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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode41 勇者試練【二】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「きちゃったかー…」


 カーリが次なる試練として訪れた場所には、淡い紫色の髪に、大きく半円を描くアホ毛、ダボダボの白いTシャツを一枚だけ羽織り、うつ伏せになって足をバタバタと動かす幼女がいた。


「面倒くさいなー…働きたくないなー…あー、死にたい…うん、ダメな感じがするー」


 カーリを横目に見ながら、気だるそうに呟くアホ毛幼女。

 そこ気持ちを示すかのように、アホ毛がだらんと下がっている。


「レオと真逆のタイプだな…」

「……!!」

「!?」


 働く気ゼロの、アホ毛幼女を見て、カーリはいつも忙しく働いていレオのことを思い出して呟いた。

 その瞬間、今まで(しお)れていたアホ毛が、ピンっと伸びる。

 いきなりのことで、カーリは戸惑いを隠せず、アホ毛幼女の次の動向を伺う。


「そのレオって…レイオス=フィエルダーのことだよね……?」

「ん?あぁ、うん」

「そっか、君、レオの知り合いだったね、うん、嬉しい感じ」

「レオがどうかしたのか?」


 パッと表情を明るくし、ゆっくりながらも胡座(あぐら)をかいて座り直すアホ毛幼女。


「フォルスは、レオの大ファンなんだよ、本当に好きで好きでこれほど見てて飽きない人はいないと思う…うん、恥ずかしい感じ」


 ニヘラと、照れ笑いを浮かべるフォルス。特徴的なアホ毛は、左右に揺れている。


「フォルスは運命を司る神。この世のほとんどの生物はフォルスの運命の元にいるんだよ、うん、偉い感じ」

「へー、運命を」


 運命と言われても、パッと来ないのか、小首を傾げるカーリ。


「フォルスにかかれば、不幸な人を幸せな運命に、幸せな人を不幸な運命に変えることができるの、うん、強い感じ」

「え、じゃあ俺の運命も?」

「君を今すぐ、大金持ちにする運命にすることだってできるよ、うん、余裕な感じ」

「すげー!!」


 具体例を出してもらったことで、ようやく納得がいったのか、目をキラキラさせて興奮した様子で叫ぶカーリ。


「それで、勝負なんだけどさ」

「そうだなー…レオの話を聞かせてくれたらいいよ、うん、満足する感じ」


 フォルスの仕事は、カーリ達の住む世界の運命のバランスを取ること。

 ヒカルや、ヴィデレなどの例外を除けば、フォルスは全ての生物の運命を操ることができ、その運命のプラスやマイナスの大きさを視ることができる。

 故に、カーリ達の住む世界を全て監視する必要がある。

 この世界が始まってからずっと、淡々とひたすらに人の運命を調整する仕事をしてきたフォルスは、元からの面倒臭がりな性格も相まって、この仕事に飽きていた。


「そんな時、退屈しのぎで始めたのが、観察だったんだよね、うん、娯楽な感じ」

「へー」

「魔王とか、ハイエルフとか、悪人から善人までいろーんな人を見てきた中で、唯一レオは違ったんだよね、うん、ビビっときた感じ」

「確かに、他とは違うって感じがするなぁ、大人びてるし」

「ううん、そういうことじゃないんだよ、うん、運命的な感じ」


 フォルスは、カーリに首を振ると、楽しそうに笑顔を浮かべる。

 普段近くにいるカーリより、レオの事を知っていると感じて喜んでいるのだ。


 フォルスから見て、レオを一言で表すと『不運の塊』。

 これほど、不運に愛され、不運に包まれ、不運の体現したこのようなモノをフォルスは未で見たことが無かった。

 フォルスがレオの運命の調整をしたとしても、またどこからか不運が集まり、レオを不幸にする。


 そんなレオを見てフォルスは、「あぁ、この人は物語の主人公のようだ」と感じた。

 常に自分と戦い、周りと戦い、挫折と、苦悩を乗り越えて成長する。

 絶望的だろうが、関係なく、最後には絶対それを壊して見せる。


「そんなレオを見て、私はかっこいいと思ったんだ。まるで英雄譚を読んでいるかと思えるほど、心が踊り、全身が次の彼を求めている、うん、そんな感じ」


 顔を赤らめながら、恥ずかしそうにはにかむフォルス。

 幼いながらも見せたフォルスの笑顔に、カーリは一瞬ドキリとしてしまう。


「そっか、俺ってレオのことを全然知らないんだよな…」

「それを言ったら私も同じ。ずっと見ているといっても、他に仕事もあるから見れないこともある。その話が聞きたいな、うん、いっぱい知りたい感じ」

「じゃあ、取っておきの二人で風呂に入った時の話を」


 それから二人は、時間を忘れてレオについて話し合った。



「そこでレオが『貴様には関係ない、俺は俺の食べたいものを食べる。』とか言って外食なのに、シムルちゃんの卵焼き食べ始めてー」

「レオの卵焼き好きは異常だよね、うん、偏食って感じ」

「いやー、こんなにも盛り上がるとは思ってなかったぜ」

「私も色々なレオが聞けて良かった。また話せることを楽しみにしる、うん、期待してる感じ」

「あぁ!」


 話し始めてから三日。

 フォルスは、満足そうに頷いて、笑う。


「次の子は結構偏屈だから気をつけてね?うん、不安な感じ」

「任せとけ!」

「またね、うん、寂しくない感じ」

「また!」


 カーリも、話尽くして満足したようで、フォルスに手を振って、次なる試練の扉を潜る。



 そこから、カーリの勢いは止まらなかった。


「お兄ちゃん、僕を料理で満足させてよ」


 第三の上級神は、渋いおじ様のような声で話す幼い少年。


「レオ直伝、スペシャルダイナミックスーパー卵焼き!!!」


 それを、カーリは難なくクリア。


「恥ずかしい身話対決をしましょう」


 第四の上級神は、スーツを着たクールな男装の女性。


「私は、真面目そうに見えて、縛られながら罵られるととても興奮する変態なんです!ハァハァ…!」

「俺は、学園に入るまで、母ちゃんと風呂に入っていた!!!!」

「くっ、思春期の男子のこれは恥ずかしい…負けました」


 自分の尊厳を引き換えに、見事にクリア。


「飲み比べで勝負だ少年!」

「あ、未成年なんで」


 見事、第五の試練クリア。


 その後も、第六、第七、第八、第九と、順調にクリアしていくカーリ。


「はぁはぁ…やっと次で終わりだ」


 全裸で倒れる中年のおっさんを放置して、最後の扉を開けるカーリ。

 一癖どころか、百癖くらいある上級神にかなり苦戦はしたものの、次でラスト。気合を入れて扉を潜る。


「待ってましたよカーリ。僕は最後の上級神」


 扉の先で待っていたのは、一人の青年だった。


「えっと、よろしくお願いします?」

「うん、最後の試練だけど、最後だし戦おうか」


 鉄仮面を付けた、優しそうな青年に、今まで戦ってきた上級神(変態達)とは違う雰囲気に混乱するカーリ。


「はい、これいつもの剣ね」

「え、あ、はい」

「よし、やろうか」


 どこからともなく取り出したカーリの剣を、カーリに投げ捨てる青年。


「『レディ』」


 青年が、準備の合図をした瞬間、青年の体を機械仕掛けが包む。

 軽鎧のようだが、見るからに頑丈そうな真っ黒な装甲。

 肩からは細長い砲台が二対。

 腰には、刀身全てが真っ白な剣が一本。

 薄らと青白い線が刻まれた、義腕は、ジーという音を鳴らし続けている。


「僕に一撃でも与えればカーリの勝ち。どうだい、シンプルだろ?」

「…いきます!」


 白金色のオーラを身に纏い、抜剣するカーリ。

 青年の発する異質なオーラに、疑いを向けながらも、青年に向かっていくカーリ。


「なっ…!?」


 だったが、カーリの足は青年に届く前に止まってしまう。


「僕がこの世界で一番初めの勇者。使えて当然だろ?」


 自分を勇者と名乗った青年が、白金色のオーラを身に纏っていた。


「さぁ始めよう『スタート』」


 仮面越しに笑顔を浮かべた青年は、カーリにとって今まで戦ってき誰よりも、最高神を見た時よりも不純で、白と黒が混ざった得体のしれない何かを放っていた。

0時に更新しようと、時計を気にしながらも、最近気づくと0時を過ぎている。

何故だ。。。

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