episode27 ヒロイン達
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「ルルア、少し付き合え。」
「唐突に何かな?デートのお誘いなら、他に誘うべき相手がいるんじゃないかな?」
「違う。学園街の方の物資が尽きそうだからな。その現状把握をしに学園街の方に行くんだ。」
「それは分かったけど、なんで私がいるのかな?」
「気分だ。」
レオの唐突な申し出と、無茶苦茶な理由に困った顔を浮かべるルルア。
だが、直ぐに観念したのか、修行を切り上げてレオに付いていくようだ。
「それと、今回は俺の小間使いをしてる奴も同伴だ。初対面で悪いが、同じリベリオンのメンバーだ、仲良くしてやってくれ。」
「私しか友達がいないレオくんに言われなくても、大丈夫ですよ~だ!」
女子同士は何かと衝突が多いとルルアから最近聞いたレオは、純粋心配したのだが、皮肉まじりにルルアに返されてしまう。
「ばーか。」
「何か言ったか?」
「なーんも、ほら行くんでしょ?」
「ああ。」
☆
「可愛いー!!」
「や、やめてください歩きづらいです…」
校門の前でシムルと落ち合ったレオ達とシムル。
ルルアはシムルを見るなり、抱きつき、今では頭をずっと撫でた状態で学園街へ向かっている。
シムルも口ではこう言ってるが、くすぐったそうに目を細めるが、どこか嬉しそうにしている。
「いいな~レオくん、こんな可愛い子に毎日ご飯作ってもらってるんでしょ?私も、食べてみたーい!」
「ご飯だけじゃありません!洗濯や掃除、家事全般私の仕事です!」
「そういう契約だからな。」
デレデレしきった緩んだ顔でシムルの頭に顎を乗せながらレオを羨ましがるルルア。
シムルもシムルで、得意気にまだ成長していない平らな胸をはっている。
「それでレオ様」
「なんだ?」
「物資って本当に尽きそうなんですか?午前中にもお買い物に行きましたが、そんな様子は何も…」
「事実だ。」
今、学園街では深刻は物資不足にある。
鍛治などの鉄鉱石などは学園内で充分賄えるが、食料が日常的に使う消耗品はそうはいかない。
現在、王国と敵対しているレオのリベリオンでは、元々貯蔵してあった在庫、王国にバレない範囲での輸入、帝国や教国との小さな繋がりでどうにかしていた。
学園内に存在する魔獣の肉や、湖の魚、自然に育った山菜などを使えばいいかもしれなが、それだと量が足りず、消耗品ともなれば、設備と人手の足らない今のリベリオンでは自給自足は不可能と言える。
「王国からこっそり輸入するのもそろそろ限界だろう。俺達のためにと色々と根回ししてくれる商人達の心遣いは嬉しいが、リスクが高すぎる。だから、今このリベリオンに一日あたりに必要な物資を正確に見積もり、帝国や教国から物資を引っ張る必要がある。」
「でもでも、帝国や教国って王国と戦争してるんじゃ?」
「大人の事情と言うやつだ。お互いの国の土地が欲しいし、物資を独占したいがために戦争を行うのが大方な理由だ。だが、それだけでは自国だけで賄えないものが出てくる。そういう物資をお互いに交換という形で行うことで輸出入が行われている。だから、その中にリベリオンに物資を運ぶ積荷が少し増えたところで、そこまでリスクは無いし、むしろ帝国や教国からしてみたら好都合だろうな。」
「そっか、私達が王国の戦力を削いだり、注意を引き付けたらその分動きやすいもんね」
「まぁ、それはお互い様だ。」
ぶらりぶらりと、転々と立ち並ぶ店を見て周りながらレオは書類に素早く何かを書き込んでいく。
「帝国とレオ様が手を組めば、すぐにでも王国なんて倒せそうですけどね」
「無理だろうな。リベリオンの練度が足らないのは言うまでもなくだが、帝国じゃ一生かかっても王国には勝てない。」
「私からしてみたら結構いい国だと思うけどなー?平民の意見も聞いてくれるし」
「それが間違いなんだよ。」
この世界には複数の帝国が存在するが、王国内で言うところの帝国とは、隣国にあたる『コンメルキウム帝国』の事を示す。
コンメルキウム帝国は反王国を掲げており、『差別の無い世界』をモットーとしている。
そのため、平民から一人、選挙で選ばれた者と、貴族の中から話し合いで選ばれた一人の、どちらの立場からでも平等に意見できるようにと二人の君主が立てられている。
帝国とは名ばかりで、どちらかと言えば共和国に近い。
だが、レオの言った通り、帝国が良い国というのは、間違いに近い。
平民の代表と、貴族の代表をたてて平等に見せているが実際はそうでもなく、互いの派閥同士で、互いの汚職などを攻めあってどちらが有利に立つかをずっと争っている状況だ。
他の国が、次へ次へと国を広げようと野望を立てて目指してるのにも関わらず、帝国だけは自国同士で潰しあっている。
もしも、この世界が争いの少ない平和な国ならまだしも、この世界は争いが毎日の食事のように常起こっている。
レオは、自国のことも纏められないようじゃ、帝国が、手を汚しながらも上手く機能している王国に勝てるとは思えなかった。
「あ、可愛い!レオ、寄って行こうよ!」
「ふむ…まぁ、寄るくらいの時間はあるだろう。」
「やった!」
ルルアは、ある雑貨屋の前で立ち止まると、中を見て興味を持ったようだ。
確かに、女性向けのアクセサリーを多く売っており、お洒落を気にする中等部ぐらいの年齢の子なら気になってしまうだろう。
「ねぇねぇ、シムルちゃん、これお揃いで買おうよ!レオも!」
「えっと…でも私お金が…」
ルルアは、内側にイニシャルが刻まれた銀色のリングが付いたネックレスを三つ、手にすると、レオ達に提案する。
シムルは、少し嬉しそうに顔を明るくするも、すぐにお金の事を思い出して、下を向いてしまう。
「俺はいい。貴様らのだけでいいだろう。」
レオは、ルルアからネックレスを二つ、取り上げると、そのまま会計を済ませて、小さな袋を二つルルアとシムルに手渡す。
「いいの?」
「気にするな。これくらい、問題ない。」
「ありがと、レオ!」
「あ、ありがとうございます!大切にします!」
お金を出そうとするルルアを手で静止するレオ。
ルルアも、申し訳無さそうにレオに本当にいいのかと問いかけるも、レオは、それを断る。
ルルアも、素直に貰うことにし、レオにお礼を述べる。
シムルは、深々と腰を折ってレオにお礼をする。大事そうに袋を抱えており、家宝にでもしそうな勢いだ。
「次、行くぞ。」
「はーい!」
ネックレスを身につけたシムルとルルアは嬉しそうに、次の店へ向かうレオの後ろをついて歩く。
「ねぇ、シムルちゃん」
「なんですか?」
「今度、二人で何かお礼しようね」
「はい!」
顔を見合わせて、嬉しそうに笑う二人にレオは気づいていなかった。
☆
「着いたぞ。」
「『フレディの武器屋』?」
「以前、ド平民の武器を買ったことがあってな。それからよく利用している。一応、リベリオンの専属武器屋でもある。おい、いるか?」
我が物顔で店の中にズカズカと入り、中を確認するレオ。
物珍しいものにチラチラと視線を奪われながらも、怖々とレオの後ろについて店の中に入るルルアとシムル。
「おや、総督様じゃありませんか。今日は何のようで?」
店の奥から、厚手の革で出来た鍛治用のツナギに身を包んだミルトが顔を覗かせる。
ところどころが煤で汚れており、流れる汗を首にかけたタオルで拭っている。
「ちょっとした調査だ。進行具合はどうだ?」
「んー…半分くらいと言ったところですかね。親父と、私、それと弟子二人でやっているので、あの量は中々…」
「半分か…。その半分だけでいい、すぐに学園の方に送ってくれ。それと、武器だが近々追加で注文が入りそうだ。準備しておいてくれ。」
「ひぃぃぃぃぃ!!!!」
「他の店に頼んだ方がいいか?」
「い、いえいえ!嬉しい悲鳴ってやつですよ!フレディの武器屋の名にかけて絶対やり遂げて見せますよ!」
「使い方が違う気もするが…まぁいい、頼んだぞ。」
レオは、ミルトと一通り会話を済ますと持っている資料に、他の店と同じく書き込んでいく。
「それにしても総督様は羨ましい」
「どこに羨ましがる要素があるんだ?俺が言うのもなんだが、今の貴様の十倍以上忙しいぞ。」
「そういう意味じゃないですよ。両手に花ってやつですかい?」
「そういう事か。」
レオとミルトが話してる間、店の中を物珍しそうにウロウロと小さな子供のように目を輝かせて見ていたシムルとルルアが自分の事を言われたので、反応する。
「この前も違う女の子といましたし、やっぱりモテるんですかね?」
「さぁな。」
「レオく~ん?違う女の子って何かな?」
「ゆっくり聞かせてください」
「な、なんだ貴様ら、いきなり。」
レオの背後からヌゥと這い寄るルルアとシムル。
背筋が凍るほど冷たい声音にレオも動揺を隠せず、持っていたペンを落としてしまう。
「なんでもありませーん!いこ、シムルちゃん」
「はい!行きましょう!」
拗ねた様子で、手を繋いで店の外へ出ていってしまったルルアとシムルを見てレオは小首をかしげる。
「まだ飯時には早いと思うが…。」
「あの子達も苦労してますね」
「貴様に哀れみの目で見られると腹立つな。」
女心にはとことん疎いレオだった。
☆
「女子の風呂を覗くとは、小僧が健全な男子なのは嬉しいが、あまり褒められることではないぞ?」
「人の風呂に無断に入っておいて、勝手な言動は謹んでもらおうか。」
学園街の調査が終わり、今日はゆっくり風呂に入ろうと思いながら風呂のドアを開けたレオ。
灯りは付いておらず、気配もしなかったのにも関わらず、ドアを開けた先にいたのは全裸で仁王立ちするヴィデレだった。
ルルアやロゼとはそう対して変わらないくらいの年齢なのにも関わらず、ヴィデレの体は息を呑むほど美しいものだった。
キメの細かい肌は一度見たら視線を逸らすことが出来ないほど美しく、体全てが黄金比で出来ている、世界が誇る彫刻品のように触るのも恐ろしいほどだった。
更に強調された胸は…胸…
「おい貴様、変身魔術を使ってるだろう。」
「乙女の裸をまじまじと見つめておいて、私が変身魔術だと?何を根拠にものを言う小僧」
「胸部。」
「自信満々に答えるな小僧、女に恥はかかせるものじゃないぞ?」
そう言ってヴィデレは指を鳴らすと、全身を煙が包み、いつも通りのスットントンな胸に変わる。
「取り敢えず、俺は戻る。」
「待て待て小僧、師匠の背中を流すのも弟子の務めだぞ?」
「そんなのは知らん。」
早々に風呂場を立ち去ろうとするレオだったが、ヴィデレはそれを許さない。
ニヤリと口角を大きく上げると、空中に配置して魔術陣から鎖を射出してレオの体を捕らえる。
「くっ…貴様、この鎖を解け!」
「カカッ、無駄な足掻きは寄せ。素直に認めて一緒に風呂に入るんだな」
「百歩譲って一緒に風呂に入るとしても、絶対に背中は流さないからな。俺は湯船に浸かるだけだ。」
「おっと、湯が急に沸騰したようだー!」
棒読みで白々しく叫ぶヴィデレ。
湯船の中で初級の火属性魔術を使ったことで、湯を急激に温めて沸騰させた。ボコボコと泡を吹いて沸騰する湯にレオは「正気か?」という疑念の目をヴィデレに向ける。
「観念しろ小僧。世の中諦めも必要だぞ?」
「はぁ…少しだけだぞ。」
渋々と言った形だが、観念したレオ。
ヴィデレが早く背中を流せとばかりに、後ろを向いて座るので、その後に座って石鹸を使って泡立てる。
「小僧の野性が少しでも解放されてたら、私に抑情して飢えた獣のように私を押し倒したのだろうな。」
「生憎、今は理性百パーセントだ。」
「ククッ、だがこうやって弟子に背中を流してもらうのも悪くない。」
レオは、丁寧にとは言い難いが、泡立てた手のひらを使って、ヴィデレの小さな背中を洗っていく。
「んっ…もうちょっと優しくせんか…あっ…」
力加減の分からないレオの洗い方に、ヴィデレの口から艶かしい声が漏れる。
だが、レオはそれを一切気にした様子も無く、洗い続ける。
「ふぅ…極楽だな」
「歳だからな。」
「淑女に年齢の事を言うな馬鹿弟子」
「何が淑女だ。淑女なら、裸のまま仁王立ちで立つな…っと終わったぞ。」
憎まれ口を叩きながら、不機嫌そうにレオはつぶやく。
「小僧、修行を一つ追加だ。毎日私の背中を流せ」
「寝言は寝て言え。もしくは永眠してから言え。」
「私はいつでも帰っていいんだぞ?んー?」
「脅しか。」
「いやいや、これも大事な修行なのだよ」
風呂場を出ていこうとするレオを呼び止めるヴィデレ。
よっぽどレオの洗い方が気持ちよかったのか、上機嫌で、顔をトロンと、とろけさせている。
「ちゃんとやらないと、ハイエルフのガキにあることないこと告げ口するぞ」
「……明日もこの時間でいいんだな?」
「もちろん、ずっと待っているぞ。私は出来のいい弟子を持って幸せだ」
「白々しい。」
満足そうに頷くヴィデレを、呆れ半分の半眼で一瞬見たあと、風呂場を後にするレオ。
風呂からレオが出てきた後に、ヴィデレが風呂を出てきたのを見たシムルが、この後レオに小一時間ほど事を問い詰めたのは言うまでもない。
人生初のお色気シーン。
難しい。。。




