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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第十三章 リベリオン【前編】
202/286

episode201 力関係

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「孤児院に顔を出すのも久しぶりじゃないですか?」

「マツナミは初めてですー!ニーツさんのような立派なお姉さんのように振舞いますね!」

「ミラちゃん的にあれは理想の姉像としては遠いと思います…」


 全体で会議があってから更に一週間。マードック・ドローング間の戦いからは三週間程が経った某日の昼下がり。

 ロゼは半年間の自主訓練や戦争もあり、顔を出せていなかった孤児院に久しぶりに顔を出すべきだとレオの部屋を訪ねた。

 常にレオと共に行動しているため部屋にいたレナ、偶然居合わせたマツナミ、そして久しぶりに姉に顔を見せるという目的でミラの五人で孤児院を目指し、『タキオンストリート』を歩いていた。


「……そうだな。」


 ロゼが振った質問に対して目を逸らしてバツが悪そうに答えるレオ。


「…まさかレオ様、修行中も度々来てたんですか!?」

「……本体は来ていない。」

「レナちゃん?」

「…フィエルダー家では毎週末は必ず休養日にする習慣があり、レオ兄様は週末の前日の夜に家を度々出ていたと記憶しています。ちなみにフィエルダー家でずっと読書をしていたレオ兄様は分身体でした。」

「レオ様…言い訳はありますか?」


 レオとロゼの戦闘においての力関係はレオの方が圧倒的に上だが、私生活における力関係はロゼの方が圧倒的に上だ。

 兄であるレオを絶対としているレナですら、既にロゼには逆らえない様子。ロゼに聞かれた途端、レオの内情を饒舌に語り出す。


「……俺は悪いことはしていない。」

「確かにそうですけど!修行中は修行に専念しようって言ってたのはレオ様じゃないですか!開き直りもどうかと思います!なによりも、孤児院には遊びに行って私のところには来ないってどういうことですか!」

「い、いや、エルフ国は片道でも五時間はかか…すまん。」

「私は謝罪を聞きたいんじゃありません、何故孤児院に度々行く余裕があったのにも関わらず、少しでも会いに来てくれなかったのかを聞いてるんです」

「ロゼの修行を邪魔してはいけないという俺なりの配慮で…。」


 信じられるだろうか。たった一人の少女相手に口ごもる少年が、三万以上のリベリオンのメンバーを束ねる総督であり、あの『軍神』を圧倒したレオ本人だということを。


 そして信じられるだろうか。この二人が付き合ってすらないことを。


「またですか…ミラちゃん、この光景見慣れました」

「痴話喧嘩って奴ですか?」

「夫婦漫才の方がしっくりくると思われます。」

「確かにそうですね~」


 そんな二人のやりとりを後ろで見ているミラ達はその光景をただただ眺めていた。



「あら、ロゼさんに、ミラまで久しぶりですね」

「お姉ちゃん、お久~」

「お久しぶりですミカさん」

「そちらのお嬢さんは?」

「お嬢さん…ふふっ、流石はミラお姉ちゃんのお姉ちゃん。分かってます、マツナミがレディだと!総督殿はすぐにマツナミを子供扱いするので困ったものです!」

「今朝、シムルに貰ったビスケットいるか?」

「食べます!マツナミ、シムルさんのお菓子大好きです!そしてあーんして食べさせてくれる総督殿も好きです!!愛してます!!!」

「茶番ですね…」


 『タキオンストリート』を歩くこと十五分。一際大きな立派な建物が見えてくる。レオがポケットマネーを出してまで作った孤児院だ。

 大きな庭には多くの遊具が設置されている庭、監視がしやすいようになるべく障害物を排除した吹き抜けの内部、建物の内部構造から外に至るまで子供の不自由のない成長を行うためだけに作られたような印象を受ける。


「総督様は一週間ぶりくらいかな?」

「…そうだな。」

「毎週通ってくれてみんな喜んでるよ」

「はぁ……」


 ミカに悪気は無いのだろうが、レオの立場を悪化させていく。

 流石のロゼもミカの手前、怒る訳にもいかず、ため息をつくだけだ。


「総督様、あんまりロゼさんに迷惑かけちゃだめだよ?」

「善処はしてるつもりだ。」

「善処って便利な言葉ですよねレオ様」

「そう…だな…。」


 謎の威圧感を放つロゼに歯切れの悪い言葉で返すレオ。今日のレオは本当に頭が上がらない状態だ。


「ミックはまたレックスのところか?」

「はい、毎日通いつめてます」


 孤児院最年長のミック。時々レオが戦闘について教えていたのだが、どうもレオの戦闘スタイルが合わなかったようで、今では盾の方が合っていると言ってレックスの元で【兵科】に混じって毎日のように修練に勤しんでいる。


「父さまー!」

「マーヤ…随分見ない間に綺麗になったな。」

「えへへ、ほんと?」

「ああ。」

「経った一週間で何言ってんだか…総督は本当に親バカですねー」

「なんとでも言え。マーヤは綺麗で可愛い。」


 室内で遊んでいた子供たちだったが、いち早くレオに気づいたマーヤが一番乗りでレオに抱きつく。

 マーヤの声でレオが来たことが分かった子供たちも続々と続き、レオたちの周りに円ができていた。


「父様あれやってー」

「私も見たいー!」

「またか?本当にこれが好きだな。」

「ミカさん、あれってなんです?」

「総督様が考えた【色火】っていうカラフルな火の玉を使った魔術で色々と曲芸を見せてくれるんですよ」

「へー、総督って本当に器用だよねー…例えば?」

「上空で全色混ぜた火を爆発させたりとかですかね…凄い綺麗ですよ」

「いや、それ敵襲と間違えない?」

「…何回か見周りの人はきました」


 レオは子供たちのお願いに答えて、早速手のひらから赤、青、緑、黄色といった彩り豊かな火の玉を出していく。


「レオ様…?」

「……悪いがお預けだ。ミラ、後は任せた。」

「い、いえっさー」


 ゴゴゴゴゴという力強い音が聞こえてきそうなほどの威圧的なオーラを纏ったロゼがレオの首根っこを持って引きずっていく。

 ミックがいたならば、「またか…」と思うほどのいつも通りの光景だ。


 こうしてリベリオンの一日は過ぎていく。

本日より王国反乱編がスタートします。予定では三章で構成する予定です。

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