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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第四章 師匠
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episode57 ビスティア【前編】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

 ビスティアという男の話をしよう。


 ビスティアは、王国の西の方にある『マート街』という少し小さな街の出身で、両親は雑貨屋を営んでた。

 両親は、幼馴染同士の結婚で、ビスティアを含め、妹と弟の三人の子宝に恵まれたとても仲のいい夫婦だ。


 こんな極々一般的な家庭に生まれたビスティア。


 だが、ビスティア本人は、一般的とは言えない病気を生まれながらに持っていた。


 『魔素病』。

 正式名称、『体内魔力循環不全』。

 魔術回路が壊れている、もしくは持たない人間がかかる病で、不治の病で有名だ。

 年間で十人ほどがこの病気で亡くなっている。


 体が魔素を取り込み続け、魔力を作っていく中で、魔術回路を持たない人間は、それを排出する術はない。

 なので、体内に残され、増え続ける魔力は体を蝕み続け、二十年を境にその魔力は爆発的に体を侵食して、人を魔人へと変えてしまう。

 

 だが、ビスティアはそんな病気が気にならないような元気でワンパクに育っていった。


 そして十一歳の時、魔術を使えないのにも関わらず、『勇者記念魔術学園』の中等部に入学。

 ヒカルとの面接しかないこの学園では、本質から外れているが、魔術を使えなくても面接だけパスすれば入学できるため、ビスティアでも入学できたわけだ。


「お前、魔術使えないらしいな」

「なんでこんなとこにいんだよ」


 当然、多くの罵声がビスティアに投げかけられた。

 当時は、特に魔術に関する優劣が大きかった時代だ。

 貴族から平民まで、多くの人間がビスティアを非難した。


 だが、ビスティアは諦めなかった。


「俺は、魔術至上のこの世界で、魔術無しで一番になってやる…!!」


 小さい頃から何度も挫けた。何度も人生をやめようとした。何度もこの世界を恨んだ。

 涙を流した。もう出ない程枯れ果てるまで。

 枯れたこそ、もう涙は出ない。もう挫けない。そう決めたビスティアは、『最強』を目指しはじめた。


 しかし、現実は甘くは無かった。

 当時から存在した実習で【総合戦闘】を選択していたビスティア。

 同年代の生徒達にボコボコにされ、入学してから半年間、一度たりとも勝つことは出来なったビスティア。


 どれだけ覚悟を決めても、まだ十二歳の少年。

 多くの罵声と、突きつけられる現実にポッキリと心を折られ、諦めかけていたその時…


「ビスティアくんでしたよね?どうです?私の弟子になって強くなりませんか?」

「英雄ヒカル…」

「ここではただの学園長ですよ」


 校舎の影で一人膝を抱えていたビスティアに、声をかけ、手を差し伸ばしたのは、今と変わらず学園長のヒカル。


 これがビスティアとヒカルの出会いだ。



「君には、魔術の才能は愚か、剣術、槍術、体術、戦闘に関するセンスは皆無と言ってもいい」

「っ……」


 初めての修行で最初にビスティア突きつけられたのは、自分の無力さ。


「ですが、君には一つだけ誰にも負けない才能があります」

「ほ、ほんとうですか!?」

「君の足に秘められたバネは、私が生きてきた中で、群を抜いて強力です」

「足のバネ…」


 ビスティアは、自分の足を見つめて思い当たる節が無いか、過去を振り返りながら探す。


「天性の生まれ持った才能ですよ。ですが、それを小さい頃から山々を走り、無自覚に鍛えていた。まる

でそのバネを最大限に活かすようにね」

「俺の才能…何も無い俺だけの…」

「ですがまだまだ使い方がなっていません。それでは、宝の持ち腐れですね!アッハッハッハッハッれ!!」

「どうさたら、このバネを使いこなせるようになりますか!」

「そうですねー…まずは──── 」


 ここからビスティアの修行は始まった。


 まず、足の筋肉と持久力を付けて過酷な修行に耐えられるように足に重りを付けて、走ること。


 そしてその次に、校舎の壁を垂直に脚力だけで駆け登ること。


 人が十人入れそうなほど太い幹を持った大樹を蹴りだけで倒す。


 手を封じて足だけを使って生活する。


 標高三キャロメートルにもなる山を一日中往復する。


 どんな体勢からでも、どんな場所でも最大威力の蹴りが出せるように、森や山に置いていかれて魔獣と戦った。


 本当に様々な修行を繰り返し、ビスティアは『最強』になるために、周りを見返すために鍛え続けた。


 そして、半年後、ビスティアが中等部二年生になった時、ビスティアは、人生最大の壁に出会う。


「【個人戦闘ランキング】…」

「はい、そこで一位を取れたなら、君はこの学園の中で最強です」


 毎月行われる学生同士の模擬戦による勝敗で決定する【個人戦闘ランキング】。

 この順位が高いほど将来的に就職する時に有利になるため、中等部から高等部まで多くの生徒が参加している。


「ここの一位は誰なんですか?」

「レクサス=フィエルダー。 中等部一年からそこの一位に君臨し続けている現在高等部二年生で、剣術の天才。フィエルダー家次期当主です。」


 当時、【個人戦闘ランキング】で堂々の一位の座を四年間守っていたのはレオの実の父、レクサス=フィエルダー、十六歳。

 魔術を当然ながら、特に剣術に優れ、歴代の生徒の中で『最強』の印をヒカルが押したほどの天才だ。

 ちなみに、十五歳で結婚や飲酒の認められているこの世界で、祖父の意向によりレクサスは三歳上の侯爵令嬢と十五歳で結婚。直ぐに世継ぎを作り、この時点でレオは生まれており、一歳だ。


「そいつを倒せば、俺は最強への道に近づく…」

「今度のランキング戦は、一週間後です。頑張りましょう」

「はい!」


 既に実習で連勝記録を更新し続けているビスティア。

 この時、ビスティアは思いもしなかった。人生最大の壁が、桁違いな大きさをしていることを。



「はぁ…はぁ…」

「終わりか…」

「ま、まだ!まだだ!!」

「【叩きつけろ 水の虐殺(アクア・グラビトン)】…」

「ぐぁっ!!」


 ビスティアは、水の渦に叩きつけられ、意識が朦朧(もうろう)とする中で、自分を見下げる一人の青年を睨みつける。


 艶のある黒髪に、レオと同じく瑠璃色の薄い切れ長の冷たい瞳。顔を貼り付けただけのような、終始動きの無い表情。

 背は中等部のビスティアと変わらないほどだが、見ているだけで背筋が凍るほどの威圧感。


「くそったれ…」


 精一杯の皮肉を込めてレクサスに言い放つと、ビスティアの意識はそこで途切れる。


「いやー惜しかったなビスティア」

「気にすんなって、中等部で二位なんてすげーじゃん」

「ああ、ありがとな」


 ランキング戦の帰り道、少なからず増えてきた友人に励まされながら、寄宿へと向かう。

 友人達が必死に励ますが、ビスティアの顔は曇ったままで、友人達も顔を見合わせて困った顔をする。


「俺、ちょっと訓練してから帰るから先行っててくれ」

「あ、おいビスティア!」


 そう言って訓練場へ、友人の静止も聞かずに向かうビスティア。


「どうも、来ると思いましたよ」

「師匠…」

「どうでした、レクサスくんは?」

「強かったです…勝てるイメージが湧かなかった。最初は、順調に勝ち進んでた事もあって勝てると思ったんです。だけど、ヘンテコな魔術陣を自分で破壊してから、纏う雰囲気がガラッと変わった…化物と戦ってる気分でした…」


 ヒカルの質問に答えるビスティア。

 答えていくうちに、少しずつレクサスの強さを思い出し、先程怪我をした右肘が痛むような気がして押さえるビスティア。


「【ギアス】。それがレクサスくんのオーラが変わった理由です」

「【ギアス】?」

「フィエルダー家の人間は、普通の人間だったら自分の体を壊さないようにセーブしている本来の潜在能力を全て出すことができます。その潜在能力を普段は抑え、必要な時に解放する。彼が魔術陣を砕くたびに彼は爆発的に強くなる」

「あと四つも上があるのか…」

「いえ、その人によって解放できる度合いが変わるので、実質あと一つですね」

「でも、あれよりも上が…」


 自分よりも圧倒的に強いレクサスは、更に強くなることが出来る。

 自分には本気を出していなかった。その事実に、ビスティアは怒りよりも先に悔しさが込み上げてきた。


「君にはまだまだ伸び代があります。頑張りましょう!」

「はい!」


 ビスティアはこの時、何度負けてもいい。だけど必ず、最後にはこの悔しさを勝った嬉しさと、ヒカルへの感謝に変えようと心に決めた。

第三の主人公は、ビスティアでいい気がしてきた作者。

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