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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第十章 強さを求めて【中編】
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episode160 英雄の実力

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「ふむ、なんとか『六道』を目で捉えることができるようになったようですね」


 人というのは目の前で手をパチンと叩かれると反射的に目を閉じてしまうように、頭で認識してなくても勝手に体が動いてしまうことがある。

 それは眼球も同じで、眼球は動いているものをその人の意識関係なく勝手に追いかける。

 裏を返せば何かアクションを起こした時に眼球が動かないと、その動きを捉えられていないことになる。

 ヒカルは『六道』の速さで打ち込んだ拳にニーツの眼球がピクリと反応したのを確認すると満足そうにうなずく。

 だが、ニーツ本人は納得いっていないようだ。反射的にヒカルの拳を追っているとはいえ、それは目だけ。意識として脳がその拳を見せることは無い。つまり、ニーツはその拳を見れていない。それで満足そうにされても、いまいち納得がいかないのは仕方ないことだろう。


「もう少し続けますが、次は頬以外も狙いますから防いでくださいね」


 既に真っ赤に腫れ上がったニーツの頬を見てヒカルは詫びる様子もなく、時間の許す限り修行を続ける。

 ニーツは、そんなヒカルに優しさを求めるのは諦めたらしく、黙ってそれを受け入れる。


「ちなみに『六道』の次は『覇玉』。一秒の百分の一速さです。終わりはまだまだ先ですね」

「そういうところが嫌いです」


 修行は当然ながら辛い。だが、一つ一つの目標をこなしていくのは気持ち的に楽だ。その先を考えなくていいというのは人の心理的に最も楽なことだから。

 しかし、『六道』という一つの目標を目指しているニーツに、その先を提示する趣味も性格も悪いヒカルにニーツは冷ややかな目を送る。



「結局のところ体術の修行はしないのですね」

「ええ、君は問題ありません。【強化(スカンデレ)】で大体はゴリ押しできますし、速度域さえ上げてしまえば体術というのは自然について行きます。結局のところ体術も剣術も、実践の中で生まれていくものですから」


 体術、剣術。今では王国式騎士剣術を初め、世界各地で様々な流派が存在する。

 一対一を想定したもの、多対一、一対多、あらゆる側面で適した流派があり、どれが一番強いとは甲乙が付け難い。

 ある剣士が『最強の剣術とは全ての無駄を省いたもの』と言ったが、ヒカルはそうは思っていない。

 剣のみなら分からないが、人というのは考える生き物。視線誘導を初め、様々なフェイントが存在するのは考えられるからこそ、そうした手に騙される。ただ合理的に剣を振る機械仕掛けならまだしも、結局は剣を扱うのは人ということだ。

 レオがブローディアと戦った時に思い知った『全力』を尽くすのではなく『最善』を尽くすということ。その時々に合わせて柔軟に対応することが必要となる。


「結局、無駄を省いた剣なんてただ速いだけで阿呆みたいに真っ直ぐなので素人が使った剣の方がまだ動きが読みずらいです」


 普通の剣士ならば無駄を省いた剣を身につければその生涯を誇っていいだろう。

 だが、ニーツか目指すのはその先のレベル。


「剣術や体術っていうのは一番最初にそれを思いついた人がいます。人が思いついたものにどれが正解で不正解なんて付けられませんよ。全てメリットがあってデメリットがあるわけですから」


 だからこそヒカルはニーツに体術を教えることは無い。

 実践を積み重ね、自分に一番合った型を見つけ、実践の中でて数を増やし、フェイントを覚えていく。

 戦の中でならどれだけ不格好で常識から外れていても、勝てばそれがその人にとって一番いいものなのだから、何か一つに固執する必要は無い。ヒカルはそれをニーツに感じ取って欲しいがために、自分の体術を教えず、基礎となる速度域の修行をしている。


「なるほど…」


 ヒカルの話を聞き、納得がいったようにニーツは深くうなづく。

 ニーツは確かに人よりも優れた頭脳を持ち、様々な面で優秀だと言えよう。

 だが、ヒカルは八百年以上生きている。経験の差。実績の差。ニーツは強いが、まだまだヒカルには学ぶべきことが多そうだ。


「あと君は勘違いしていますが、私は魔術がまともに使えませんが、その知識に関してはヴィデレよりも上。体術だけでなく、剣術、槍術など他の武術においても世界最強を自負していますよ」


 体術基い、速度域だけでも圧倒的な差を見せつけられているニーツ。前までならば『当然』の一言で済ませられたが、実際にヒカルの凄さをその身で知ったあとではヒカルがさらりと言ったその事実にニーツは驚きを隠せない。

 ニーツが修行の途中ヒカルに頬を殴られているが、音や速さに比例せずそこそこの痛みで終わっている。あれだけの速さで体を動かしても何一つ平気な顔をして、それだけでなくあの速さで頬を接触しているのにも関わらず威力の加減が絶妙。どれだけ技術があればそんなことができるのはニーツは何度と思っていた。

 そのレベルの技術を体術だけでなく他も兼ね備えている。

 速度域『如き』で英雄を見直していた自分が恥ずかしいと思ってしまうニーツ。


「やはり学園長先生を師匠に選んで正解でした」

「そうですか、それは良かった」


 いつも通り他人を小馬鹿にしたような笑みを口元に浮かべるヒカル。

 そんなヒカルの底知れぬ実力に畏怖の念を抱きながらニーツは、今自分が世界で一番贅沢な修行をしていることを身をもって体感していた。


この世界での真の実力をランキング化すると、一位は最高神のウルティム。二位は上級神のハセガワ、三位は同じく上級神のフォルス、その次に同率四位でヒカルとヴィデレがきます。

レオは今の段階ですと、上から百番目くらいですかね。

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