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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第二章 覚悟
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episode22 恋バナ

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー等いただけると幸いです。

「たいへんなの!たいへんなの!たいへんなのー!!」

「どうしたのアヤちゃん?」


 アヤと呼ばれた女の子が、教室へ慌てて駆け込んでくる。

 教室内で談笑していたロゼを含めた、アイリス、マリーはアヤの方に視線を向ける。


「たいへんなの!凄く大変なの!」

「うん、それは分かったから本題を話して?」


 慌てて言葉が出てこないアヤに対し、背中に手を置いて、落ち着けさせるマリー。


「レオ様が!名前を!カーリくんと!二人で!!なの!」

「え!?レオ様がカーリくんに自分の名前をプレゼントしたことで二人が結婚!?」

「なんで分かるのよマリー…」

「あはは…」

「アヤちゃんもうちょっと詳しく」

「うん、私がさっき旧学園街から帰ってきた時の話なのだけど────



「家名があるっていいよなー」

「なんだ藪から棒に。」

「こう、語呂がいいって言うか」


 朝の修行が終わり、汗を流すために水浴びに行く途中、たまたま会ったレオとカーリ。

 お互い修行で忙しい身であり、レオはリベリオンの総督としての仕事もあるので、奴隷商の件以来、顔を合わせるのは久しぶりだ。


「こう、レイオス=フィエルダー!って家名があるだけで格好よく思えちゃうんだよ」

「まぁ、もう捨てた名だがな。」

「いいなぁ家名」

「なら貴様がフィエルダーを名乗ればいいだろうが。」

「カーリ=フィエルダーかぁ…うん、悪くないかも」

「冗談に決まっているだろうが。バカが。」


 他愛もない話をしていた二人。

 だが、それを見ていた女子が一人。そう、アヤだ。

 アヤは二人を見つけた瞬間、近くの茂みに潜み、二人の会話を盗み聞きしていて、ぶっ飛んだ妄想が止まらなかった。

 そして、カーリの「悪くないかも」の部分で耐えきれなくなり、教室まで駆け込んだという訳だ。



「それは勘違いじゃ…」

「アイリス、私もう帰ってもいいかな?」


 アヤの話を聞いて呆れ顔のアイリスと、これ以上付き合うと厄介な事になると察したロゼは、身支度を始める程だ。

 なぜなら…


「これは『ツンデレオ様を愛する会』の会長として見過ごせない!」

「私だって『カーリくんを陰ながら応援する団』略しての団長として見過ごせないなの!」


 マリーとアヤはレオとカーリの熱狂的なファンなのであり、二人の事となると人が大きく変わる。

 この元勇者記念魔術学園の中等部の中で、レオとカーリはずば抜けて人気が高く、特にレオに至っては、元高等部の女子にも人気がある。

 『ツンデレオ様を愛する会』は、現在会員約七百名。文体祭の件で他校にまで人気が跳ね上がり、今回の反乱軍の募集で、多くの女生徒がこの反乱軍に参加した。

 ぶっちゃけると、奴隷商から連れてきた人数と変わらない人数が、リベリオンに参加した。ちなみに、男も三十名ほど、この狂気の会に所属している。

 『カーリくんを陰ながら応援する団』は、団員五十名ほどの小規模なものだが、カーリの人懐っこい性格と、守ってあげたくなるような子供っぽさが、中等部に入って意識し始めた母性的なものをくすぐり、時折見せる男らしさにやられた女生徒が集まっている。


「男同士の結婚…それにあの二人は無いわね…」

「何言ってるの!?同性愛、特に男性の同性愛は純文学よ!!」

「そうなの!!」


 カーリとレオの結婚を想像してげんなりとするアイリスに、猛烈な勢いで反論するマリーとアヤ。

 そう、彼女達は腐っているのだ。


 この世界にヒカルが召喚されてから八百年。

 彼自身、文明を壊さないよう配慮しながらも、元の世界の知識を広めている。

 その中に、同性愛…BL的な文化も含まれていた。

 この世界でその文化が定着したのは七百年前…感覚的に言えば『徒然草』と同じぐらいと言える。

 すっかり馴染み深い文化になった同性愛の虜になる女性が多く、マリーとアヤもその中の一人だ。


「おっと、先客がいましたか」

「先に確認しておけ馬鹿が。」


 不意に教室に入って来たのはヒカルとレオ。

 手にいっぱいの書類を抱えているところを見ると、反乱軍に関することで話し合うために教室を使おうとしたところ、運悪くロゼ達がいたわけだ。


「れ、れ、れ、レオ総督!?」

「確か…マリーだったか?一応、ここにいる奴らの名前は全部覚えたつもりだが、まだうろ覚えな部分があってな。」

「あ、あってましゅ!」

「しゅ…?」


 いつもは皆の母親的な存在で、男女からの人気の高いマリーだが、レオの前では顔を真っ赤に赤面させ、右往左往と忙しない只の恋する乙女だった。


「みんなは何の話をしてたんだい?」

「えっーと…恋バナ?」


 本人の前で本当の事を言うわけにもいかず、正常に機能していないマリーとアヤをフォローするために、アイリスが誤魔化す。


「恋バナですか、いいですね」

「学園長先生も、興味あるんですか?」

「もちろん!若者の恋愛は初々しくて、聞いてるだけでニヤニヤできますし、横からちょっかいかけるのも大好きです!」

「ビックリするほどクズだな。」


 椅子に腰掛け、自然とロゼ達と会話する流れになったヒカルとレオ。

 マリーは緊張で下を向き、アヤもオロオロと落ち着きがなく、アイリスはヒカルの恋バナに興味があるのか食い気味だ。もちろん、ロゼは静かに苦笑いだ。


「で、レオくんは好きな子とかいるのかな?」

「なぜ俺に話題を振るんだ。いるわけないだろう。殺すぞ。」


 一瞬、チラッと他に視線を移したが、いつも通りヒカルには厳しいレオ。


「またまた~、気になる子くらいいるんじゃない?」

「いないな。」

「一応、将来は王国を変えて王様になるんだから、本妻とまではいないから、側室候補の一人や二人、確保しておいたらどうなんだい?」

「くだらん。」

「この学園には可愛い女の子も多いし、探してみたら?」

「余計なお世話だ。」


 ニヤニヤしながら、レオに質問攻めをするヒカル。

 その全てを一蹴するレオの表情は、ゲンナリとしていた。


「逆に貴様はどうなんだ。」

「そうですね~…昔は色々とありましたが、八百年も生きると、皆若々しく見えて眩しく写るんですよ」

「そろそろ死時だな。」

「確かに、学園長先生って女慣れしてそうですよね」


 中々失礼な事を言うアイリス。


「そんなことは無いですよ?確かに私は色々な事に精通していますが、いつまで経っても女性の心と深淵(アビス)だけは分かりませんよ」


 アハハと笑いながら戯けた態度のヒカル。上手くはぐらかされたアイリスは少しばかし拗ねた様子だ。


 ちなみに深淵とは、この世界の真ん中にポッカリと空いた底なしの穴に存在するドロドロとした物質のことを言う。

 深淵は、ありとあらゆる生物の負の感情が集まったもので、生命の天敵とされていおり、神の体すらも傷つけるものだ。

 まぁ、深淵は一般的に『神にすらも分からないもの』としてよく使用される言葉で、「恋愛と深淵は男には分からない」という、この世界流のジョークだ。


「あ、そろそろ行かないと」

「どうかしたのか?」

「旧学園街のお店でタイムセールが…」

「まるで、新妻ですね」


 不意に時計を見ながら、呟くロゼ。

 学園が無くなってから、学園街は無くなり、元の店の半分くらいの数にはなったものの、多くの店が残っている。

 戦えないが、他で助けになりたいと新しく入った店もあるよつだ。


「じゃあ私達はこれで…」

「そうですね、私もレオくんとやることがありますから」


 最後に挨拶を済ますと教室を出ていくロゼ達。ちなみに放心状態のマリーはアイリスに襟首を掴まれて連れていかれた。


「ねぇ、レオくん」

「なんだ?」

「さっき私が好きな人がいるのかと聞いた時、なんでロゼくんの方をチラッと見たのかな?」

「…。」

「何も言わずに魔術展開するのやめてくれないかなー!?なんか知らない間に魔闘気まで使ってるしー!?」


 教室の中にヒカルの絶叫が響いたのは言うまでもない。


久しぶりに、日常だけの話になりました。

ヒカルの好きな人、気になりますね~。

ラブコメ要素は少なめにしているのですが、たまにはこういうのがあってもいいかなと思う作者でした!

ここからは、怒涛のバトルラッシュでいきますので、よろしくお願いします!

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