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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第八章 オムニブス
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episode125 王戦【前編】

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「そっか…レオがやってくれたのか…」

『少年!我々も数人、助太刀しよう!!』


 獣王が、獣人国の戦士達を鼓舞している言葉を聞き、【アシュミルン】の人々が無事だと知ったカーリは、心をホッと撫で下ろす。

 だが、まだ目の前には、カーリが立ち上がるのを待つようにケタケタと笑い続ける【スクッラ】がいる。【獣化】した獣人国の戦士たち数人が、【スクッラ】討伐に、加わろうとカーリに提案する。


「ここは大丈夫です!皆さんは、先に言って少しでも魔獣をここから遠ざけてください!」

『だが…わかった、任せたぞ!!』

「はい、任せられました!!」


 一人で大丈夫と言い張るカーリに、一瞬食い下がる獣人国の戦士だったが、すぐに踵を返して、獣王に続いて低級の魔獣の群れの方へと走っていく。


「【勇者の魂(ブレイヴ・アニマス)】」


 カーリは、剣を握りしめ、再び【勇者の魂】を呼び起こす。

 胸のあたりから輝く白金色の光は、カーリの覚悟の現れ、カーリの力を何倍にも引き上げる。

 怒りから揺らいでいた魂の光は無く、芯の通った揺らぎ無い力強い光。

 【正義を体現する】と言っても、怒りや悲しみに囚われていては、その正義は感情的になり、我儘の根底を支える部分がブレてしまう。

 今のカーリは、復讐心では無く、みんなを守るために剣を握る。みんなを守るという我儘(正義)を体現するために戦う。


「【加速(アッケレラーティオ)】」


 地面を力強く踏み込んで蹴り、加速した体で【スクッラ】に突進するカーリ。


「【自迎(じげい)の型・初撃一撃】」


 【スクッラ】の首筋目掛けて振り下ろされる、カーリの一撃。一撃の破壊力だけで言えば、レオよりも上。骨を断ち切ったとは思えないほど滑らかに刃、【スクッラ】の首を貫通し、切り落とす。


「なっ!?」


 だが、流石はレオが【スクッラ(ジョーカー)】と後から名付けた超級。切り落とした首から、再び首が生える。

 ただ首が生えた訳では無い。首がもう一つ増えて生えてきたのだ。

 顎が外れかけた狼の顔が二つになり、鋭い牙を覗かせる。


「簡単には勝たせてくれないか…」


 斬った瞬間から再生する、高い再生能力に、増殖。下手に攻撃を繰り返せば、厄介な事になると直感的に分かったカーリは、追撃を避けて一度後ろに下がり、剣を構え直す。


「殺るなら一撃。だけど、今の攻撃じゃ一撃で倒せるほどじゃない…」


 カーリは、最近ようやく使うようになった頭をフル活用し、【スクッラ】の動向を見定める。



 現在レオがいるのは、最後方。

 だが、自軍の最後方では無い。敵軍の最後方。

 敵の大将、【レクス】が待ち受ける、最前線だ。


 レオは、獣王を始めたとした獣人国の戦士達の【獣化】、カーリと【スクッラ】の戦い、ヒカルのマサシ=タナベとの接触、他にもヴィデレが圧倒的な力を持つ剣で敵軍を薙ぎ倒し、ベッルス、エドラス、ミラ達が敵軍を押し始めているのを考慮し、今が押し時だと判断したレオ。

 敵軍の大将を一気に叩き、こちら側に傾いた流れを完全に引き込み、一網打尽にしてしまおうという算段だ。


「一番負担のかかる役割だったが、よく耐えてくれた。」

「兄貴の頼みっすから」


 超級の【レクス】を相手に、たった一人でこの戦いが始まってから足止めを続けてきた男がいた。

 全身は血だらけ。剣は既に根元から折れており、レオに向けた笑顔も強がって作られたもので、いつ倒れてもおかしくない状況だ。


「カニス、貴様が今回の戦において一番貢献者だ。貴様の活躍、総督として、義兄弟として誇りに思う。」

「義兄弟…」

「杯は帰ったら交わす。それまで死ぬなよ。」


 数時間の間、超級の足止めという普通ならば断ってもおかしない命令を、カニスは笑顔で快く了承した。

 そして有言実行。見事、レオの命令を全うし、超級の足止めを成功したカニスに、レオは心から感謝をしていた。


 最初は、そのカニスの剣の太刀筋に才能を感じ、家族の安全を引き換えにリベリオンに引き込んだレオ。


 最初は、レオを兄貴と呼び、レオの腹心として行動する時も、家族の事が最優先での行動だったカニス。


 だが、いつしか二人の関係性は変わっていった。


 自分を兄と慕い、常人ではすぐに根を上げるようなレオの修行に食らいついてくる根性、レオ以外の人間には懐かないように見えて、実際は周り良く見て行動できる人の良さに、レオはいつしかカニスという人間を評価すると共に、人間的な部分で尊敬をしていた。


 歳下なのにも関わらず、組織を纏める手腕、公爵を倒すほどのレオの力量に憧れを抱いたカニス。

 自分の才能に驕らず、努力を重ねる姿勢、不器用だが、誰よりも仲間を大切にし、人のために涙を流せる、男の中の男。

 いつしかカニスは、本当にレオのことを『兄』として慕うようになった。


 この世界での義兄弟の杯を交わした二人は、本物の兄弟と等しい関係となる。

 つまりは、血は繋がって無いが、身内。家族になる。

 それは、大きな不利益を背負う可能性もあり、余程の事がない限り、杯を交わす者はいない。

 だが、それをレオから持ち出したということは、カニスにとっての一番の褒美であり、願いでもあった。


「今、使いのものを来させている。一緒に非難しろ。」

「いえ、俺はここで兄貴の戦いを勉強させてもらいます」

「だが……我儘な弟を持ったもんだな。好きにしろ。」


 レオは、【レクス】の動向を横見で見ながら、カニスを近くの木の幹にもたれるように寝かせる。


「特等席で見せてやる。」


 レオは、腰からネーザを抜剣すると、【レクス】の方を振り返る。


「兄と弟の差って奴をな。」


 無詠唱で【解放】を発動するレオ。すぐ様、レオの体を【魔闘気】が包み、魔眼が発動することで戦闘準備が完了する。

 【レクス(キング)】…魔獣の王vs【レオ(タキオン)】…未来の王。

 王同士の戦い、【王戦】が幕を開ける。

FPS苦手ですが、やるのは好きです。

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