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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第三章 タキオン
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episode35 スラム街【前編】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。


「早速で悪いんだが、スラム街への潜入する。」

「本当に唐突ですネー」

「問題ナイ」

「僕も問題ないさっ!」


 レオの唐突の願い出に三者三葉の答えを方をする、ベッルス達。


 現在、リベリオン内では、学園の外にある森の開拓を始めている。

 主な目的としては、ここであまり仕事のない女や老人達に仕事を与えるために、畑を作ること。

 少しでも自給自足をして、リベリオンの財形を支えるためだ。

 そしてもう一つの理由としては、これから増える人々の住宅区の建設だ。

 続々と集まる人にリベリオンは、衣食住を提供している。

 今はまだかなり余裕があるが、これからレオの理想とする人数だと、足りなくなるのは目に見えているため、今のうちから開拓を始めているのだ。


「スラム街に行くのは、やはり人手確保のためなんですかー?」

「ああ。リベリオンにいる人数的にはかなり大規模なものだが、戦闘に参加できる人数がそれに比例していない。スラム街では、兵として戦ってくれる者を探す。」


 やはり、今のリベリオンの問題は資金と人手。

 資金の方は、【兵科】の実践を兼ねて、盗賊を襲ったり、魔獣を討伐したりを繰り返し着々と増やしている段階だ。

 人手についても、少しずつではあるが、外部から集まってきている。

 だがこれは、目標の人数に比べたら微々たるもので、手を(こまね)いているだけでは集まらない人数だ。

 なのでレオは、前々から外部任務ということで色々と王国に私怨がありそうな人達が集まる『スラム街』や『植民地』を訪れ、集めようとしていたところに、専属のベッルス達が来たので、これを機に、スラム街の方に早速潜入しようというわけだ。


「今回は、俺、ベッルス、ミラ、ウムブラ。そして、ロゼ、シムルの二名を追加して合計六名で事にあたる。」

「スラム街か~、どんな所なんですかね?」

「興味深イ」

「あまり美しくないところだと僕は記憶しているねっ!」

「集合は明日の明朝。全員、スラム街に相応しい格好で来るように。」


 最後にレオが一言締めくくると、今日はもう解散となる。


「確かに素質はあるが、まとめるのが大変そうなメンバーだな。」


 不安を隠しきれず、顔に出ていたレオは、ついつい言葉にも出してしまう。

 これから増えるであろう憂鬱な事を想像し、今日はもう休もうと決意するレオだった。



「貴様らの美的センスに任せた俺が間違いだったな。」


 レオは、正門の前に集まったメンバーの服装を見て呆れ顔を浮かべる。


「僕の格好のどこが悪いんだいっ?」

「全てだな。」

「ナンセンスッッッッ!!!!」


 レオにダメだしされたベッルスは、頭を抱えて叫びながら、ブリッジをする。


「当たり前だろう。」


 ベッルスの格好は、白を基調とした燕尾服で、胸に当然の如く赤い薔薇を刺し、赤い髪をワックスでオールバックにしている。

 どう見てもスラム街に行くのではなく、これから社交場に行く貴族にしか見えない。


「私は!私は何がダメなんです!?」

「全てだな。」

「ガーン!ミラちゃん超ショック…」


 レオにダメだしされたミラは、膝からそのまま崩れ落ち、顔を手で覆ってしくしくと泣いている。


「当たり前だろう。」


 ミラの格好は、淡い黄色のドレス服を身にまとっており、とても良く似合ってはいるのだが…。


「ベッルスと一緒にダンスパーティーでも行くのか?」

「え、スラム街って煌びやかでヒャッホウな場所じゃないんですか…?」

「……。」


 そもそもが、間違っていたミラ。

 可哀想な生き物を見る目でミラを見て、肩に手を置くレオ。

 そこには、レオが初めて見せたミラへの優しさです。


「その目が痛い!私の心に突き刺さる!!むぎゅっ!?」

「次はワタシ」


 自分の真っ平らな胸を押さえて、痛がる演技をしているミラの顔を押さえつけて、前へと出るウムブラ。


「ドコかオカシイ?」

「全てだな。」

「案外自信アッタ…」


 ショボンと落ち込むウムブラ。

 ガックリと肩を落としている。


「当たり前だろう。」


 本日三度目のこの台詞。

 いい加減疲れてきたレオだったが、ウムブラの改めて可笑しい服装を眺める。


 何故かウムブラは、上に甲冑を着込み、下は学園のスカートというアンバランスな服装をしていた。

 「なぜ甲冑なんだ。」と心の中でツッコミを入れるレオ。

 本人的には、お金が無い人=上下を揃えない。のような法則があるらしく、それをイメージしたのだとか。


「残り二人。貴様、それは最初に着ていた奴隷服だろ。俺が怪しまれるやめろ。そして貴様もだ。それもいつものローブと代わりないだろう。顔を隠せば明らかに不審者だと思われるだろが。」

「あぅ……」

「確かにそうですね…」


 他の三人に比べて、まだマシと言える格好をしたシムルとロゼだったが、レオに一蹴されてしまう。


「あの、レオくん、少しいいかな?」

「なんだ。」

「そのね、すこーし、私的に気になったことがあってね?」


 見送りに来ていたヒカルが申し訳なさそうにして、話に割って入る。

 レオは、鬱陶しそうな顔を浮かべている。


「レオくん、君のその格好はなんだい?」

「何かおかしいか?ド平民の私服を真似たんだが。」

「「「「「「全て」」」」」」」」

「…っ!?」

「いやいやいや、君、なんでそんなに驚いた顔をしているんだい!?」


 自分の服装を全員から否定され、顔を驚愕で染めるレオ。先程まで、カーリの服を真似た完璧な服だろ?と言った風に自信に満ち溢れていた面影はどこにもない。


「まず肩のそれはなんだい?」

「肩パットだな。」

「うん、それは分かるんだけど、なんで肩パットに花がついているんだい?」

「知るか。ド平民がこれを着ていたんだ。」

「カーリくん…」


 カーリのあまりのファッションセンスの無さに、ここにいないカーリに対して哀れみの目を向けるヒカル。

 だが、それは仕方ないことである。レオの着てきた格好は、誰もが想像していなかった奇抜なものだったからだ。


 まず、頭に謎の生物の被り物。顔は魚で、耳は兎、片目がデローンと垂れており、大変グロテスクなものだった。

 そして、ヒカルの指摘した肩パット。衣服の中に入れるはずの肩パットが、外部に取り付けられており、紫色の不気味な花が三輪付けてある。

 他にも、左脇から右横腹にかけて破かれている紳士服。左足は普通の長ズボンにも関わらず、右足の太ももの付け根で切れているジャージズボン。右と左で色が違うサンダル。そして、親指と、薬指だけの部分だけが切り取られている一部分指ぬきグローブ。

 全て、どこで売っているんだと疑問に思いたくなる服装に、全員がツッコミを入れる。


「ふむ。確かにかなり奇抜だが、中々似合っていると思ったんだがな。」

「まぁ、確かに似合ってますけど…」


 そして、それら全てを身につけても似合ってしまうイケメン(レオ)

 この世界中を探しても、このファッションを着こなすことが出来るのはレオだけだろう。


「そう言えば、カーリって昔から美的センスが壊滅的だったんだった…。」

「それを早く言え…。」

「あの子には、一生制服を着てもらおう」


 ロゼが思い出したように呟くと、げんなりとした表情を浮かべるレオと、固く決意をしたヒカル。


 その頃、カーリは…


「はーっくしょん!誰か、俺の噂してるなー」

「はっはっはっ!それだけお前がイケメンだってことだ、カーリ!」


 ビスティアと呑気に修行をしていた。

 自分のファッションセンスを全否定されてるとは少しも思っていないカーリだった。



「ここですか~?」

「普通の街並みとあまり変わらない気がするけどねっ!」

「確かにそうですね」


 レオ、ベッルス、ミラ、ウムブラ、シムル、ロゼの六人がやってきたのは、王都とリベリオンのちょうど間にある【パウペルの街】。

 ここは、どの貴族の所有している土地にも属しておらず、無法者などが集まる【スラム街】。

 秩序なんてものは存在せず、王国も何かと都合のいい事があり、ならず者が野放しになった非常に危険な場所だ。


「確かに普通の街並みと変わらないな。」


 ここでは、検問は存在せず、誰でも街の中に入ることが出来る。

 レオ達も変身魔術で姿を変えながら、中に入り、街並みを眺めていた。

 スラム街は、想像よりも小綺麗な街並みで、都市とは言い難いが、そこそこ大きな街という印象だ。


「おっと兄ちゃん達、ここに何のようだい?」

「なんだ藪から棒に。」

「だって兄ちゃん達、ここの人じゃねぇだろ?王都からの使いにしては、まだ時期じゃないし…敵国のスパイか何か?」


 レオ達に急に話しかけてきたのは、シムルと同じ年齢くらいの少年だった。

 ここが本当にスラム街なのかと疑いたくなるほど、普通の服装に、肉付きのいい体。

 自分達を物珍しそうに見つめる少年は、ここで一番の違和感を発していた。


「ほう、なぜそう言える?」


(十四人か。気配の隠しからして数人、かなりの手練れがいるな。確かにこれなら、年端もいないガキが一人で接触してくるのも頷ける。)


 レオは、周りに潜む気配に気を配りつつ、少年との会話を続ける。


「目だよ、目」


 少年は、自分の目を指差しながら、レオを小馬鹿にしたような顔を浮かべる。


「ここにいる奴は、目が死んでるんだ。あんたら見たいに生きてるって感じはしないんだぜ。それに、服装も頑張って誤魔化してるつもりだろうけど、臭いが無い。もう少し奥に行けば分かるだろうけど、皆酷い臭いしてるんだ。」


 少年は、レオの悪いところを指摘しながら、おちゃらけて笑ってみせる。

 確かに、レオ達は、顔や服を煤や泥で汚したが、臭いまで気が回っていなかった。


「なら、変装する必要は無いってことだな。」

「そうそう、何しても無駄だぜ?」

「そうか。なら、【総員、完全武装準備】。」


 レオの合図で、全員が変身魔術を解除する。

 全員がそれぞれの武器を携え、軽装だが鎧を身に纏う。


「えっ、ちょ、!」

「ここの頭のところまで案内しろ。」

「ま、ま、まってくれ!!」


 少年は必死な様子で、手をブンブンと振ってレオ達に静止するように叫ぶ。


「なーんちゃって」


 だが、少年は一変して、舌を出して生意気な笑顔を見せる。

 レオの一番近くの建物の屋根から短剣を携えた男一人が飛び降り、レオの背中へと持っていた短剣を振り下ろす。


「【雷同】」

「ぶべらぁぁっ!?」


 レオは、背後を一度も見ることなく、短剣を振り下ろす男の顔面に、雷同付きの裏拳を打ち込む。

 男は、変な叫び声と共に、吹き飛び、元の建物の屋根の上で伸びている。


「もう一度言うぞ。頭のところに案内しろ。」


 レオは、全身に威圧的な気を身に纏い、ドスのきいた声で少年の首筋に一瞬で剣を抜剣して突きつける。


「わ、わかった」

「物わかりのいいガキは嫌いじゃない。」

「そんなことで好かれても嬉しく無い…」


 少年は、観念したようにガックリと肩を落とすと、手を三回叩く。

 そうすると、周りにあった気配が消える。


「こっちだよ」


 少年は、踵を返してスラム街の奥へと歩いていく。

 レオは、さくさくとその後ろを付いていく。


「ロゼさん、レオ様ったら大人気ないと思いませんか?」

「まぁ、レオ様だからね…」


 諦めの表情を浮かべてレオの後ろを付いていくシムルとロゼ。


「「「はっ…!?」」」


 そして、レオの戦いぶりを初めて見る三人は、数秒の放心の後、我に帰って慌ててレオたちの後ろを追う。


 大人気ない貴族代表、レオ。

 彼はどんな時でも手は抜かない。


総合ポイントが100を超えました\('ω')/

皆様のおかげです!これからも頑張りますので、タキリベをよろしくお願いします!

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