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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第十一章 強さを求めて【後編】
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episode179 火龍の加護

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

『和国を救ってくれ』

「当たり前です…約束します、必ずこの魔術を止めるって」

『礼を言う』

「それで魔術陣はどこですか?」


 マールムは『龍核』である祭壇を壊すと言っていた。

 つまり祭壇のどこかに魔術陣があるはずなのだが、カーリがパッと見たところ魔術陣はどこにも見当たらない。


『上だ』

「上?…これは…」

『【反魔術(レジスト)】は可能か?』

「時間があれば…今すぐは無理です…」


 【火龍】に言われ、上を見上げるカーリ。ロウソクの滲んだ光に照らされた天井にはカーリの腕をめいいっぱい広げても全く足りないほど大きな魔術陣が刻まれていた。

 カーリも思わず言葉を失うほどの複雑な魔術陣。

 仮にもマールムが計画を起こすまで三ヶ月以上かけたものだ。一瞬で反魔術されては立つ瀬がないだろう。


 ニーツもそうだが、常人にとって魔術の構造とは異次元のモノであり、理解しようと思って理解できるものでは無い。

 戦闘に【反魔術(レジスト)】は必要だとレオに言われ、構造を深く理解することは出来ないものの、魔術陣を見れば魔術陣においての魔力の流れや手順、役割などを読み取り、時間をかければ打規模な魔術陣でも【反魔術】を組み立てるくらいくらいの知識を身につけさせられたカーリ。

 レオの教え方の良さと、カーリの根気強さと才能でどうにかなったが、これはリベリオンが出来てからずっと行っていたものであり、数年かけてようやく基礎の基礎といったところだ。


『そうか…だがどうする人の子よ。お主ではあの悪魔付きには勝てぬと思うが』

「気合いでどうにかします」

『ぬぅ…それでどうにかなるとは思えんが…』

「何とかするしか無いので、根性見せます」

『いや、見せられても困るのだが』

「じゃあ戦闘中に努力して強くなります」

『……』


 無計画に無鉄砲。

 カーリのあまりの戦闘バカさ加減に神格化した伝説の属性龍ですら黙ってしまう。


『だが、あまり考えてる時間も無い…』

「そう言えば、なんでアイツらは追ってこないんだ…ずっと気を張ってるのに来る気配が無い…」

『お主が悪魔に飛ばされた瞬間、本来なら入口近くで倒れているところを我の力で洞穴の最奥である祭壇の前まで運んだのだ。あの悪魔付きは消えたお主を探し、不意打ちを警戒しているが、気づかれるのは時間の問題だ』

「そうだったのか…ありがとうございます」

『良い。それよりも、悪魔付きを倒す方法だ。悪魔付きは己の生命力を代償に悪魔を顕現させている。今のお主では一撃でも直撃すれば戦闘不能。悪魔付きの方も命覚悟で刺し違えられるかもしれないといったところだ』

「そしてそれを根性で乗り越える…っと」

『い、いやそんな不確定なものに我も和国を任せる訳にはいかん』


 揺るがないカーリの『気合い』、『根性』、『努力』の戦闘バカ理論に着いていけない火龍。今すぐ戦闘バカ理論を元に突撃しようとするカーリを慌てて止める。


『ただで救ってもらおうなどと恩知らずなことは我としてもしたかない。だから、お主に力を授ける』

「力?」

『そう。火龍の加護をお主に授けよう。刀はお主をここに呼び寄せた時に鞘に戻しておいた。その刀を抜き、我にかざせ』

「いつの間に!えっと…これでいいのか?」


 火龍の言葉に従い、いつの間にか鞘に仕舞われていた【八咫烏】を抜刀する。

 カーリは【八咫烏】を一番下段に置いてある龍の木彫りにかざす。


『汝 我の声を聞け 答えよ』

「え、何を…?」

『今我はその刀と会話している。少し静かにしておれ』

「は、はい」


 微動だにしない木彫りと刀をただただ見つめるカーリ。

 だが数十秒たった頃、【八咫烏】がカタカタと小刻みに震え始める。


「うおっ」

『案ずるな こやつはお主の力になれることを喜んでおる。そして同士に悲しんでいる』

「悲しんでいる?」

『お主は【八咫烏】をもう少し信頼するのだな。これまでの剣とは違うことを理解し、己の技量だけで戦うのではなく、【八咫烏】と心を通わせて感じるのだ』

「心を通わせる…」

『刀は生きておる。泣いて笑って喜怒哀楽があるのだ。もう少し刀を信頼した戦い方をしてやれ』

「分かりました」


 カーリの言葉を聞いて【八咫烏】が更に大きく震え始める。カーリもこれには火龍の言葉を聞かなくても分かる。


(凄く喜んでる…まるで子供みたいだ)


 褒められたり認められたら喜び、頼られなかったり相手にされなかったら悲しむ。

 感情が素直に現れる刀を見てカーリはそんなことを思った。


『今からその刀に我の力の一片を授ける』

「…まぶしっ!」


 火龍の声のトーンが少し沈んだと同時に、【八咫烏】が強烈な光を放つ。


『【ドンカン ドンカン 鍛えろ鋼】』

「魔術…詠唱…?」


 強烈な光で視界が塗りつぶされる中、カーリの耳が魔術詠唱を捉える。


『【槌を振り下ろせ ドンカン ドンカン 我は炉と火を司る火龍なり ドンカン ドンカン 我認める その名は八咫烏 火龍の加護】』


 そして刀から発しられていた強烈な光が弾ける。

 カーリはうっすらと目を開けるとそこには、赤い光沢を放つ【八咫烏】の姿があった。


「熱い…」


 カーリの口から漏れた言葉。

 実際に熱いわけじゃない。だが、燃え盛るようなその赤を見てカーリは思わず口にしてしまった。

 それほどまでに赤い光沢を纏った【八咫烏】は美しく、雄々しく、勇ましかった。


『この刀の力を引き出すのはお主だ。我はここからお主の戦いを見守る。我が加護を与えたのだ、死ぬでないぞ』

「任せてください。気合と根性と努力で使いこなしてやりますよ」

『フッ…それでは元いた場所へとお主を返す。この洞穴の中では刀は不利だからな』

「何から何までありがとうございました」

『礼を言うのはこちらだ。健闘を祈る』

「はい!」


 火龍の木彫りの方を振り向き、火龍に対して元気よく笑顔で返事を返したカーリ。

 だが、正面を見据えた瞬間、カーリの顔は険しいものへと変わる。

 勝てる確率が上がっただけでまだ勝てるとは限らない。


(絶対に阻止してやる…そして、アイツを正義の道へ連れ戻す)


 堅い決意と共にカーリは目を閉じる。


「待ってろ、マールム!!」

次回、カーリ覚醒(予定)!

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