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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode46 模擬戦【前編】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「ここに来るのも久しぶりだな。」

「武器はどうする?」

「真剣勝負だ。今もてるお互いの全てをぶつけるぞ。」

「そうこなくっちゃ!」


 丁度一年前、馬鹿みたいに毎日模擬戦を繰り返していた第九訓練場。


 互いの獲物(武器)を片手に、睨み合う二人。


 カーリは、一年前よりもかなり身長が伸び、大差の無かった身長は、十センチ差が付いている。


「【ギアス】、【魔闘気】。」

「【勇者の魂(ブレイヴ・アニマス)】」


 レオはギアスを全開放し、紅色の魔闘気を身に纏う。カーリの癖は知っていても、手札を知らないレオは、観察するために野性は解放せず、理性十割で行くようだ。

 そして、レオの腰から抜かれた一本の剣。黒の刀身を持つ、レオだけの最強の剣を右手で握り、左手を右手首に添える。


 対してカーリは、いつも通り白金色のオーラを身に纏い、半身になって、新調した剣を腰に携える。


「行くぞ…!」

「こい!」


 レオは、【静地】を使い、一瞬でカーリとの距離を詰める。


(間合いは四歩半…!?)


 レオは、カーリの初撃一撃をナーブスとの戦いで見ているため、カーリの狙いはすぐに分かった。

 自分の足が四歩半相当に到達する瞬間、足を小刻みに地面に接地し、タイミングをずらし、カーリの動揺を誘ったのだ。


「【雷鳥剣貫】」

「ぐぅ…!?」


 一瞬の動揺を逃さないレオ。カーリの首筋目掛けて剣を突き出す。

 だが、カーリは、ギリギリのところでレオの剣を自らの剣で受け流す。


「っ…!」


 自分の剣を受け流したカーリを見て、レオは目を見開く。


(完全に崩したはずだ。今までのコイツなら絶対に防げないはず…。フッ、こいつも成長していると言うわけか。)


「【雷同・連爆】」


 先程飛び出した雷鳥を瞬時に増やし、雷同の魔術陣を雷鳥に付与すると、一番近くの雷鳥を叩き斬るレオ。


「【加速(アッケレラーティオ)】」


 連鎖的に爆発を大きくしていく中、カーリは、【加速】で先に距離をとっていたレオを追いかける。


「逃がすかっ!」


 まだ距離があるのにも関わらず、レオに向かって剣を振るうカーリ。


「ばっ…!?」


 レオは、カーリの行動をやぶれかぶれの行為だと考えたが、魔力の反応に気づき、思いっきり横に飛ぶ。


(斬撃に魔力を乗せて実体化したのか…。)


「…ははっ。」


 レオは、後ろを振り返ると、思わず笑みがこぼれる。


 カーリの魔力が乗った斬撃は、頑丈な訓練場の壁を大きく破壊していた。


(俺と同等のスピード、異常なまでの反射神経、自然な魔力操作…ここは多分、【勇者の魂】による強化だろうが、この火力はなんだ…。)


「うおっ!壁が壊れてる!」


 そして何より、自分自身が飛ばした斬撃の威力に、一番驚いていたのはカーリだった。


「これが、ヒカル(アイツ)が言っていた壁の破壊か。」


 カーリは、気づいていないが、ビスティアやヒカル、レオはカーリの欠点に気づいていた。


 それは、火力。


 カーリは確かに強くなった。

 白金色のオーラを身につけたことで常人には不可能な領域まで進んでいるが、カーリには決め手が欠けていた。

 故にビスティアは、カーリに【初撃一撃】、【一点集中】などの技を教えていたのだが、レオのように魔闘気や、ギアスで大幅に引き上げられた大魔術や、幼い頃から鍛え上げられてきた剣術のように、極め続けた、ここぞという時に使えるほどの完成度ではない。


 カーリの、剣術や魔術が本格的に覚え始めたのは、一年前。

 【勇者の魂】は、その後だ。

 才能があっても、経験が足りない。

 格上をねじ伏せるような、火力は備わっていなかった。


「だが、火力という壁をクソッタレな神が破壊したことで、こいつの弱点は一気に減った。厄介極まりないな。」


 これまでのカーリの魔術は、魔力の反応さえ見ていればレオが不意をつけれることは無かった。

 剣術も体術も、速いが、軽い。どれだけ速くても、軽く受け流せた。


 だが、火力が備わったらどうだろうか。

 魔術の火力が上がれば、それだけ警戒をそちらに向けなければならない。

 剣術や体術も、一撃、一発に威力が篭っていればただたんに受け流すだけじゃ体が持っていかれる。


 軽く魔力を乗せただけで訓練場を破壊するほどの火力だ。これまであった余裕が一切無くなる。


「【野性解放】」


 レオは、カーリほどの速度で戦う相手に火力が備わったら、今ほど余裕は無くなる。

 見てから全てを判断する理性では厳しいと判断し、二割ほど野性を解放する。


「【加速】」

「【静地】」


 互いに、距離を変えて、相手の様子を伺うのは終わり。

 これから、超近接戦へと変わる。


「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」


 甲高い音をあげながら、幾度もなくぶつかる剣と剣。


「っ、偽物!?」

「下だよ馬鹿。」


 カーリの剣が、レオを捉えた瞬間、レオの姿が掻き消える。代わりに、カーリの足元の地面から剣を突き上げて飛び出すレオ。

 それを間一髪で躱すカーリ。


「【一点集中】」

「ぐぅ…!」


 カーリは、【勇者の魂】を剣に集中させ、剣を振り下ろす。

 野性も使ったことで余裕を持って受け止めたはずにも関わらず、重い一撃に押し込まれるレオ。


「『システム︰魔剣起動』」

『承認しやがりました。ご主人、久しぶりに起動で私、ワクワクしますぜ』

「剣が喋った!?」

『ふっふっふー、いい反応ですね』

「戦闘中に喋ってんじゃねーよ。」

「んぐっ…!」


 抑え込まれていた絶体絶命の状況から一変。レオは、魔剣を起動させると、魔力が爆発的に増大し、カーリの剣をジリジリと押し返し始める。


 魔剣ネーザ。

 魔王シリーズと呼ばれる、魔王ゼーナが保有していた大量の魔力を秘めた強力な十の武器の一つで、魔王を倒した際に、ヒカルが回収して改造したものだ。

 それを、三ヶ月ほど前にヴィデレを通してレオの手元に来たわけだ。


『ご主人と私の相性は脅威の九十八パーセント!残念ながらシンクロ率はご主人が弱っちいので七パーセントですけどね!』

「黙れ、叩き折るぞ。」


 無機質な声なのに、明るい口調で無駄に喋る魔剣にレオはイライラしながらも、遂にカーリの剣を弾き返す。


「【雷同】」

「おらぁぁぁ!」

「くっ…!」


 剣を弾き上げ、カーリのがら空きの腹に【雷同】を叩き込むレオ。

 カーリも、お返しとばかりに、レオの(すね)にローキックをお見舞する。


「こんっの!」


 レオは、一瞬で体を屈めて小さく体を一回転させると、カーリの顎めがけ、地面を強く手で押し上げて勢いをつけて蹴りを繰り出す。

 そして背後から初級魔術で牽制。


「あぶっ…」


 カーリは、それを弓のように体を逸らして避ける。


 レオはその隙を逃さず、体制をいち早く立て直し、剣を振るう。

 ギリギリのところで、カーリもそれを剣で受け止めるも体勢を大き崩して転んでしまう。


 均衡していた戦いが遂に破られ、レオにチャンスが舞い降りる。



 二人が模擬戦をするということで、上の観客席から見ていたヒカル達。


「す、すげー…兄貴も凄いっすけど、相手の人もあの若さでなんてスピードとパワーですか」

「私、何が起きてるのか分からないんですが…」

「シムルちゃん、私もだから大丈夫だよ…」


 初めて見る二人の動きに、興奮を隠せないカニス。

 圧倒的な二人を目で追うことができないシムルとロゼは、お互いを慰めあっている。


「あのー、ヒカル様」

「ん?どうさたんだい?タラナくん」

「先程、何故レオ様の剣をカーリ様は避け無かったのでしょうか?」

「うん、確かに今のは避けるのが正解だったのだろうね。相手がレオくんじゃなければ」


 武術の心得があるのか、人質として連れてきたタラナは、二人の戦いを食い入るように見ていた。

 そして、先程のレオの剣を避け無かった理由が気になり、横で見ていたヒカルに質問する。


「レオくんは、元フィエルダー家の生まれの貴族。フィエルダー家は独自の剣術を流派としているんだ」

「そうなのですね」

「そして、フィエルダー家の剣術の特徴は、最速を保ったまま剣が曲がる(・・・)こと。」

「剣がまがる…?」

「そう、例え避けたとしても、減速しずに剣が自分を追いかけてくるんだ」


 剣が描く軌道は、一直線。

 一度決めた軌道を変えるには、剣を減速なり、一度振り切る必要がある。

 だが、レオの剣は、最高速を保ったまま、直角だろうとなんだろうと相手の動きに合わせて動くことが出来る。

 それはもちろん、並々ならぬもので、手首や腕への不可は計り知れない。


「だが、レオくんには潜在能力を解放する【ギアス】があり、吸血鬼としての再生能力があるため、多少の無理はできます。今のレオくんの剣は途中で止めなければ、最速を保つのではなく、加速しながら追いかけてくる。それを予期したカーリくんは、体勢を崩してでも、受け止めたんだと思います」

「なるほど、馬鹿そうに見えますが、考えているのですね」

「いえ、カーリくんは完全にセンスでやっているので、多分直感でしょうね。いやー、恐ろしい」


 加速し続ける剣を使うレオと、才能でそれを受け止めるカーリのハチャメチャさと、同い年でそれをやってのける二人の強さを改めてを実感し、タラナは驚きを隠せないようだ。


「さて、解説はここまでです。動き出しますよ。」

久しぶりの濃い戦闘シーン。かなり活き活きして書けました。


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