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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第二章 覚悟
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episode28 ナーブス=ルーナティック【一】

誤字脱字報告、ブックマーク、レビュー、感想等いただけると幸いです。


残酷な描写があります。苦手な方は、注意してください。

「行方不明者だと?」

「ええ。全体で二十七名。行方不明がでたのは、ここ一週間ってところですかね」

「夜逃げとかじゃないのか?」


 早朝。

 シムルの作った卵焼き乗せトーストを、器用ににナイフとフォークを使って食べながら、朝っぱらから訪ねてきたヒカルの話を聞くレオ。

 やはり、レオも、元貴族。食事のマナーは生まれてから仕込まれて来たので、トーストを食べるのも優雅だ。


「最初はそう考えたんだけどね、どうも違うらしい」

「ほう?」


 ここで初めて、レオがヒカルの話に興味を示す。

 コーヒーを少量、胃に流して少し落ち着くと、レオは、目の前に座るヒカルへと視線を移す。


「証拠としては、誘拐された人の年齢が十二歳と、一定であること。そして、家族を残していることですかね」

「確かにそれは妙だな。」


 ヒカルの話を聞き、顎に手を当てて考え込むレオ。


「行方不明では無く、誘拐か。」

「でしょうね」

「行方不明者の性別は?」

「バラバラです。ですが、何方かと言えば女性の方が多いですね」

「愉快犯…いや、何か裏で動いてると考えた方がいいのか?」

「そこが悩み所ですね。」

「だが、既に三十人近くがいなくなったんだ。早急に動くしかないだろう。」


 ヒカルが所有している、学園周りの土地は膨大だ。

 だが、学園や学園街を考えれば、一日で周りきれる程の広さしか無い。死角はあれど、常に人の目があるはずの学園で、それだけの行方不明者が出たのは不可解だ。

 レオの言った通り、早急に手を打たなければならないだろう。


「だが、どう手を打つのが正解か…だな。」

「下手に手を打てば、更なる被害者を産むかも知れません。行方不明者の捜索も含めて、同時進行しないとですね」

「【諜報科】の連中がソコソコの仕上がりになったと報告があったな。」

「実戦を兼ねてという感じかな?」

「あくまで優先は行方不明者の捜索だ。」

「それは分かっていますとも」


 互いの意見を交換しながら、情報を纏めていくレオとヒカル。

 いつも、冗談交じりで交わされる会話も、事が事なので、真剣だ。


「じゃあ私は、【諜報科】の方に行ってきます」

「俺は、【兵科】や【救護科】、学園街の方に少しずつ情報を流しておこう」

「分かりました。また情報が入り次第、ここに来ます」

「ああ。」


 そう言い残し、ついでにレオの残りのコーヒーを一瞬で飲み干したヒカルは、「久しぶりに美味しいコーヒーを飲んだ気がするよ…」と呟きながら、部屋を後にした。



「あ、レオ!」

「なんだ騒がしい。」


 レオが【兵科】へと向かって、学園の中を歩いていた時、慌てた様子のカーリがレオを見つけ、寄ってくる。

 二人は先日のレナの件で仲違いしているが、カーリの切羽詰まった雰囲気に、それどころじゃないと察したレオ。


「なぁ、フドとアイリス見なかったか?」

「フドとアイリス…あぁ、貴様の同じクラスだった奴らか。見てないが、どうかしたかのか?」

「二人にちょっと用事があって、【兵科】の方に行ったんだけど、朝から無断欠席してるらしくて…二人とも真面目だから、絶対にそんなことしないと思うんだけど…」

「まさか…。」


 アイリスとフドの無断欠席。カーリの話を聞いて、レオの脳裏に先ほどヒカルから聞いた行方不明の件が頭を過ぎる。


「何か知ってるのか!?」

「いや、可能性の話だ。だが…」

「カーリくん!レオ総督!」

「マリー?どうしたんだ?」


 【救護科】の建物の方から息を切らしながら走ってくるマリー。

 ロゼの友人で、みんなの母親のような役目をしている女の子だが、何を隠そう『ツンデレオ様を愛する会』の会長をしているほど、レオの熱狂的なファンだ。


「あの、ルルアちゃんが…」

「ルルアがなんだ!」


 マリーの口から出たルルアという言葉に異常に反応したレオ。マリーの肩を掴んで、大きく揺らして次の言葉を急かす。


「ルルアちゃんがどこにもいないんです!いつも、一番最初に来てるのに、寄宿にも、どこにもいないんです!」

「決定的だ。行方不明者じゃなく、誘拐だ。」


 マリーの言葉に、レオは、ギュッと唇を噛み締め、顔が強ばる。

 無理もないだろう。ヒカルとの話が終わった後、いつもの場所でルルアと談笑をしながら、訓練をしていた。

 つい、鐘一つ前。別れてから、【救護科】の訓練場に行くまでのたったその間に、ルルアが攫われた事実にレオは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「チッ…!」

「おい待てよ!」

「マリー、貴様は学園長(アイツ)に、この事を伝えろ!」

「は、はい!」


 舌打ちをしたのと同時に、レオは来た道を引き返すように走りだす。

 カーリもその後ろを追いかける。


「何か…何かあるはずだ。ルルアなら、ただ連れていかれる訳が無い。何か、何か!」

「俺も探す!」


 毎朝ルルアと過ごす校舎裏の大きな木の下。

 顔が付くのではと思えるほど、四つん這いになって隈無く、地面に何か無いかを探すレオ。


「くそっ!残留魔素の反応が無い!」

「何か…何か…」

「目を凝らせ!何かが絶対あるはずだ!」

「レオ!これ!」

「これは…ルルアがいつも付けていたブレスレットの石…。」

「あ、あっちにもある!」

「追うぞ!」


 カーリが見つけたのは、ルルアがいつも、左手首に身につけている青色の石を組み合わせて自作したブレスレットの石。

 別の場所にも落ちているところから、ルルアが自分の居場所を伝えるために、落としたものだと確信したレオは、ブレスレットの石を辿るために走り出す。




「一つ、人質を取りまして~♪」


 薄暗い部屋の中、少年が一人、軽やかなステップを踏みながら、上機嫌に歌う。

 少年の首が梟のように、勢いよく後ろを向く。

 そこには、部屋の壁際に、体を寄せあって少年を畏怖の目で見る、少年同じぐらいの年齢の少年少女達がいた。


「二つ、二人殺しましょ~♪」


 少年は人質の中から、二人の少年の顔を、小さな手で鷲掴みすると、まるで、普通に腕を上げるように二人の少年を持ち上げる。

 次の瞬間、二人の少年の頭部が破裂する。

 飛び散る血液に顔を汚しながら「あはっ」と嬉々とした声をあげる少年。


「三つ、見つかる前に全員殺しちゃだめだめよ~♪」


 少年は、目の前に餌を置かれて待てをされている犬のような、寂しい目を浮かべる。


「四つ、ん…四つ…数え歌って難しいな~。ねぇ、何かある?」

「ひっ!」


 少年が、顔を腕で隠して必死に体を小さくしていた少女の腕を掴んで、顔を上げさせる。


「何かある~?」

「よ、四つ折り…?」

「あ!それいいね、ほいっと」

「え…?」


 怯えながら、必死に少女答えた瞬間、少年は嬉しそうに微笑むと、少女体を四つに折りたたむ。

 まるで紙を潰すように、何も抵抗無く潰れていく少女。

 それを見て、怯えた悲鳴をあげる者や、嘔吐する者。


「五つ、いつまで待たせるのかな~♪」


 何事も無かったかのように、少年はまた数え歌を始める。


「六つ、難しいね、待つのって~♪」


 薄暗い部屋の扉をじっと見つめる少年。

 何かを待つように、何かが来るのを楽しみにしている。


「あと何人残ってるのかな?いーち、にー、さーん」


 すぐに扉を見るのをやめて、生き残っている少年少女達を数える少年。

 飽き性なのか、我慢ができないのか、小さな子供をそのまま成長させたような性格だ。


「七つ、七人くらいならいいよね~♪」


 嬉しそうに笑う少年。


「どんな殺し方にしようかな~、迷うな~」


 狂っている。

 不敵に笑う少年を見て、少年少女達はそう思った。

 この少年は根本的な、人徳的感情を持っていない。純粋に人を殺すことを楽しんでいるのだと。



「八つ、八つ裂きにしちゃおー♪」


 少年は、一人、また一人と、力を込めて、同じぐらいの体格の人間をいとも容易く裂いていく。


「九つ、ここまで来たら全員殺しちゃってもいいよねっ…♪」


 少年の喜びの声が部屋の中でこだまする。

 血が飛び散り、全てが汚れたこの部屋に、少年はたった一人。

 他の、人の形をしたものは、もう冷たくなっていた。


「とうとう来たね、待ってたよ」


 勢いよく開けられる扉。


「来るのが遅いから、待ちきれなかったよ…ねぇ、遊ぼ?」


 少年は、頬についた血を、舌で舐めとると、扉から入ってきたレオとカーリに笑いかける。


「……ナーブス=ルーナティック。」

「久しぶり、レイオス=フィエルダー」



 ───────少年は不気味に笑う。


二部ラストスパート!


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