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タキオン・リベリオン~歴史に刻まれる王国反乱物語~  作者: いちにょん
王国反乱編 第六章 おかえりなさい
103/286

episode102 総督なら

誤字脱字報告、ブックマーク、感想、レビュー、文章ストーリー評価等いただけると幸いです。

「遠距離…攻撃…!?」

「全員伏せろー!!!」

「間に合えッ…!」


 一度立て直すため、グッと陣を下げたレオ。

 だがゾーウモスは、それを許さない。

 毛を逆立て、まるでハリネズミのように鋭利に尖る無数の体毛。

 ゾーウモスが、数度身震いすると、それが、討伐メンバー目掛けて弾幕の如く飛来する。


「違う!明確に俺達を捕らえている!各自、防御の構…【結界(オービスン)】!」

「【花鏡】!!」


 全長約十メートル程の鋭く尖り、先程までの柔らかで柔軟なイメージとは真逆に、真ん中に芯があるのではと思うほど一直線に伸びた体毛。

 それが、上空に発射され、重力に逆らうどころか、加速して落ちてくる。


 レオは、防御結界を張ることで一本目を防ぐが、慌てて作ったため脆く、二本目に結界を壊されてしまう。

 慌てて後ろに下がったレオ。


「ッ…!?」


 だが、体毛は、空中でレオを追うように急激に動きを変える。


(避けられない!)


 迫り来る体毛を前に、レオは直感的にそう思った。

 将棋やチェスのように、戦闘でも『詰み』というものが存在する。

 絶対に覆す事の出来ない【死】。

 だがレオは、吸血鬼。死ぬ事は無い。

 レオは、瞬間的に目を瞑って身構えることで、来るであろう痛みに耐える備えを作る。


 レオはこの時、ある一人の人物の顔が(まぶた)の裏でチラついた。

 ここに来る前に、自分を送り出してくれた一人の少女。




 ─────いってらっしゃい。




 ─────無事に、笑顔で全員で帰ってきて下さいね。



(そうだ…。これ以上、犠牲者を出すわけにはいかない……。)


 既に体を貫かれ、倒れる者もいる。


 展開した土の壁を突き破られ、立ったまま息絶える者もいる。


 だが、諦めてはならない。


 せめて、まだ生きている者たけでも救う。


 レオの思考が加速していく。

 【文体祭】の時に、【螺旋・雷陽】を限られた時間で作り出したように、数多(あまた)の可能性が、無限に近い試行回数をレオは頭の中で瞬時に繰り返していく。


 物質変化。


(違う。)


 魔眼と深淵の組み合わせ。


(違う。)


 吸血鬼の特性。


(違う。もっと…もっと…。)


 速く。


(そう。この状況で求められるのは速さ。だが、俺のスピードでは…。音よりも速く動かなければ間に合わない…!)


 相手の魔力の利用。


(違う。答えが遠ざかっ…いや…。そうか…そうだ…相手では無く、自分の魔力を使えば…!)


「【(いかずち)化】」


 瞬間、レオの体が弾ける。


「あれ…ここは?」


 目の前に迫っていた体毛。誰もが死を覚悟した瞬間、目の前の景色が入れ替わる。

 自身の眼前にあったはずのゾーウモスの体毛は、遥か先で地面に突き刺さり、今なお、降り続けるゾーウモスの体毛は、ザクザクザクザクッという音と共に地面に何千本と地面に突き刺さる。


「はぁ…はぁ…ぁぐぅ…っ…はや…く……てぁ…てを…。」


 そして、自分達の後ろから聞こえる嗚咽にも近い、声に、誰もが振り返る。


「レオ様!」

「総督!!」

「俺…はぃい…けがに…んの…手当を…。まりぃー…ぁゃ…くッ…。」


 胸を抑え、四つん這いで苦しむレオを見て、怪我の無かった者は、レオに駆け寄るが、レオはそれを手で制止し、怪我人を優先させる。


 レオが行ったのは、以前、ヴィデレに話していた【雷化】。

 雷のように速く動ければ、誰も追いつけないのでは?という考えの元、漠然と考えていたもので、ただの構想に過ぎなかった。

 だがレオは、極限状態に追い込まれた事で、思考が覚醒し、漠然とした【雷化】の魔術を完成までさせた。

 そのヒントとなったのは、同時に考えていた相手の体内の魔力を利用し、魔術を発動するということ。

 レオが行った【雷化】は、翼を通して体の中を巡る自分の魔力を全て雷に変えるという荒業。魔力から火や水そのものに変えるのは属性魔術の中でも基礎中の基礎だが、体内の魔力全てとなると話は別になる。

 翼から随時供給があるとは言え、体内の魔力を全て変えれば、魔力が空の状態と、満たされている状態をとてつもない速さで入れ替えることになる。雷は、毎秒百五十キロで動く。火や水とは訳が違うわけで、レオが全員を救うまでに使った一秒にも満たない間に、レオは、何億を越える空と満の状態を繰り返したことになる。


「…ぅぐッ…はぁ…はぁ……。」


 魔力は常に体を巡っているもので、血液と同じように過度に少なくなれば貧血のように、ふらつきや、目眩、頭痛などが起きる。それが空になれば、体にかかる負担はかなりのもので、それを何億と繰り返したレオの体は一瞬で壊れかけていた。


「【可愛い花達よ 総督を癒しておくれ 花々の抱擁(アンプレクスス)】」


 自身も腕に怪我を負ったベッルスが、レオの元に駆け寄り、手当を施す。

 見渡す限り地平線が続く、元【死の森】に咲く美しい花々。

 その花々は、レオを包むように咲き誇る。


「これは、怪我ではなく、疲労や頭痛などに効く癒しの魔術だッ、今は存分に休んでくれ総督ッ!」


 ベッルスは、【花々の抱擁】を使ったと同時に気を失ったレオの胸に、軽く拳を当てると、こちらに向かって歩みをのっしりと歩みを進めているゾーウモスに向かって走り出す。


「ベッルス!!」

「総督が繋いでくれた命だッ!僕達も次に繋ぐッ!」

「総督ノ右腕デアル『デクストラ』ガ、モウ無理ナンテ言ワ無イヨネ?」


 そして、その後を追ってすぐ様走り出すミラとウムブラ。

 未だ、地面にヘタリ込み、『敗北』に囚われている仲間達に声をかけるウムブラ。


「格好付けてんじゃねぇぞ!!次に繋ぐだァ!?兄貴が起きる前に俺()でケリつけんぞ!!」

「不死身の私まで救わなくても良いものを…フッ、万人を救うのが英雄の証拠というわけですか」


 三人の後を追って怪我をしているのにも関わらず、カニスやイティネをはじめとする『デクストラ』のメンバーが口元に笑みを浮かべながらゾーウモスに向かって走り出す。


 全員が信じている。


 レオが起きるまでの間、自分達がゾーウモスを足止めすれば、レオが…


「「「俺達の総督がなんとかしてくれる!!!」」」


 確証なんて無い。

 だが、いつもピンチを救ってきたのはレオだ。

 この絶望的な状況をひっくり返す何かをレオがしてくれる。

 そう信じているからこそ、『デクストラ』は、笑いながら絶望に立ち向かう。



「命に変えても、時間を稼ぐぞッ!!」




当初、主役だったロゼは七章へ。デクストラは消え、結局六章の主役はレオ。。。

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