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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第十一章 強さを求めて【後編】
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episode174 尊敬と嫌い

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「マツナギさんはお爺さんが嫌いなんですか?」


 酒場を出て、夜風で頭を冷やしたことで落ち着きを取り戻したマツナギ。

 広場の噴水の(ふち)にマツナギとカーリは座り、話していた。


「刀鍛冶としての祖父は尊敬しています。けど、お爺ちゃんは好き…ではありません」


 一日中、一日も休むことなく【魔玉鋼】と火に向かうオマツの姿を物心ついた時からずっと見ていたマツナギ。

 汗を流し、顔を(すす)で汚し、体中に火傷跡を作り、いつも歯を食いしばって【魔玉鋼】を打つ。普通の人なら格好悪い、頭がおかしい、などと言った言葉が出てくるだろう。

 だがマツナギはそんな祖父の背中に憧れた。

 レオが父であるレクサスに憧れたように。

 カーリがライバルであるレオに憧れたように。

 マツナギにとってオマツは英雄だった。世界を救わなくてもマツナギの中では世界を救った英雄よりもオマツが格好よく見えた。


「応援してくれると思ってたんですけどね…」


 マツナギの叔母が刀鍛冶の途中で事故で死んだことはマツナギも知っている。

 オマツがマツナギの事を考えて言ってくれていることも。

 だが、マツナギはそれでも譲れない。子供の時からの夢である、『祖父を越える刀鍛冶になること』を諦める訳にはいかないから。


「俺にも尊敬してる奴がいるんです」

「どんな人なんですか?」

「同い年なんですけど、貴族の生まれで、頭が良くて、顔も格好良くて、完璧超人です」

「もしかして…リベリオンの?」

「はい、総督をやってるレオです。初めてあった時は俺なんて眼中に無くて、無視されたと思って思い切り喧嘩…ではないんですが、模擬戦をやってボコボコにされました。最初は負けたままで終われないっていう俺の意地だったんです…けど、段々と『レイオス』だけには負けたくないって気持ちになって意識するようになりました」

「ライバルってやつですね」

「一方的ですけどね」


 当時のレオの態度を思い出して懐かしむように苦笑をするカーリ。


「生まれが違う、才能が違う、色んな言い訳を自分にしました。平民が貴族に勝てないのは常識だって…だけど、ある日見たんです」

「…何を?」

「レオが必死に努力をしている姿を。俺も毎日負けないために修行してましたが、レオは俺よりも自分に足らないものを考えたり、修行の質も段違いで、しかも俺の倍の時間やってたんです。勝てるわけないですよね、向こうの方がスタートが早いのに、向こうの方が最善を尽くして全力なんですから…その時、レオに対するライバル視の中に尊敬の念が生まれました」

「凄い人なんですね…」

「努力家で、他人思いで、誰よりも王国の平和を…人の平和を望んでいる。不平等な世界を終わらせるために…貴族とか関係なく俺はレオを尊敬してます。人として」

「なんで私にその話を?」

「憧れの人、尊敬する人に完璧を求めちゃだめってことを言いたかったんですけど…なんか完全にレオを褒めたたえて終わりましたね」


 カーリはマツナギの事を応援している。

 どうにかしてオマツを説得してマツナギに刀鍛冶を続けて欲しい。それはカーリの本音だ。

 だがカーリは、刀鍛冶として完璧であるオマツを尊敬し、祖父であるオマツを嫌っているマツナギに昔の自分を重ねた。

 最初は完璧で人として完成しているレオに憧れたと同時に嫉妬した。だが、カーリは途中から人のために涙を流し、妙なところで意固地になって、ロゼの尻に敷かれている。今はそんなところも含めてレオを改めて尊敬している。

 憧れは完璧では無い。憧れもまた自分と等しく人の子。過ちも犯すし、理不尽な部分だってある。


「もう少しお爺さんとしてオマツさんを見てあげてください。見方を変えれば、俺みたいにもっと尊敬できると思うんです」

「見方を変える…」

「お爺さんが言っていることは、マツナギさんの夢を閉ざす間違ったことだと思います。けど俺には、オマツさんは悪い人には見えませんでした。きっと全部ひっくるめて尊敬できるくらいいい所があると思います」

「祖父であるお爺ちゃんを尊敬する…」

「ごめんなさい、調子に乗って説教みたいな事をしたのに話が全然まとまってなくて…」

「いえ、ありがとうございます。私、お爺ちゃんのこともっと見てみますね」


 膝に手を付き、カーリに頭を下げるマツナギ。先程までの暗い顔は晴れやかな顔へと変わっていた。どうやら自分の中で答えを見つけられたようだ。


「お爺ちゃんともう一回話してきます」

「はい、いってらっしゃい」


 噴水の淵から立ち上がり、マツナギは酒場へと足早に去っていく。



「俺だって本当は刀鍛冶をやらせてやりてぇよ!!」「それ何回も聞いたな」

「可愛い可愛い孫娘が老いぼれを憧れの的として同じ刀鍛冶の道に歩むことを決めたんだ、嬉しくないわけないだろ!」

「それも何回も聞いた」


 マツナギが出ていってから酒場ですっかり出来上がっているオマツの話を聞きながら相槌を打つシキデン。

 おこちょに入った酒をちびちびと飲みながら、面倒くさそうにしながらも、しっかりオマツの話を聞いてあげている。


「俺だってよぉ…本当ならマツナギと一緒に店やりてぇんだよ…一緒に刀作りてぇんだよ」

「いつも言ってるな」

「けどよぉ…マツナギが槌を持つ姿を見ると、どうしてもアイツが過ぎっちまう…」

「よく出来た奴だったな。本来ならワシの息子と結婚させるつもりだったし」

「なにぃ!?絶対やらんぞ!!」

「お前さんが言い出したんだろうが…」


 完全に酒がまわり、酔いつぶれ寸前なのにも関わらず、ジョッキに入った酒を一気飲みするオマツ。本人としては孫娘と口喧嘩したことが相当堪えているようだ。


「お爺ちゃん、その話は本当?」

「あ…?」

「おいおい、これ以上の勘弁はよしてくれよ。ワシも寝たい」


 オマツとシキデンの座るテーブルの前に息を少し切らしたマツナギが現れる。

 シキデンはこれ以上面倒ごとは勘弁だと即即と御手洗に逃げ込む。


「私、お爺ちゃんの事嫌いだから!!」


最近また少し忙しくなり、投稿がギリギリです。誤字が更に目立つ…

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