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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode45 計画通り

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「おらぁぁぁぁぁあ!!!死に晒せぇぇぇぇ!!!」

「おいレオ!正気に戻れ!」


 背後で鬼の形相で敵を薙ぎ払っていくレオを見て、今のままではマズいと感じたカーリ。

 レオに話しかけ、野性を押さえるよう叫ぶ。


「…潮時か。貴様のせいで計画が狂った。これが終わったら貴様の死に様をリベリオンで晒してやる。」

「え!?」


 これまで獣のような雄叫びの如く叫んでいたレオだったが、急にいつもの抑揚の少ない平坦な声に戻る。


「丁度調子に乗らせた所だったんだがな…。まあいい。ここで勝てば結果は同じだ。【ギアス】【魔闘気】。」


 レオは、ニヤリと口角を上げると、ギアスを全て解き放ち、魔闘気を身に纏う。

 禍々しい黒い靄と、紅色の魔と気が辺り一帯を包む。


「"正々堂々真正面から相手をしてやる"」


 レオは、自分をグルッと取り囲むように陣を構える敵軍を更に囲むように魔術陣を配置する。


「な、なんなんだこの魔力量!」

「魔術陣が隙間なく埋め尽くされている…!?」

「総員、防御を固めろ!!」

「言っただろ?正々堂々真正面からだって…。」


 レオは、周りを警戒し始める、敵軍を見下すように鼻で笑うと、片膝をついて地面に両手を着く。


「【大地よ 流動し 隆起し 沈降し 全ての者を地に平伏せさせよ 大動極地(たいどうきょくち)】」


 レオを中心に、地面を這うように大きく広がる魔術陣が、淡い光を放つ。


 【大道極地】。レオが開発した土属性のオリジナル対軍級魔術。


「な、なんだ!?」

「地面が…!」


 生命を吹き込まれたかのように、体に恐怖を強制的に刻ませるような大きな音を響かせながら、動き出す地面。

 次の瞬間、人が宙を舞う。ドンッという重く響く音をあげ、地面が針山のように隆起する。


「ぐわぁぁぁ!!!」

「な、なんで俺まで、レオぉぉぉぉぉ!!!!」


 隆起した地面に、帝国兵は次々と打ち上げられる。


 長い長い時間をかけ、ゆっくりと動きを止める地面。


 最後にそこに立っていたのレオ一人。


 全ての者が、詠唱通り地に体を伏していた。


「ミラ達、来た意味ありましたかね?」

「うーん、美しいっ!」

「それより、レオ様って結局危険だったんですかね?」

「小僧は欺いていたんだよ、この私でさえも…最近、自分の全知というのを疑いたくなることが多すぎる」


 参戦しようとした瞬間、全てを終わらせられ、出番を奪われたミラ達。


「普段から野性を解放しすぎるのもよくないな。」


 レオは、一か月前から、普段から野性を解放させ、理性とのバランスが取れるように日常生活の中で修行をしていた。

 確かに、ロゼ達を差し出せと言われて頭に来たのは本当で、解放していた野性が暴走しそうになったのも事実だ。


 だがレオは、野性の制御を失ってはいなかった。

 即興で、ハサタを()めるシナリオを考え、実行していたのだ。


「俺は、世界最強の吸血鬼の眷属であり、弟子だ。こんな紛い物で傷が付けられるわけがないだろ。」


 レオの横腹に刻まれていた傷跡が再生していく。


「っ…!」

「へえ、今の止めるんだ」

「まだ立てるヤツがいるとは、驚きだな。」


 レオが近くで間抜け面を晒して寝ているカーリを蹴っ飛ばしていると、背後から気配を消して斬りかかる影が一つ。

 それを、後ろを振り返らずに剣で受け止めるレオ。


「はぁ!おら!…ひゅ~…まじかよ…」


 その影が再び数度剣を振るうも、背中越しに全ての剣を受け止められ、レオに対して呆れを通り越して感心を始める。


「貴様、いい腕をしているな。リベリオンに来る気は無いか?」

「あん?俺っちは根っからの帝国民。せっかく安定した職に就いたんだ。弟達の面倒もみなきゃらなねぇし、生憎だがお断りだ」

「衣食住保証。死亡時の親族の成人までの生活保障。給料三倍。」

「帝国なんてくそくれぇだ!どこまでもお供しますぜ兄貴!」


 ニーツと同い年くらいだろうか、灰色の髪を辮髪(べんぱつ)に、鋭い目付き…一見怖そうに見せるが、人懐っこい笑みを浮かべ、忠犬のようにレオに尻尾を振っている。


「自分、カニスって言います!兄貴に粉骨砕身尽くしますので、ボーナスよろしくお願いします!!」

「安心しろ。今から大量に金を巻き上げてくるからな。」


 これか起こる未来に、笑みを隠せないレオ。


「さて、今頃ご満悦に紅茶でも飲んでるハサタ(愚王)に挨拶でも行くか。」



「なっ!?なぜお前がここに!」

「何故?簡単な話だ。終わったんだよ、全部な。」

「う、嘘だ!『プレデター』が敗れるわけがない!」


 レオが部屋に入るなり、血相を変えて叫ぶハサタ。


「ベッルス、連れてこい。」

「なっ…」

「これで信じたか?」


 ベッルスが連れてきたのは、 『プレデター』の大将。

 気を失い、拘束された姿で連れてこられた大将を見て、ハサタの顔が青ざめる。


「さて、交渉といこうか。」


 後にハサタは語る。レオは人間ではない。魔王だと。



「小僧、全部仕組んでいたな?」

「まさかそんなわけないだろう?」

「貴族派に弱みを握られるわけにはいかないハサタという男の目の前に、蜜を置くとはな」


 平民派と、貴族派で争っている帝国では、どちら片方に優位を取られるわけにはいかない均衡状態だ。

 レオが行ったのは宣戦布告。規模は小さくとも、国と国の戦争。大将首を取られ、自分を守る者がいないハサタには、負けを認めるしか無かった。


 そして、絶体絶命のハサタに、レオは交渉を持ちかけた。


 一つ、毎月初めに金貨一万を支給。


 二つ、軍を一度、こちらの命令で動かすこと。


 三つ、本人の希望次第で、帝国からリベリオンに移住することを認めること。


 四つ、以上の事を守るため、人質としてハサタの娘であるタラナをリベリオンで預かること。


「予想通り喚き立てたが、事前にウムブラに調べさせておいた汚職の証拠が役に立ったな。」

「末恐ろしい限りだ」


 会談の前にハサタの事前情報の入手。

 会談中の、ハサタの言動による性格の把握。

 理性が飛んだフリをし、自分をまだガキだと舐めさせたこと。

 人材の確保。

 そして、資金面の解決。


「全て上手く行ったが…これだけは予想外だ。」

「おっーほっほっほっ!レオ様、リベリオンはなかなかよいところではありませんか!」

「おい貴様、兄貴になんて口の聞き方してんだ!」

「ここまで喧しいとはな…。」

「また賑やかになるな」


 ハサタの娘で、レオと同い年のタラナ。

 親譲りの茶髪をドリルツインテールにし、ツリ目のいかにも傲慢なお嬢様と分かる女の子で、馬車に乗ってリベリオンに向かう途中からずっとレオに対して話しかけ、休まる暇が無かったほどだ。


「おいド平民。」

「ん?」

「付いてこい。久しぶりにやるぞ。」

「…?…あっ、よしゃっ」

「小僧、金が入るからと言って訓練場を

壊すなよ?」

「善処する。」


 レオの後ろを付いてきたカーリに、レオは声をかける。

 約一年ぶりの模擬戦。

 互いの成長を確かめ合うにはもってこいだろう。


「どちらが勝つと思います?」

「レオだな。この半年であいつは更なる高みにたどり着いた」

「じゃあ私はカーリくんに、お酒を一杯」

「のった!」


 ちゃっかり後ろでレオとカーリの模擬戦に賭けていたヒカルとヴィデレ。

 抜け目ない二人に、全員が顔を見合わせて吹き出してしまう。


「なにをしていますの?早く行きますわよ!」


 一人を除いて。


「連れてくるんじゃなかったな…。」


 レオのため息がまた一つ増えたそうだ。

もうすぐ50話。

自分の中のエンディングを考えると、十分の一も進んでいない事実。

これは長くなりそうだ…。

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