episode36 スラム街【中編】
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「こっちだ」
レオ達は、少年に連れられ、スラム街の奥へと歩いていく。
「まさに、表と裏の間だな。」
スラム街へ徐々に進むに連れて、ガラリと周囲が一変する。
レンガ造りの建物も、廃れた廃墟のような建物に変わり、舗装されていた道も、今では砂利道となっている。
少しずつすれ違う人も増えたのだが、少年が言っていた通り、誰もこれも目が死んでいると言うのが正しいように、正気が無く、誰もが下を向いていた。
「ところで、貴様らの頭はどんなやつなんだ?」
「そんなことも知らないで来たのか兄ちゃん達」
「スラム街に興味が無かったからな。」
「よくそれで来れたな…ていうか、兄ちゃん達なにもの?やっぱり帝国のスパイ?」
「今どき俺の顔を知らないなんて、珍しいこともあったもんだな。」
会話をしながら、右へ左へ入り組んだ道を進んでいく少年とレオ達。
徐々に腐敗臭などが入り交じり、鼻をつまみたくなるような臭いが辺りを包む。
(道を覚えさせないように、わざと入り組んだ道を選んで、遠回りしてるな…。)
レオは、普通に会話をしつつも、最低限の仕事をこなす少年に、末恐ろしさを感じつつも、内心でその腕を評価していた。
「ここだぜ」
最終的に辿り着いたのは、平屋や、二階建ての多いスラム街の中で、一際目立つ四階階建ての円柱状の木造建物。
特にそれ以外外見的に何も変わった様子は無いが、全体に隠蔽系の常時発動型の魔術が施されている。
「『今日の晩飯は?』」
「いつも通り、小さな未熟な芋を心細く食べる予定だよ」
「『それは可哀想だ。よければ羊の肉を食べていくか?』」
「遠慮してとくよ、俺だけ食べたら家族が可哀想だ」
「……『入れ』」
少年がドアを数回叩くと、すぐさま中から低い男性の声で返事があり、二人は合言葉を交わしていく。
合言葉の内容に、特に意味があるとは思えないが、取り敢えず合言葉を覚えるレオ。
念には念をが、レオの心情だ。
「ボスは四階にいるぜ、もう全部事情知ってるだろうから、命は狙われないと思うよ」
「そうか。」
少年に案内され、中に入ると、ゴロツキのような連中が一階の広間に屯っていた。
連中は、レオ達を気にする様子も無く、逆に疑いたくなるようなほど、殺気も警戒心も無い騒がしい室内。
階段を上りながら、徐々に無くなる人の気配に、レオは警戒心をさらに高める。
「この部屋の奥にいるよ」
「……。」
(気配が無い…?ニーツ姉さんと同等かそれ以上の、隠密…想定よりも中々骨のありそうなやつがいそうだ。)
「【ギアス】、【魔闘気】。」
レオは、警戒を最大限まで上げ、ギアスを三つ解放し、魔闘気を身に纏う。
レオの体から、黒い靄と、紅色のオーラが溢れ出る。
「こ、この中にいるから」
少年が、ドアを引いて開けると、急に威圧感の増したレオに警戒しつつ、中へと促す。
「ワイヤートラップか。」
レオは、部屋へと一歩踏み出した瞬間、自分の首あたりに一本の糸がピンと張られていることに気づき、腰に携えていた剣を抜剣して断ち切る。
「っ…。」
次の瞬間、レオ目掛けて大量のナイフが部屋の中から放たれる。
レオは、それを後ろのロゼ達に当たらないよう、正確に剣で弾く。
カランカランと音を鳴らして床に落ちるナイフ。
「馬鹿か。」
続いて飛んできたのは、頭の上から降ってくる三本の弓矢。
魔術が付与されており、強化された弓矢はレオを貫こうと風切り音をたてながら降り注ぐ。
だがレオは、それを体を少し動かすだけで避けてみせる。
「【眠れ 狂え 縛れ 呪われし言葉】」
「【解呪の言葉 放て 戻れ 目覚めろ 反魔術】。」
ナイフに続いて、酷く嗄れた声で呟かれた初見の魔術を、レオは瞬時に見極めて反魔術で防ぐ。
プツッという、嫌な小さな音がレオの耳に刺さる。
不意に手を置いたドアの柱に、毒針が仕掛けられており、人差し指の半ばあたりに刺さってしまっていた。
猛毒なのか、毒は瞬時にレオの体に周り、手足が痺れ始める。
「【弾ける光】」
レオは、瞬時に魔術を展開し、発動する。
カーリが入学式の時に使った、目くらまし用の妨害魔術。眩い光が、レオを中心に広がっていく。
「────疾ッ!」
レオは、無詠唱で解毒の魔術を発動させつつ、痺れた体に鞭を入れて部屋の奥へと勢いよく突入する。
辺りは相変わらず光に包まれているが、レオには気配で分かる。部屋の奥で椅子に腰掛け、こちらの手を探るように、嫌らしい攻めをしてきた張本人がそこに。
後で回復させれば問題ないという気持ちを建前に、それよりも一発やり返したい気持ちでいっぱいのレオが、その張本人の右胸を剣で刺した。
はずだった。
「なっ…!?」
光が薄れていく部屋の中で、大きく見開かれたレオの瑠璃色の瞳。
刺した瞬間の手応えはあった。だが、それは柔らかく、殆ど無いにも等しい。
だがレオは今、そこに驚いてはいない。
「骨…?」
「初めましてだね、我らの英雄くん」
レオが見たのは、カタカタと骨を鳴らしながら喋る骸骨だった。
レオの刺したはずの剣は、肋骨の間をすり抜けて、後ろの椅子に突き刺さっていた。
「私は、イティネ=ラートル。気軽にイティネさん、いや、ラートルさんでも可だよ」
優しく微笑む(?)骸骨に、レオは戸惑いを隠せない。
「おや、まだ驚いているのかな?」
そんなレオを見て、骸骨は、どこか嬉しそうに笑う。
「【雷同】。」
骸骨の顔へと、吸い込まれるように放たれたレオの腹いせの拳。
まだレオは、骸骨が行った手荒い歓迎のことをまだ許してはいなかった……。
今日は短めです。
本当にストックが無くなって来たので、超特急で執筆しています。
誤字脱字が不安だ…。




