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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode47 模擬戦【後半】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

 体勢の崩れたカーリの腕めがけて剣を振り下ろすレオ。


「いつっ…」


 飛び散るカーリの鮮血。

 苦痛に顔を歪めるカーリだったが、次の瞬間、飛び散った血や、傷跡が逆再生するように再生していく。


(予想よりも傷が浅い…それにこの回復力…。)


「お、おぉ」

「余所見している場合か?」


 みるみるうちに回復していく傷を見て、驚くカーリに追撃を加えるレオ。


「っ…」

「ちょこまかとっ!」


 それをギリギリのところで避けたカーリ。


「【風刃(ふうは)】」

「【魔斬撃】」


 レオは、立て直すために距離を取ろうとするカーリに、風魔術を放つが、先程の魔力を乗せた斬撃に防がれる。

 二つの攻撃がぶつかり、土煙をあげながら衝撃波を撒き散らす。


 互いに剣をぶつけ合い、再び開いた距離を徐々に詰め合う二人。


「くっ…。」

「せりゃあぁぁ!!!」


 両者の展開は、カーリがやや有利。

 カーリの超火力は、レオの技量でも完全に受け切ることは不可能。

 衝撃を何とかいなしながらも、押し込まれていくレオは、内心で舌打ちをする。


(俺がレオを押してる…?いける、今なら!)


「【一点集中】」

「【賢狼よ 晒せ 知恵を 理を その瞳に映る真実を 事読み(レゲレ)】」

「よけられた!?」


 レオの首筋目掛けて完璧に決まったと思われた、カーリの全力の突き。

 だがレオは、カーリの見たことの無い魔術を一瞬で発動させると、急激にレオの動きが加速し、頬をかするだけで終わる。


「はぁ…はぁ…」


 肩で息をしながら、頬の傷に魔力を注ぎ回復するレオ。

 吸血鬼の再生は、魔力を必要とする。傷の大きさにもよるが、上級魔術一回…レオの年代の平均的な魔力を全部使って回復するため、消費魔力はかなりのものだ。


 だが、レオが疲れているのはそこではない。

 レオの使った【事読み】。これは、自強化系の魔術の中で、最も難易度の高いもので、自分の思考能力と、動体視力、反射神経を上げる事ができる。

 その代わり、一瞬だとしても、使用すればいつもの何倍も強い力を行使するので披露はとてつもないものになる。


『ご主人、汗凄いですけど風邪でいやがりますか?もうすぐ死にますか?』

「うるせぇ…」


 ネーザに対して、いつもの饒舌な罵倒が出ないほど追い詰められているレオ。


(魔力に余裕はある。武器も折れていない。技量や読み合、条件としては絶対にこっちが有利のはず…だが、勝てるビジョンが見えない…。)


「疾ッ───!!!」


 視線が僅かに右にズレたカーリの隙をついて放った一撃は、カーリの腕を一本切り落とす事に成功したが、レオはすぐに気がついた。


(誘われた…!くそっ、焦りすぎて野性を無意識に解放しすぎた!)


「【魔斬撃】」

「なっ!?」


 カーリは、自らの腕を差し出した事でレオの剣を封じ、レオの腕と足を連続で切り落とした。


「…【昇れ 天高く 貫け 地深く 螺旋・雷陽(コロナ・コクレア)】」

「な、なんだこの魔力…!」

「大地よ 流動し 隆起し 沈降し 全ての者を地に平伏せさせよ 【大動極地(たいどうきょくち)】」

「う、うわぁぁぁ!!!」


 対軍級魔術を瞬時に発動するレオ。

 遥か空から雷が降り注ぎ、大地が揺らぐ。


「……。」

「訓練場が崩れるぞー!」

「おい、レオ逃げるぞ!!」

「…ああ。」


 訓練場全体が崩れ始め、観戦席にいた全員も避難を始める。


「レオ、やりすぎだぞー!」

「悪い。力が入りすぎた。」

「模擬戦は決着付かずかー」

「このあとまだ仕事があるから俺はここで。」

「じゃあなー」


 そういって訓練場の前で解散する二人。


「確かにちょちょいと直せますけど、やりすぎですよ」

「悪い。」

「まぁいいですよ」


 呆れ果てた様子のヒカルは、「仕事が増えた~♪」とげんなりしながら歌い始める始末だ。


「大丈夫ですよ、レオきゅんも強いですから」

「……。」


 帰路につこうとしているレオにそっと声をかけたのはニーツ。

 顔を曇らせているレオの頭を優しく撫でる。


「次は大丈夫」

「何を根拠にそんなことが言えるんだ!」

「あっ…」

「俺は…俺は…負けたんだ。」


 その手を払い除け、柄にもなく怒鳴り散らすレオ。

 ニーツは、自分の行動が逆効果だと気づき、そっと手を引く。


「俺はあの時、対軍級魔術を使うことで勝負から逃げたんだ!模擬戦の中、俺は自分の使える手は使った。アイツは気づいてないだろうが、何百というフェイント、後方からの支援魔術、俺の持てる全てをアイツにぶつけた…だが、あいつは全部通じなかった、勝てる未来が見えなかった!俺の方が、俺の方が……!!」

「レオ!」


 怒涛の勢いで、心の内を叫ぶレオだったが、途中で寄宿の方へと走り出す。

 ニーツはそれを引き留めようとするが、今はかける言葉無いと感じ、伸ばした手を引っ込める。


「……」


 遠ざかるレオの背中をニーツは、じっと見つめる。

 小さな背中に乗った重たい重圧を感じながら。



「レオ様おやすみなさい」

「ああ。」


 レオは寄宿に戻った後、いつも通り夕飯を食べ、入浴し、就寝しようとする。

 だが、そこに笑顔は一つもない。


 シムルが、全て終わったのがレオに挨拶をすると、部屋から出ていく。


「明日、謝ろう…。」


 ベッドに入り、蒸し蒸しとした熱気を感じながら、薄いタオルケットを上から被ったレオは、ニーツに明日謝る事を決心する。


「今謝ってもいいですよ?」

「姉さん…いつの間に。」


 壁の方を見つめて横になっていたレオのからニーツの声と共に人肌のぬくもりが伝わる。


「レオきゅん、今日はごめんなさい。貴方の事を全然考えずに…無神経すぎました」

「いや、俺が悪かったんです…すみませんでした。」

「では、これで仲直りですね。今日は一緒に寝ましょう」

「いや…。」

「シムルちゃんとは寝たんですよね?なら、家族でり、姉である私とも寝れるはずです」


 ニーツの無茶苦茶な要求に、口ごもるレオ。

 今日、ニーツに怒鳴ったこともあり、強くは断れない。


「今日だけですよ。」

「…」

「返事してください…はぁ…おやすみなさい。」

「おやすみなさい」


 自分を抱き枕のように抱えて寝息を立てるニーツに、今日はあまり寝れそうにないと感じるレオ。


「俺にとってアイツは、負けられない相手です。」

「…そうなのですね」


 短針が真上を超えたあたりで、ニーツが目を覚ましたのを感じ、レオは小さく呟く。


「俺はあいつの目標でありたい。あいつの先にいて、あいつの目印でありたい。」

「…」

「隣に並ばれるのも嫌だった。なのに今は、あいつのの背中が俺の前にある。どこで差がついたんでしょうか…。」

「学園長先生が言っていました。カーリくんは、才能だけならば、この世界で一番上だと。ヴィデレさんも、それを認めていました」

「自分もそう思います…あいつの才能は、俺よりも遥かに上。」


 てっきりプライドの高いレオは、頑としてそれを認めないとニーツは思っていたが、あっさりと認めたレオ。

 本人は、口ではああ言っているものも、カーリの力を一番評価しているのはレオなのだろう。


「例え他人から貰った力だとしても、それはあいつの力に変わらない…。この半年、やれることはやったつもりです。でもダメだった。姉さん、俺はどうしたらあいつに勝てるんでしょうか。」

「…一度、ヴィデレさんに相談してみましょう。あの方なら、貴方を正しい方向に導けます」

「ありがとうございます…そうします。」

「私に出来ることは、レオきゅんを肯定することだけです。お姉ちゃんは、弟に甘々なんです。いくらでも甘えてください」


 静かに涙を零すレオを、更に強く抱きしめるニーツ。

 そこには確かな愛情があった。


「じゃあ、今日はこのまま寝させてください。少し疲れました。」

「いいですよ、おやすみなさい」


 レオの頭を優しく撫でるニーツ。

 今度は、その手を受け入れたレオは、心地よさそうに眠りに落ちていった。


「おやすみなさい、お姉ちゃん。」

頑張れロゼ。メインヒロインの座が危ない!

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