episode60 決勝トーナメント【一回戦】
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そして四日目の朝から行われた決勝トーナメント。
今日は、全十六試合行われたのだが、その結果と、中でも注目された第六試合をピックアップしていこう。
第一試合。
カーリ【リベリオン】対バーノ【帝国】
勝者:カーリ【リベリオン】
自分の身長よりも大きな斧を扱う帝国騎士団副団長のバーノに対して、序盤苦戦するものの、徐々に相手の動きになれ、最終的にはカーリの圧勝。
第二試合。
ハッハ【王国】対ドラ【リベリオン】
勝者:ドラ【リベリオン】
王国で騎爵の爵位を貰っているハッハ。
その実力は本物で、貴族の何ふさわしい戦いぶりだったが、根性の差でドラの勝利。
中々の接戦で互いに多くの傷を作り、血を流したが、ドラの踏ん張りが勝敗を分けたようだ。
第三試合。
シド【リベリオン】対ジーラ【リベリオン】
勝者:ジーラ【リベリオン】
シドは、元冒険者の虎の獣人で、レオの演説に心を打たれてリベリオンに参加した青年。
ジーラはイティネと共にスラム街からリベリオンに来た元傭兵の三十八歳独身彼女募集中。
お互いに本物の戦闘を身で知っている二人だが、対人戦の経験の多い元傭兵のジーラが武器を投げ捨てるというフェイントを使ってシドの気を逸らし、そのまま寝技で意識を落として勝利。
第四試合。
アヤ【リベリオン】対ニーツ【リベリオン】
勝者:ニーツ【リベリオン】
言わずもがな…。
約束したのは第一次予選だけなのだが、今回も勝てばご褒美を貰えると勘違いしたままのニーツ。
ニーツの本気を前にしてアヤは泣きながら棄権。
会場全体がアヤに対して同情した試合だった。
第五試合。
レクサス=フィエルダー【王国】対マリー【リベリオン】
勝者:マリー【リベリオン】
意外も意外で、レオ以外はこの結果を予想していなかっただろう。
レオ曰く「父様はどんなに譲れない事情があっても、自分が殺されるとしても、絶対女に手はあげない。」とのことらしい。
試合が始まった瞬間、レクサスがマリーとの距離を一瞬で詰め、目の前で握っていた拳を開いて、どこからともなく花を取り出すサプライズを無表情のまま行い、マリーの胸ポケットに花をさすとリタイアした。
マリーもマリーで、「レ、レ、レオ様の…お義父様が、こんなに、ち、近くに…」と若干ニュアンスの違う言葉が含まれた台詞を言うと、鼻血を吹き出して倒れてしまった。
第七試合。
カニス【リベリオン】対バーリ=ナーダ【エルフ】
勝者:バーリ=ナーダ【エルフ】
剣を得意とするカニスと、狭いステージの中にも関わらず弓を構えるバーリ。
レオも認めたカニスの剣の腕。だが、この試合でカニスは一度たりとも剣を振るうことができなかった。
試合開始直後に、カニスから距離を取りながら矢を構えたバーリ。
その矢はただの矢ではなく、付与魔術を施したもので、レオの【雷同・反転】のように他強化系の魔術の構造を反転させた他弱化魔術を付与した矢。
弓の腕が達人級の事もあり、矢を避けるカニスの行動パターンを読み切り、カニスに次々と矢を当てていくバーリ。
他弱化の矢によって、体が痺れ、吐き気と、気持ち悪さ、頭痛、倦怠感、足と手が入れ替わったかのように体を動かせなくなったカニスはそのまま倒れ込んでカウントダウンを貰ってカニスはバーリに惨敗した。
第八試合。
ベッルス【リベリオン】対ヒカル【リベリオン】
勝者:ヒカル【リベリオン】
試合開始直後に、ベッルスが魔術を発動する隙すら与えずに、ベッルスの腹にヒカルが蹴りを入れて場外アウト。
この試合ではフードを外していたこともあり、英雄の力を目の前で実感した会場は大いに湧いた。
第九試合。
アドレス=タータン【王国】対ドーラン【獣人国】
勝者:アドレス=タータン【王国】
王国のタータン男爵家当主のアドレス対、狼の獣人であるドーランの対戦。
ドーランは細身ながらも岩すらも素手で破壊するパワーと、狼の俊敏性でアドレスを翻弄したが、地力の差でアドレスの勝利。
男爵家の名は伊達ではないことを証明した試合だった。
第十試合。
ナフコ【王国】対ビスティア【リベリオン】
勝者:ビスティア【リベリオン】
今大会史上最速の速さで幕を閉じた試合になった。
開始の合図と共にナフコの顔面にビスティアの【初撃一撃】の蹴りが炸裂。
そのまま場外の壁に体を打ち付けたナフコは、気を失って敗北。
第十一試合。
マールコ【無所属】対タラナ【リベリオン】
勝者:マールコ【無所属】
マールコは、エドラスと同じ傭兵で、獲物も剣と盾。珍しい鞭の使い手であるタラナにとって盾持ちのマールコは、相性が悪く、攻めきれずに敗北。
第十二試合。
イティネ【リベリオン】対ミラ【リベリオン】
勝者:ミラ【リベリオン】
先に罠を張って奇襲をする事を得意とするイティネと、大技は無いが手数で勝負するミラ。
イティネもミラ相手に、色々と仕込みをしていたようだが、【万能】は周りが想像していたよりもぶっ飛んだ才能で、この大会で見た初見の魔術や、動きを真似してジリジリとイティネを追い詰め、勝利を収めたミラ。
途中で火属性の魔術でイティネの腕のローブを燃やし、イティネの骨があらわになってしまって「あの子の炎は一瞬で肉すらも燃やし尽くすのか…!」という勘違いが会場で発生し、あとからレオに怒られたのは別の話。
第十三試合。
ターチン【無所属】対マサシ=タナベ【王国】
勝者:マサシ=タナベ【王国】
傭兵のターチンと、ヒカルと同じ黒髪黒目の青年の対決。
王国にいたレオも名前の知らない貴族のマサシ=タナベに不信感を覚えながらも、試合は至って普通の剣と剣の戦い。
かなり長引いた接戦だったが、最終的にマサシ=タナベが勝利。
第十四試合。
ウムブラ【リベリオン】対ラートル【獣人国】
勝者:ラートル【獣人国】
【諜報科】のウムブラは、予選での集団戦では、かなり不意をついた攻撃が出来たのたが、一対一は不得意で、相手はここまで勝ち残ってきた強者。
短剣で応戦をしたが、敗北。
本人は「スカートが短イ。ムリ」と後に語っていたらしい。
第十五試合。
ヴィデレ=アルケー=ヴァンパイア【リベリオン】対レイナス=フィエルダー【王国】
勝者:ヴィデレ=アルケー=ヴァンパイア
試合が始まるなり、レイナスが、「調整は完了しました。ここで故障はできません。」と言って棄権。
かなり、呆気ないものだっが、父と妹という厄介事が一回戦で敗退したのでレオは万々歳だったようだ。
第十六試合。
ハーベスト【王国】対スモロス【王国】
勝者:ハーベスト【王国】
両者、王国騎士団に所属している騎士で、かなりの腕前だった。
だが、ハーベストの方が一回りほど年齢を重ねており、スモロスの癖をよく知っているのか、中盤でハーベストがスモロスを圧倒し始め、勝利。
そして第六試合…
レックス【リベリオン】対レオ【リベリオン】
この試合は、レオが予想以上に苦戦し、レックスが何故ヒカルに選ばれたのかを実感した試合だった。
『では、決勝トーナメント第六試合開始です』
会場全体に響くアナウンス。
対峙するのは、巨漢な男対小柄な子供。
レックスは軍服の上から更に大きな鉄鎧を身につけ、両手に大盾を持つという一風変わった完全防御の構えだ。
レックスは、冒険者の中でも魔獣の気を引き付けて隙を作るタンク職と呼ばれる役割で、敵のヘイトを稼ぎ続けるのだが、大盾二枚はレオも初めてみるだろう。
そしてレオは軍服が軽装よりも遥かに防御力が高いので、軍服にネーザを腰に携えただけのシンプルな格好だ。
「貴様と手合わせするのは初めてだな。」
「レオ学生に胸を借りるつもりで、全力でいかせてもらう!」
「【ギアス】、【魔闘気】、【魔眼解放】、『システム:魔剣起動』」
「ぬぅ、やはり目の前にすると圧力が全然違うな!」
封じていた力を解放していくレオ。
予選で圧倒的な力を見せた子供が、決勝トーナメントで比べならないほどの圧を体に纏っているのを肌で感じた会場全体がざわめく。
「【幻歩】」
「最初から新技か!」
ゆったりとした初動から始まり、いっぽ足を踏み出した瞬間にレオの姿が幻のように消える。
レックスは、盾をがっちりと構え、いつ来てもいいように神経を尖らせる。
「そこだっ!!」
「ちっ…!後出しで反応できるのか…。」
レオが、レックスの背後から剣を突き刺し、鎧を剣が貫こうとした瞬間、自身の鎧の歪みを感じたレックスは振り向きながら、姿の見えないレオに大盾を振るう。
レオはそれを舌打ちしながら、バク宙をして盾を避けつつレックスから距離を取る。まだレオは、【幻歩】の連発は出来ず、下手に手を出すと先程のように超反応で攻撃を喰らう可能性もあるからだ。
「原始的だが、シンプルに行くか…。」
「む、何を企んでいる?」
「【魔力解放】、【気力解放】」
「【魔闘気】が膨れ上がっている…?」
レオは、右手に魔力、左手に気力の塊を出現させ、それを両手を合わせて【魔闘気】に変化させる。
余剰魔力や気力を漏らさないように意識して蓄えていたレオ。その蓄えを一気に解放して【魔闘気】に変えたのだ。
「【凝縮せよ】」
そして、会場全体を包むほど大きく膨れ上がった魔闘気を【深淵】による支配で、いつもの大きさまで凝縮させる。
紅色だったオーラは、瞳と同じ真紅へと色を変える。
「いくぞ。」
レオは、ネーザを構え直すとそのままレックスに向かって突撃する。
「なんのっ…ぐぅ!?」
スピードの乗ったレオの上段からの振り下ろしを盾で受け止めるレックス。
だが、予想していたよりも大きな衝撃に膝をつく。
「ここで決める…。」
「くっ…なめるなぁぁぁぁあ!!!」
ここが好機だと判断したレオは、そのまま連続で追撃を盾へと叩き込む。
苦しそうな表情を浮かべて必死に耐えるレックス。だがやられてばかりではない。レックスにも意地があるのだ。
一度付いた膝をじわりじわりと上げて、最終的にレオの剣を大盾で弾く。
「なっ!?」
押し返されたことに驚き、目を見開くレオ。
レックスは、体勢の整っていないレオの体に大盾をぶつけて後方へと押し返そうと大盾をレオにぶつける。
「うごかない…だと?」
「【魔闘気】は、大きければ大きいほど発動者の力を跳ね上げる。蓄えた力次第だが、この試合くらいはもつだろう。」
次に驚くことになったのは、レオでは無くレックス。
自分でもかなり自信のある力押し。しかも体勢の崩れた状態で押し込んだのにも関わらず、一歩も揺らすことができなかったレックス。
「【剣式雷同・連】」
レオはレックスの大盾に【雷同】の魔術陣を配置すると、そこに連続で突きを叩き込む。
【雷同・連】は、魔術陣に攻撃を加える度に、微弱だが雷を相手に与えるというもので、手数で押す時のために使う魔術だ。
「ここでは、終われない…!」
レックスも、体を襲う雷に耐えながら、必死にその場で踏みとどまる。
(【ギアス】を全て解放し、最大出力の【魔闘気】、【魔眼】による先読み、ネーザの火力。侯爵家でも防ぐのは難しいほどのこれを、ここまで防ぐとはな。)
レオも、レックスの抗いに舌を巻きつつ、更にスピードをあげる。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ふんぬぅぅぅぅぅ!!!!」
気合と気合のぶつかり合い。
高速の剣戟と、それを防ぐ鉄壁。
その戦いぶりに、会場全体が息を呑む。
(あと少し、あと少しでレオ学生の息継ぎが入る…!その瞬間を狙って押し切る!)
レックスも、レオの一瞬の隙を狙うために必死に歯を食いしばって耐える。
そして、レックスが望んでいた瞬間が訪れる。
(左腕が動く…構え直す合図!)
連続で突きを放つためにバランスを取るために後ろに置かれていたレオの左腕が、少し前に動く。
レックスは、これを一度レオが呼吸を入れて、反動を付け直すためのものだと判断し、グッと足に力を込める。
「フィエルダー式剣術【振り子落とし】。」
レオの隙をついてレックスが盾を前に突き出した瞬間、レオは、少し上げた腕を再度後に引き、勢いを増した状態で加速した突きを放つ。
完全に不意をつかれ、体勢を崩されたレックス。
レオの剣が、二枚の大盾の間を縫うように入り込み、レックスの体を押し出す。
「場外…か…」
レックスは、自分の後ろ足が場外に出ているのを確認すると、ドッと疲れた顔でその場に座りこむ。
「アイツが貴様を選んだ理由が分かった。また戦おう。」
「二度とやりたくないのが本心だがな」
レオの差し出した手を握り、握手を交わすレックス。
二人の戦いを称えるように、盛大な拍手が会場を包んだ。
戦闘はやっぱり長くなる




