闘気を纏うと、その剣をギリギリのところで躱す。

 一瞬驚くレオだったが、すぐに我に返ると、すぐさま追撃を加える。


「ふッ…!」

「そろそろ目が慣れた頃か…だが、俺もやっと温まったところだ。」

「クソ生意気な子供ですよほんとっ!」



 普通ならばまともに剣が振ることができない密接した状態で、俺には常識は通じないとばかりに、どの角度からでも最大威力と最大速度でヒカルを襲う剣。


 時に体術を使って体勢を崩し、魔術を使って牽制し、ヒカルを追い詰めていく。


 だがヒカルは、それを八百年という長い長い年月の経験から、それを完璧に躱してみせる。


 そこで終わる英雄では無い。隙が一瞬でも生まれれば、そこを絶対に見逃さず、的確にレオの嫌がる場所を攻撃するヒカル。


 互いの腕を中心に、重力などお構い無しにステージの上で戦いを繰り広げる。


 碧色の【闘気】を纏ったヒカルと、紅色の【魔闘気】を纏ったレオ。


 会場にいる観客からは、ステージで行われている戦闘が、まるで舞踏会のダンスを踊っているように映っていた。


「おい、居眠り魔剣。短くなれ。」

『ぁー?あいあーい。こんな無茶聞いてあげれるのネーザちゃんだけですからね?そこんとこ理解してますー?』

「後で磨いてやる。」

『わーい!絶対約束ですよー?』


 レオの無茶振りに答えて瞬時に長剣から短剣へと姿を変えるネーザ。


「やりにくくなりましたね…!」

「手数で押させてもらうぞ。」


 更にスピードを上げ、激しくなるレオの攻撃。

 ヒカルは、苦しそうに顔を歪めながら、リーチが短くなり、鋭くなったレオの攻撃を受け流す。


「くっ…!」


 ヒカルは、風で揺れる前髪を鬱陶しそうに払いながら、レオにカウンターで蹴りを放つ。


(風…?)


 ここでヒカルは、ある事に気づく。


(何故、私の髪が揺れているのにも関わらず、レオくんの髪は揺れていないんだ…)


「はっ…」

「もう少し時間を稼ぐつもりだったが、気づいたようだな。」

「まずっ」

「今更離すわけないだろ?」


 ヒカルは、はっとした表情で頭上を見上げると、すぐ様ここから退避しようとレオの手を剥がそうとするが、剥がれるのなら最初からここにはいないだろう。


「最初にレオくんの軍服が揺れていたのもそのせいですか…」

「戦いは、開始の合図で始まるものじゃない。自分で始めるものだ。」


 ヒカルは、悔しそうに顔を歪めると、諦めたよあに会場の周りを渦巻く風を見つめる。


 レオは、試合が始まる前、控え室にいる段階から、既に戦いを始めていた。

 【深淵(アビス)】による支配。

 ここ一体の空気を支配し、風を作り、会場の周りへとゆっくりと集めていたレオ。


「【支配(インペリウム)】」


 レオは右腕を天に掲げると、レオの手のひらに風が集まり、圧縮され始める。


「これは私の油断でしたね」

「俺の戦闘スタイルは、"正々堂々真正面から相手をする"ことだからな。」

「覚えておきます」


 レオの言葉に、最早笑いしか出てこないヒカルは、諦めたかのように、レオの手のひらに集まる圧縮された風の塊を見る。


「どうする?くらっておくか?」

「いえ、私も引き際くらいは知っています。棄権しましょう」

「賢明な判断だ。じゃあ、祝勝会での代金。参加者及び観客、この街全員分よろしく頼むぞ。」

「えっ!?」

「言っただろ?全員分負担だって。」

「詐欺だ!詐欺師がいる!!棄権やっぱ取り消しますぅぅぅぅぅ!!!!」


 まさに魔王の所業。

 あくどい笑みを浮かべたレオを見て、泣き叫ぶヒカル。


 決勝トーナメント三回戦、第二試合。


 勝者、レオ。

最近、執筆スピードが落ちてきて、焦ってます

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