episode44 野性全開放
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時は遡り、三日前。
ヴィデレとレオは、リベリオンの中にある食堂で、昼食を取っていた。
レオは、ロゼ特性のお弁当を机に広げ、ゆっくりと食べる。
対してヴィデレは、レオの後から首に手を回してレオの顔に自分の顔を近づけるようにして、時折、首筋に歯を当てて血を味わうように吸っている。
食堂の飯を食えよ。と言いたくなるが、ココ最近はずっとこんな感じなので、周りで食事を取っているリベリオンの仲間たちも何も言わなければ、視線を向けることもない。
「帝国とのアポイントメントが取れた。悪いが、貴様も付いてこい。」
「なぜ私が?」
「もしものためだ。スラム街に行くならいいが、いつものメンバーでは、不安要素が大きすぎる。」
「それならば、軍を引き連れていけばいいだろう?」
「自分達の優位性を乱用して、少人数が来るようにと言われたんだ…チッ。」
腕を組み、貧乏ゆすりをするレオ。いつもの、三割増しくらいでイラついている。
「場所は?」
「マッザナース領。比較的王国よりだが、帝国領だ。」
「一応取引きはしているものの、同盟物も組んでない敵国に十人足らずで来いと向こうは言ってるのだな?」
「できれば断りたいが…。」
「ここで断ったら、小僧の思い描く計画に狂いがでるから断りたくない。あのクソ勇者も出払っているから、私についてきて欲しいというわけだな」
「ああ。」
現在、リベリオンと帝国は、食料や日用品などの輸出入を相互で行っている。
最初は、リベリオンが買うだけだったが、この三ヶ月で、リベリオンは急成長を遂げ、相互関係を少しずつ気づくことができている。
戦闘に参加出来ない女性や年寄りで織物製品を安定して供給することができるようになり、中々高値で取引きできている。
だが、帝国にとってリベリオンは、取るに足らない存在。自分達が王国を倒すために、少しでも戦力を削ってくれれば御の字程度にしか感じていないだろう。
それはレオも同じ。だが、今の状況では、帝国に自分達の立場を弱いと思わせたまま暫く事を運びたい。なので、ここで帝国の申し出を断るわけにはいかないのだ。
「クックック…帰ったらデート一回」
「考えておいてやる。」
「ならばいかん」
「チッ…一回だけだぞ。」
扱い難いのか、扱い易いのか。ニヤニヤと牙を見せて笑うヴィデレを見てレオはため息を零す。
「うむっ、大変いい心がけじゃ」
「素が出てるぞ。」
「おっと…つい嬉しくてな」
「…。」
「その顔は、素直に好意をぶつけられて、遇うことも出来ず、反応に困ってる顔だな」
「うるさい。」
頬をツンツンとつつきながら、レオの照れを楽しむヴィデレ。
眷属の契約をかわかてからというもの、ヴィデレがずっとこんな感じなので、困り果てているレオ。
また一つ、ため息が増えたようだ。
☆
「ふざけるなっ!!」
ドンッと声を荒らげて机に拳をぶつけるレオ。木製の机が真ん中からひび割れ、上に乗っていたグラスや、書類が宙を舞う。
「いやいや、何もふざけてませんよ」
「ここで始めるのなら、受けて立つが?」
壊れた机を挟んで、レオと対面する男性。
一目見た時の印象が『仕事ができそう』と皆が口を揃えて言いそうなほど、ビジネスマンという見た目をしていた。
落ち着いた茶色の髪を、丁寧に油で固め、相手に警戒心を抱かせないよう、お手本のような笑顔を浮かべている。
この男性こそ、帝国のツートップの一人。平民代表の、ハサタだ。
今回、アポイントメントは取れたものの、完全に舐められているレオ。
会談として設けられた部屋には、ハサタ以外の大臣はおろか、護衛すらいない。
「フッ…そんな気はありませんよ。ただ、貴方の連れてきた女の子達を私たちにもちょーっと味見させて欲しいと思っただけですよ。特にそこのエルフなんて、私好みだ」
今回、レオがハサタに持ちかけたのは、不可侵条約。
それなりに、金や、物、帝国に有利な条件を出されるだろうと、それなりに覚悟していたレオ。
だが、まず何よりも要求されたのは、一緒に来ていた、外で待機しているロゼ、ミラ、ウムブラ、ニーツ、シムル、ヴィデレの体だった。
ちなみに、ロゼは髪を染めていたため、ハイエルフとはバレていない。
「……」
「君も元貴族なら分かるでしょ?そこら辺、しっかりして欲しいですね~」
未だに額に青筋を浮かべるレオの神経を逆なでするように、ハサタは下卑た笑みを浮かべる。
「…ぅ」
「んー?なんですー?」
「宣戦布告だ…今すぐ表でろクソ野郎!!!」
ハサタの舐めきった態度。仲間達を性的な目で見られたこと。そしてなによりも、ロゼに手を出そうとする事実に、あの冷静なレオの理性が外れ、野性が引かれる。
野性の全開放。今のレオは、我を忘れて飛びかかる勢いでハサタを睨みつける。
「いいでしょう。場所の決定権はこちらにありますからね、近くにいい野原があります。そこにしましょう」
「いいぜぇ、早く殺ろうじゃねぇか」
「あのヴィデレ=アルケー=ヴァンパイアが来ると聞いて、不死狩り部隊を連れてきて正解でしたね。どちらが上から教えてあげます」
「そのセリフ、そのまま返してやるよ」
「ちなみに、貴方の連れは既に私の手の中にあると思っていてくださいね…フフッ」
椅子の上で足を組み、ふんぞり返るハサタ。
どんな手を使っても、相手より優位に立つ。それがハサタという男だ。
「やっちまったなぁ、お前…完全にこの俺を怒らせた」
☆
「最近、ミラちゃんの見せ場が減ってる気がするゾ☆」
「うるせぇぞ!!」
「は、はひ!ごめんなさい!」
「今は、ヴィデレさんの合図を待とうではないかっ」
「スグに駆ケツケル。」
「シムルちゃんは私が守るから安心してね」
「ありがとうございますロゼさん」
レオが、ハサタに宣戦布告後、ハサタの命令で、下の階の部屋で待っていたロゼ達を捕らえようと多くの兵士がなだれ込んできた。
ヴィデレは、抵抗しようとするロゼ達を止め、自分は身代わりを使って外に脱出したのだが、ロゼ達は、腕を縄で縛られ、壁際に追いやられている状況だ。
「…合図です。」
これまで、馬鹿の一つ覚えのように定期的に騒いでいたミラが、見張りの兵士に聞こえないくらいの小声で、呟く。
「現在、レオ総督は敵軍と交戦中。追い詰められていましたが、カーリという少年の援軍で持ち直しているようです。私達にも、参加するようにだそうです」
【万能】のミラは、全ての属性に上級以上の適性を持っている。
ヴィデレの扱う、特殊な魔術もすぐに使いこなし、声を発することなく遠くの人と連絡を取れるようになっていた。
「それじゃあ、これからは僕達の出番ってわけだねっ!」
「戦闘…腕がナル」
「ミラちゃんの見せ場とうじょーう!【雷同】!」
「おい、貴様ら何を…ぐべっ!」
事前に緩めてあった縄を解き、見張りの兵士たちを次々と倒していくベッルスとミラ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!やめてくれぇぇ!」
「死んじゃう!あっ……」
「ぎゃぁぁぁ!悪魔が、悪魔がっ!!」
「レオきゅん、今行きます…お姉ちゃんが今駆けつけますから」
「見せ場、全部取られちゃいましたね」
「うーん…ナンセンスっ…」
鬼神の如く、次々と現れる兵士を倒していくニーツ。
レオを思い返させるような圧倒的な力に兵士は逃げ惑い、恐怖を刷り込まれていく。
「相変わらずのブラコンだなぁ」
「ロゼさん、ブラコンってなんですか?」
「今度、学園長先生に聞いてみるといいよ」
☆
「フッハハハハ!!!更なる援軍、リベリオンヒーロー参上!!レッド、ブルー!助けに来たよ!!!」
「な、なにものだ!」
「私は、リベリオンピンク!そして…」
「リベリオングリーンっ!」
「リベリオンブラック…」
「リベリオンイエロー?」
「リベリオンお姉ちゃん」
「「「「「参上!!」」」」」
三者三葉の登場の決めポーズを取りながら、近くの大きな岩肌から登場するミラ達。
「皆さん楽しそうですね」
「阿呆ばかりだな」
戦えないシムルは、後方でヴィデレと観戦。
はっちゃける皆を見て、苦笑いを浮かべるシムルを見て、ようやく安心できるとほっと胸をなで下ろすヴィデレだった。
これが終わったら、ニーツとの日常を書いてほしいと言われたので、書きます…。
けど、ヴィデレとの契約や、新しい剣のことも書きたい!!




