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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第十一章 強さを求めて【後編】
182/286

episode181 夢を共に

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

 悪魔が倒され、契約が破棄されたマールム。

 だが、契約が破棄されたのにも関わらず、マールムの姿は悪魔落ちしたまま。

 悪魔への代償の重さと、侵食が戻れないところまで来ており、契約が破棄された今も尚、徐々に体を闇へと落としていく。


「ありえない!あってはならないんだ!正義に悪が負けるなんて!!!!」

「この一撃で決める…。」


 全力を持って自分の全てを叩き込むカーリの一撃。

 【初撃一撃】、【一気刀戦】、【一振入魂】。それら全てはカーリの体力、気力、魔力を激しく消耗する。

 『限界を超えてからが始まり。』そんな言葉をモットーに戦うカーリだが、それを可能にしているのは【勇者の魂(ヴレイブ・アニマス)】。カーリに力を与え続けるこれは、正義を具現化する勇者に相応しい力だ。

 だが当然どれだけ力を与え続けられて肉体的に維持しても精神的な苦痛は避けられない。体は動くが、脳が動くことを拒否する。

 その矛盾の中でカーリは戦っている。

 それがどれだけ苦しく、痛ましいものなのかはカーリにしか分からない。だが、カーリはどれだけ苦しく、痛ましくても倒れることは無い。


 必ず救うと己が決めたから。


「【自迎(じげい)の型…」


 今のマールムを殺すことは簡単だ。

 周りが見えず、取り乱している。攻撃は大振りになり、ただ速く破壊力があるだけの攻撃。

 だが、カーリの目的はマールムを殺す事ではなくマールムを救うこと。


(イメージしろ。マールムを縛る鎖を…)


 火龍の炎は全て(・・)を燃やす。

 比喩ではなく、文字通り全てを。


 カーリの一撃を持ってマールムを縛るしがらみを、そして体に宿された悪魔を燃やす。

 体を一切傷付けることなく完璧に。


(もっと明確に…もっと…もっと……)


 それを達成するにはカーリだけの力では不可能。

 今ここにシキデンはおらず、ヒカルも、レオもいない。

 だがカーリには頼れる新たな相棒がいる。


(頼む【八咫烏】。俺に力を貸してくれ)


 カーリが柄をギュッと握り、思いを乗せて【八咫烏】に問いかける。

 カーリの問いに答えるように紅蓮の炎を強く輝かせる【八咫烏】。


 その燃え盛る炎を見てカーリはシキデンが言っていた言葉を思い出した。


「己の全てを賭けて戦う時、刀はこう言うんだ」



 『【八咫烏(わたし)】を振るえ』



 カーリはこの状況でさえ、口元には笑顔を浮かべる。


(今の俺ならやれる…救うんだ。マールムを)


 カーリは一度【八咫烏】を鞘へ収めると、すぐ様地面を思い切り蹴って駆け出す。

 足の裏から次々と交互に伝わる地面の反発感を感じながら、一歩、また一歩とマールムとの距離を縮める。


「ありえないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 カーリに向かって振るわれる黒く一回り大きくなってしまったマールムの腕を体勢を低くして避けるカーリ。

 間合いは僅か二歩。窮屈な姿勢だが、体の捻りを取り入れたカーリには十分な間隔。

 カーリはマールムの目の前で右足を起点に体を捻り、それをバネのように一気に解き放つ。


「【初撃一撃・紅蓮】」


 鞘から放たれたカーリの一撃。

 紅蓮の炎を纏い、マールムの体を傷つけること無く一刀両断。そして全てを燃やす。


「カーリィィィィィィィ!!!」

「狂わなくたって人は救えるんだ」


 カーリは【八咫烏】を手放すと、最後の最後まで抗うマールムを優しく抱きしめる。


「お前の夢。俺にも半分くれよ。俺の夢も半分やるからさ…一緒に叶えようぜ」

「あっ…」


 カーリのその一言に力が抜けたのか、カーリに体重を預けて気を失うマールム。


「今は…これでいいんだ」


 カーリはマールムを抱きしめたまま空を見上げる。

 昼下がりに来たはずが、空はすっかり赤く染まっている。



 燃え盛る紅蓮のような空をまぶたに焼付け、カーリは今日も夢に向かって一歩踏み出す。

マールム戦決着。あまり引き伸ばしてもと思い、短めです。

あと一話か二話でまとめて十一章は終わりたいと思います。気が変わらなければ。

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