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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode49 【深淵】

ブックマーク、感想、レビュー、文章、ストーリー評価等いただけると幸いです。

「ほれ小僧、卵焼き味のジェラートよりこっちの動物の生き血味のジェラートの方が美味いぞ?」


 ぺろぺろとコーンの上に乗った溶けかかった赤色のジェラートを小さな舌で必死に舐めるヴィデレ。

 レオの視線を感じて、「さては欲しいのだな?」と、キランと真紅の瞳を光らせると平らな胸を張って隣で肩を並べて歩くレオにジェラートを差し出す。


「確かに吸血鬼になって、血液を美味だと感じるようになったのは確かだが、卵焼きに勝るものはこの世に存在しない。」

「お、おう…そこまで言い切るか」


 断固拒否をし、卵焼きについて力説するレオに若干押されながら、ヴィデレはジェラートを再び舐め始める。


「特に、ロゼとシムルの卵焼きは別格だ。」

「むっ、なら今度(われ)も作ってやろう」

「まだ死にたくない。」

「人の料理をなんだと思っているのじゃ!?」

「【深淵(アビス)】」

「私の料理は、神を傷つけることはできないぞ!」


 師弟漫才を繰り広げながら、街中を歩くヴィデレとレオ。

 ここは、中立都市【アーベルン】。どこの国にも属さない、商工業が盛んな都市で多くの店や屋台が立ち並んでいる。

 二人が何故ここに来ているかというと、以前約束したデートを消化するためも兼ねているが、本命は【深淵】。

 ここ、アーベルンは【深淵】から最も近い都市だ。

 なのでヴィデレとレオは、【深淵】に臨む準備をしつつ、ここでデートをしているというわけだ。


「おっふ…」

「天使だ…」

「イケメンすぎ…やば、鼻血出てきた」

「あらん、いい男ね…食べちゃいたい」


 二人が歩く度に向けられる多くの視線と声。


「気になるか?」

「いや、以前から慣れている。問題無い。」

「そうか、では気にするほどでも無いな。小僧が気になるなら、別の場所にでも移動しようと思ったのだが…」


 銀髪の美少女と、黒髪の美少年。

 共に、この世のものと思えないくらい美しい二人が並び、余計に目立っている。


「目立つのは、魔力のせいだろうな。」


 自分の腰をさすりながら、呟くレオ。


 魔力とは、文字通り魔の力。

 魔力が多ければ、相手に本能的な恐怖を与え、魔力が澄んでいれば、相手に癒しを与えるなど不思議な力がある。

 吸血鬼の魔力は、人ととは違い、腰にある翼で魔素を取り込み、魔力に変換する。その過程で人や他の生物ならば、不純物が混ざったりなどして純度が下がってしまう。

 だが、吸血鬼の魔力は純度が高く、質がいい。

 純度の高い魔力は、常に自分の体にある魔力よりもいいもの…優れているものと同義なので、ヴィデレやレオは、純度の高い魔力を体内に蓄えているため、人を引きつける魅力となっている。


「まぁ注目されるのは、気分的に悪くない。」

「私的には二人きりになりたいがな」

「勘弁してくれ。何されるか分からない。」

「人を獣のように言うな、普通ならば立場は逆だろうが…それも悪くないかもな……」

「さて、そろそろ【深淵】のところにでも行くか。」


 薄く桃色に染まった頬に手を当て、くねくねと体を動かし自分の世界に入っているヴィデレを置いて、レオは足早に街を出ていく。


「なっ、おい、待て!待つのじゃぁぁぁぁ!!」


 街の中に、ヴィデレの叫び声がこだまする。


「さて、ここからが本番だ。」



「ここから先は、本当に危険区域だ。」


 点々と一定間隔で打たれた杭の間をロープが張られ、『立入禁止』の立て札が立ててある。

 そのロープを跨いで、辺りを見渡すレオ。


「草木一本無いな。」


 そこは灰色の世界だった。

 視界に映る全てが灰色で、どこまで見渡しても障害物すらない平地だ。



「当然だが、ここ一体は【深淵】の影響で、生命が生きられない状態になっている」

「それを今から俺は取り込むのか…フッ、笑うしか無いな。」

「不安なら手を繋いでやろうか?」

「さて、行くか。」

「最近、私の扱いが雑な気がするのは気のせいか?」


 レオが灰色の大地へと足を踏み出した瞬間、全身の毛が逆立つような感覚を味わう。


「っ…。」

「感じたか?この世の全ての負の感情が集まった、馬鹿げた存在を」


 一歩。また一歩と足を進める度に吐きそうなほどの、嫌悪感がレオの体を襲う。


「はぁ…はぁ…。」


 自然と呼吸が乱れ、体の内部をぐちゃぐちゃに掻き回され、もやもやとするら違和感が体全身を駆け巡る。


「これが、【深淵】…。」


 世界の中心にあいた大穴。

 それの目の前に立ったレオは、どこまでも果てしなく続く【闇】に心を掻き乱される。


「今の小僧がその体に入れられるのは、ここにある全体のほんの少し…風呂の浴槽三つ分といったところか」

「【深淵よ 」

「おい小僧……」


 ヴィデレの説明を詳しく聞く暇もなく、すぐに【深淵】を体の中に取り込む詠唱を始まるレオ。

 それを止めようとするヴィデレだったが、レオの顔つきを見て、口を閉じる。


「 我が体に】」


 レオが短い詠唱を告げると、これまでうねうねと穴の中で(うごめ)くだけだった【深淵】が、ゴゴゴゴゴという音を鳴らしながら、渦を描いていく。


 そして、渦の中心から、人の体がすっぽりと埋まりそうな大きな球体が浮かび上がり、レオの体へと吸い込まれていく。


「くっ……何とも無い…?」


 何が来てもいいよう、身構えていたレオだったが、何事もなく体に吸い込まれた【深淵】。

 レオは、体の至る所を手で触って確かめるが、何も変わった様子はない。


 苦しい。


「おい、なにか言ったか?」

「いや、何も言ってないな。それより成功したみたいで良かったな」


 憎い。


「ああ。これでやっと…」


 助けて…。


「お、おいレオ?」

「ぐっ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 苦しい。憎い。助けて。辛い。妬ましい。殺したい。死ね。恨めしい。怖い。戸惑い。悲しい。恐怖。軽蔑。殺す。何故。不幸。殺す。怒り。不満。失望。畏怖。壊したい。孤独。寂しい。焦り。不愉快。萎縮。落胆。惨め。罪悪感。


 ───────絶望。



 絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望、絶望…。


「ぐがっ、あぁぁぁぁぁぁァァァ亜亜亜!!!!!」


 喉が擦り切れるほど叫び声を上げるレオ頭を押さえ、辺りをのたうち回る。


 脳内に響く、負の感情。

 心を侵食していく【絶望】。


「正気に戻れ、レオ!精神を保て!」

「うぐっ…ぁ……がはっ…ああぁぁぁぁ!!」


 痛みで気絶しても、それを許してくれるほど甘いものでは無い。気絶した瞬間、目が覚めるような激痛がレオを襲う。

 気絶して、強制的に目覚めさせられて…永遠にそれを繰り返していく。


「っ、いかん暴走が始まる…!」


 レオの体から、レオ自身を覆い尽くすように漏れ出す【深淵】。


「くっ、遅かった…」


 レオの体を覆い尽くした【深淵】は、球体を維持したまま、静かに空中に佇む。


「まただ…また、何も出来ない自分が憎い…。」


 ヴィデレは、ぎゅっと唇を強く噛み締める。唇が切れ、口の端から血が零れるが、ヴィデレはお構い無しに【深淵】を心底恨めしそうに見つめる。


 ヴィデレは、神に造られた存在。故に、【深淵】は、天敵とも言えるほどのもので、レオの前で強がっていたが、危険区域に立ち寄ってからは、レオよりも精神的に辛い痛みを受けていた。


「弟子の苦しみを取り除いてやれなくて、何が師じゃ…何が世界最強じゃ…私は、小僧を失ったら…レオ……」


 ヴィデレの真紅の瞳から一粒の雫が落ちたその瞬間、静かに佇んでいた【深淵】が、ボコッと一部盛り上がる。


「そうか、戦っているのか、諦めずに抗っているのか…ならば、私には、私が出来ることをしようじゃないか」


 ヴィデレは、制服の裾で目をゴシゴシと涙を拭き取ると、街の方へと走り出す。



 ここから、長い長い、レオと【深淵】の戦いが始まる。



さて、投稿する準備をしようと意気込んでコピーしようとしたら間違えて全選択のままペーストしてしまった作者。レオと同じように絶望の中で必死に書きました…なんとか間に合った。



それはそうと、遂にレオが【深淵】を手に入れようと奮闘しています。

もし、手に入ることができたのなら、今まで考えてきた『僕の考えた最強の敵達』と戦えるようになるので、個人的にとても楽しみです。

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