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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第十一章 強さを求めて【後編】
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episode165 和国

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「ほれ坊主、見えてきたぞ」

「うおー!すげー!おっちゃん、あれなんだよ!あれ!あのあれ!あれあれ!すげーなあれ!まじあれだな!おっちゃんあれってなんて言うんだ?あれ半端ないな!あれ!あれあれあれ!」

「いっぱい話しかけてくれるのはおっちゃん嬉しいけど、残念なことにおっちゃんには『あれ』の二文字伝わってこなかったよ…それよりあんまり身を乗り出すと危ねぇぞ」


 和国(わのくに)

 ヒカルが『異世界にはこういうのがあるのが常識なんですぅー!建国は男のろまんなんですぅー!』という意味の分からない理由で出来たヒカルの出身国の過去の時代を再現した国だ。

 国と言うが、大きさはそこそこ大きい街程度しか無い。国の真ん中に王国の城とはまた一風変わった造りをした城があり、王国や帝国の城は全てが石材で出来ているのに対して、和国の城は木で出来ている。

 他に、城壁や建物も木で出来ており、石材を使った建物はあまり見受けられない。


 カーリはこの和国にレオに与えられた半年間で、ある目的があって馬車を使って足を運んでいた。


「うおっ!」

「だから言っただろうが!大丈夫か!!」

「問題無いぜ」

「何事も無さそうにスピードの出てる馬車と並走するのやめてくれないか、おっちゃんの馬たちにもプライドってもんがあるんだ…」



「そこの綺麗なお姉さん!そうそうあんただよ!今日はこの魚がオススメだよ!」

「お兄ちゃん格好いいね~!割引しとくから買ってかない?」

「お父さん、お父さん!最近娘と上手くいってないんじゃあありませんか?最近流行りのこれを買っていけばイチコロでっせ」

「王都とは全然違うなぁ」


 和国の検問を通り、和国の中へ入るカーリ。

 以前、レオと奴隷商に襲撃をかけた時に見た王都と比べて凄まじい活気にカーリは目まぐるしく辺りを見渡す。

 王都はどちらかと言えば(きら)びやかで優雅なイメージ。平民のカーリからしてみれば、中々に居心地が悪かったが、和国はカーリの性格に合っているようでこの賑やかな雰囲気が妙にしっくりくるカーリ。


「あ、そうだそうだ…こっちが学園長ので、こっちがレオのだな」


 カーリは懐から二枚の書状を取り出すと、しっかり二つあることを確認する。

 今からカーリは和国の王様…正確には『殿様』がいる城へ向かう。レオからの和平に近い形を結びたいため近々挨拶に行くというリベリオン代表としての手紙。そして、カーリの目的のために『殿様』に手伝うとのカーリの面倒を見ろという命令を書いたヒカルの手紙。

 これをどちらかでも無くせば、カーリは大変な目に合うため、一日に何回も書状を持っていることを確認る。


「殿様ってどんな人なんだろうなぁ」



「カカッ!ヒカルの孫弟子と聞いていたが、随分とわけぇな!カーリとか言ったか、今いくつだ!」

「もうすぐ十六です!」

「俺は百四十七だ!俺の方が歳上だな!」


 カーリは殿様を威厳に満ち溢れた寡黙なお爺さんをイメージしていたのだが、そのイメージは見事裏切られた。

 城の最上部。『天守閣』と呼ばれる場所に案内されたカーリは、独特の香りがする畳と呼ばれる場所に直に座り、目の前の殿様を改めて見てみる。

 ヒカルと同じく黒髪。肘掛に大きくもたれかかり、一目で高いと分かる着物を着崩している。顔には上半分だけの龍のお面を被っており、目を直接見ることはできない。

 そしてカーリが一番驚いたのは、殿様の外見だろう。


「まだ女を知らん頃か?どうだ、ワシが教えてやろうか!遊女とか興味あるんだろ?お?」


 発言は完全にセクハラ親父のそれだが、見た目は完全な少年。見た目だけならばカーリの半分ほどの年齢にしか見えない。


「無いと言えば嘘になります!」

「そうかそうか、素直な奴は好きだぜ」


 絵面的に青年が少年に敬語を使っている異様な感じだが、ヒカルはあれでも八百年以上生きているお爺さん。ヴィデレに関しては誰も正確な年齢を把握してないほどだ。

 持ち前の適応能力の高さと、見知った顔が見た目と年齢が噛み合っていないためすぐにそれを受け入れて、殿様と話すカーリ。


「そういや自己紹介が遅れたな。ワシはシキデン=シンチョウ。気軽にシキちゃんとでも呼んでくれや」


 カカッと喉を鳴らして笑うシキデン。

 だがこの時カーリは直感的に理解していた。目の前の見た目と年齢が一致していないシキデンは、レオを手加減してでも勝てるほどの実力の持ち主だと。


「あとワシはな、勘のいい奴も好きなのさ」


 カーリの内心に気づいたのか、読んだのか、シキデンはニカッと笑ってカーリに笑いかける。


「でもなぁ、ワシは逆らう奴は嫌いでな。ヒカルの孫弟子ってことで手荒いことはするつもりはねぇが、あんまり目に余ることすると灸を据えなきゃならねぇ…お前さんはワシに何もさせんでくれよ?」


 ゾワっとカーリの全身を駆け巡る濃厚な殺気。レオよりも荒々しく、明確な死をイメージさせるその殺気にカーリは思わず笑みがこぼれる。


「カカッ…お前さんは生粋の戦闘狂のようだ。まあこれから半年間よろしく頼むぜ」

シキデン=シンチョウは、織田信長を音読みしただけです。名付け親は当然ヒカル。

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