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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode50 レオ対レオ

誤字、脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

 暗い。真っ暗な空間。


 瞼を開き、辺りを見渡しても、レオの真紅の瞳に映るのは『黒一色』。


 今、自分が立っているのか、座っているのか、浮いているのか、それすらも分からない状況。


「ここは…俺は…ぐぅっ!!」


 突如、頭が割れるかと思えるほどの痛みがレオを襲う。

 苦痛に顔を歪め、声を漏らすレオ。


「な、なんだこの痛みは…!」

『絶望よ』

「んぐっ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 悲鳴をあげずにはいられないほどの痛みがレオの全身を痛みが駆け巡る。


「うぐっ…ぅ…。」

『問おう』

「な、何を…くっ…。」


 脳内に、響く重たく、本能が逆らうことをやめるような力強い声。


『憎いか?』

「憎い…何が…っ…。」

『答えろ』

「俺の憎いもの…。」

『さらけ出せ。その全てを…その扉の奥に隠された本心を』

「っ…ぁ…。」


 レオは痛みに耐えながら、脳内に響く声に従い、開こうとする口を必死に閉じる。


『もう一度問おう。憎いか?』

「…あぁ、憎い。善が損をし、悪が得をするこの国が、世界が。」


 再び問われたレオは、ゆっくりと口を開き、語り始める。


『妬ましいか?』

「あぁ、妬ましい。俺よりも優れた才能が。圧倒的な戦闘センスが。」

『怖いか?』

「あぁ、怖い。人を殺すこと。仲間を失うこと。死ぬことが。」

『羨ましいか?』

「あぁ、羨ましい。ロゼの隣にいるのは、いつもアイツだ。」

『寂しいか?』

「あぁ、寂しい。誰にも理解されず、誰もそばにいない。そんな生活が。」


 語られるレオの本心。誰にも打ち明けず、誰にも理解されないレオの心の中。


『殺さたいか?』

「あぁ、殺したい。この世のすべての悪を。」

『そうか、なら貴様の体を差し出せ。その体を支配し、その願いを全て叶えてやろう』

「この体を差し出せば、全てが叶う…?」

『約束しよう。国も、世界も、居場所も、女も、全てを等しくその手に』


 レオの体が、ドクンッと脈打つ。

 体にドス黒い禍々しい線が刻まれていく。


 これが、【深淵】による人体支配。


「ようやく実体を見せたな…。」

『何…?』

「貴様の支配下に?馬鹿馬鹿しい…俺が貴様を支配して、ロゼも、居場所も、力も、国も、世界も、全て俺が、俺自身が手に入れる!!」


 歯を食いしばり、叫ぶレオ。

 体を蝕んでいく【深淵】を逆に支配するために、全身に力を込めていく。


「敢えて【ギアス】を解放せず、精神力を抑えていたんだよ…【ギアス】!!」


 レオは、ギアスを解放すると、五枚の魔術陣を砕く。

 レオの全身から黒い靄が立ち昇る。



「短期戦と持久戦、どっちが好みだ?好きな方を譲ってやるよ。【閃光・永続(フラッシュ・ペルゴー)】」


 真っ暗な空間に、魔術で光を灯すレオ。


『図にのるなよ』


 レオの前に、体中に幾何学模様の黒線を刻み、【深淵】に取り憑かれた後だと思われるレオの姿が現れる。


「こうして自分自身を目の前にすると、気味の悪いものだな。」

「支配と支配…」

「互いに同じ体。純粋な力比べと行こうか。『システム:魔剣起動』。」

『はいはーい、呼ばれて飛び出てネーザちゃんでーす』


 魔剣を構え、無表情の自分に向かって笑みを浮かべるレオ。

 そこには、確かな勝利への自信があった。


「【深淵よ】」


 【深淵】は、手のひらから【深淵】を出すと、それを剣の形へと変える。


「ただの剣で、【深淵】を受け止められると思ってるのか?」

「ただの剣…?それはお門違いだな。この剣は…」

『最強の剣ですからね!』

「割り込むな。」

「なんでもいい。始めるぞ…!」

「いいぜ、"正々堂々真正面から相手をしてやる"」


 レオが対峙しているのは、自分の体と同じもの。

 だが、その体は【深淵】を宿しているため、ヴィデレが言っていたように、信じられないほど強化さらている。


「っ…!」

「ふん、止めたか。だがこれはどうだ?」

「くっ…らぁ!」


 【深淵】は、その強化された体で、レオへと襲いかかるが、寸前のところで受け止められる。

 次々と振るわれる重たく、鋭い剣を防戦一方で受け止めるレオ。


「なぁ、偽物相手に振るう剣は楽しいか?【雷同】」

「なっ、後ろ!?ぐふっっ……!」

「【昇れ 貫け 螺旋・雷陽(コロナ・コクレア)】」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 【深淵】がレオに剣を振るった瞬間から、レオは既に身代わりと入れ替わっていた。

 嬉々とした表情で剣を振るう【深淵】に、後から【雷同】を叩き込み、対軍級魔術で追い打ちをかける。


「【跳べ(サリーレ)】」


 対軍級魔術を受けた【深淵】は、衝撃でよろめき、一歩後に足を置く。

 その瞬間レオは、足元に魔術陣を配置し、ジャンプ台のような役割を持たせる。


 体勢が崩れたまま跳ね上がる【深淵】の体。


「隙だらけだ【風刃(ふうは)】」

「【深淵よ】」


 その隙を狙い、【深淵】に向かって無数の風の刃を飛ばすレオ。

 【深淵】は、持っていた剣を盾の形にし、それを受け止める。


「ぐぅっ!?」


 が、既に先を読み、【深淵】の後に複数の魔術を配置してあったレオ。

 無詠唱で発動させ、がら空きの背中に魔術を叩き込む。


「才能が足りない。センスが足りない。読みが足らない。フェイントが足りない。なによりも、経験が足りない。使う体が強くても、貴様自身は、そこら辺の雑魚と変わらないな。」

「貴様ァァァ!!!」


 空中で魔術を叩き込まれ、落下する【深淵】に向かって嘲笑を浮かべるレオ。


「【深淵よ】!!!」


 怒り声を上げながら落下する【深淵】は、体から再び【深淵】を手のひらから大量に出すと、それを無数の剣の形に変えてレオへと放つ。


「ふっ!!」

『あらー、一発くらっちゃいましたねー、ださいですねー』

「うるさい…むっ?」


 無数の剣を、ネーザを使って叩き落とすレオ。

 一本だけ、頬を掠めたのをネーザに煽れながらも、傷を治そうとするが、違和感に気づく。


(回復しない…?まさか…。)


「【深淵】に犯された土地が二度と植物を生やさないように、【深淵】に傷つけられた傷は、戻らない!しかも、その傷は徐々に広がっていく!ハッハッハッハー!ざまぁみろ!!」

「急に元気になりやがったな。」

『生物の負の感情の塊なんで、根っこは腐ってるんでしょうねー』

「なるほどな。」


 レオは、頬の血を手の甲拭うと、未だ高笑いする【深淵】に向かって魔剣を構える。


「ようやく、この体にも慣れた!ここからが本当の勝負だ!」

「【魔闘気】」

「【深淵よ】」


 紅色の魔闘気が、レオの体を包み、


 黒色の【深淵】が【深淵】の体を包みこむ。


「「はぁぁぁぁぁぁ!!!」」


 ぶつかり合う二人の剣、拳、蹴り、魔術。


 無尽蔵に近い魔力を持つレオと、神をも殺す【深淵】を使う深淵(レオ)



 本当の戦いが今、始まる。

次回で多分三章完結です!

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