episode100 討伐開始
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「全員指定された定位置に付け。小鐘一つ後、開始する。」
作戦当日の夜。
辺りに生物の気配は無く、手入れされていない不気味な雰囲気を感じさせる森を前に、神獣討伐メンバーは、神妙な面持ちで待機していた。
昨日までの軽い、おちゃらけた雰囲気を感じさせないほど、緊張感が張り詰めている。
「…気配を殺せ。動く時は、慎重にだ。」
慎重に。だが、迅速に。
この作戦は、戦いが始まるまで味方を見ながら行うことが出来ない。一秒でも時間に間に合わないものが出て来ると、作戦は失敗する。
「…総督、時間」
「ああ。」
レオの横に控えていたウムブラが、レオに時間を伝える。
「【火波】」
そして、各場所から森に向かって放たれる【火属性】の魔術。
あっという間に、森は火に包まれ、バチバチと音をあげながら燃え盛る。
「ロゼ。」
「はい!【風よ 我が願いを叶えろ 貫け刃 荒れ狂え暴風 激しく荒れ狂う風】」
「【支配】」
そして、作戦通り、ロゼの【激しく荒れ狂う暴風】が上空に向かって放たれる。
それを、レオは瞬時に支配し、森全体を包むように動かす。
「スゴイ…」
それを見たウムブラは、思わず感嘆の声をあげる。
森全体が火に包まれ、螺旋を描き燃え盛る。
先程までのバチバチという小さな音ではなく、ゴォという耳に深く残る音をあげて燃え盛る。
「コレナラ、ゾーウモス事…」
「いや、事前に話したが、ゾーウモスの体毛は火に強い。軽く焦がす程度が限界だろう。」
そして、燃え盛る森の中、レオは次なる行動へと移る。
「【支配】」
再び風を操り、まだ焼け残っている木々を風の刃を作り、全て倒していく。
全ての木々が倒れたことを確認すると、次は、火を支配。上空に集め、視界を確保するための明かりとして利用する。
この火の明かりが、次なる行動の合図。
ロゼを初め、兵科の五人が【土属性】の魔術を使って辺りを凸凹を無くし、平坦にしていく。
「障害物を作れ!!作戦開始…!!!」
そして、整地が完了すれば、身を隠すものは何も無い。
既に気づかれているため、レオは腹から声を出して作戦開始を叫ぶ。
レオの開始の合図を聞き届けたメンバー達。各員が事前に打合せした通りの配置に障害物を作り、レオが物質変化で鉄に変えていく。
今まで、動き一つ見せなかったゾーウモス。
だが、多くの小さな生物が一斉に動き出したことに気がついたのか、閉じられていた瞼が開き、ギロりと眼球が動く。
「目の前にすると、想像していたより遥かにデカいッ!」
「臆することはない!今までコイツを倒すためにどれだけの訓練を重ねたか思い出すんです!」
「ロゼ、ニーツ姉さん、全員の強化を。」
そして、ゾーウモスが右腹の部分の体毛を神殿の支柱のように太く束ね、攻撃の前行動に移る。
「レックス、エドラス!ヘイトを集めろ!攻撃が来るぞ!」
「「了解!」」
「前衛部隊、前へ!!後衛部隊は今のうちに詠唱を始めろ!ここからが本番だ!!」
レオの支持の元、動き出すメンバー達。
それぞれがそれぞれの役割を理解しているため、すぐに行動に移す。
何億という固く、太い体毛を束ねた体毛は、レックスとエドラスの盾めがけて振り下ろされる。
「ぐぅっ…重い!!」
「おや、そんなものですか?」
「フッ…変わらんなエドラス学生は…!!だが、負けるわけにはいかない!!」
それを両手に持つ盾で受け止めるレックスとエドラス。
吹き飛ばされないように盾の底についた棘をしっかり地面に刺し、吹き飛ばされないように踏ん張る。
「前衛部隊!今のうちに走り抜けろ!!」
レックスとエドラスがゾーウモスの意識を自分に向けている間に、ゾーウモスの懐へと走る前衛部隊。
「次の攻撃がくるッ!」
「兄貴!!」
「攻撃はそれほど早くない!衝撃波に気をつけ、余裕を持って避けろ!!」
エドラスとレックスが攻撃を受け止めたが、ゾーウモスの攻撃はこれだけではない。全身の毛を束ね、多くの支柱のような体毛を作り、全方向へ攻撃を繰り出す。
体毛とはいえ、かなりの質量を持っている。重力に乗っ取り、振り下ろされる体毛は、地面を深く抉るほどの威力を備えている。
「体毛は、センサーの役割もしている!!コイツに死角は無い。気をつけろ!!」
ゾーウモスの長い体毛全てが、それぞれの意思を持つかのようにうねうねと動き出し、束ねられた体毛よりは細いが、人間の腕程ある体毛が、近づく前衛部隊に向けて伸びていく。
「チッ…!!細いくせに、なんて硬さだ…!」
レオは、自分めがけて伸びる細い体毛をネーザで切り落としながら、舌打ちをする。
近づいて細い体毛を剣で斬れば、すかさず上から束ねられた体毛が振り下ろされ、大きく距離を取らずにはいられない。
「しまっ…!!」
「【四重魔術陣 直列式 雷同・深淵】」
「ありがとうございます!」
「集中を切らすな!」
上から迫る体毛に気づかずに潰されそうになるドラ。
レオは、それを四重に重ねた直列式の雷同で弾き返す。
他のメンバーもかなり苦戦しているようで、細い体毛を相手をしていて、ドラと同じように上から振り下ろされた束ねた体毛に気づかない状況がチラホラと見受けられる。
その度に、後衛部隊が魔術でフォローしたり、レックスやエドラスが間に入るなどして対処しているが、全部対処できる訳では無い。
(このままでは、誰か潰される。その前に…。)
「全員、前線から離脱!デカいの叩き込むぞ!!ロゼー!!!!」
「【魔女の記憶を呼び覚ませ 時さえ凍る 氷魔の剣 魔を持って魔を殺す 討魔の剣 君臨せし女王の剣】」
レオが新しく開発した【氷属性】の対軍級魔術。レオより、ロゼの方が【氷属性】に相性が良く、ロゼが使うことになったこの魔術は、対巨大魔獣ように開発したものだ。
ゾーウモスと同じぐらいある氷の剣が上空に出現させたロゼ。
「【支配】」
その氷の剣を、レオが支配し、魔力を注ぎ込んで更に大きく、巨大にしていく。
「貫け。」
空気を凍らせながら、勢いよく飛び出した氷の剣は、ゾーウモスの体を貫くかに見えた。
「なっ…!?」
だが、ロゼとレオが放った氷の剣は、ゾーウモスに体毛によって空中で絡め止められてしまう。そのままゾーウモスは、氷の剣を毛で絡め、遂には砕かれてしまう。
キラキラと上空の炎に照らされて落ちていく氷の破片。
その光景には、全員が驚き、目を見張る。
「いや、成功だ。」
だが、ただ一人、ニヤリと口角を上がるのはレオ。
よく見ると、ゾーウモスの毛の一部を凍らせることに成功している。
「これで、相手の動きを制限できた。貴様ら!凍った側を集中して攻撃をする!前衛部隊、回復は済ませたな?行くぞ!!」
まだゾーウモスとの戦いは始まったばかり。
レオの算段では、ゾーウモスを倒すためには、小鐘が四つ以上の時間がかかると予想されている。
「一気に決めなくてもいい。じわじわと削り取ってやる。」
祝100話!!
それと、六章の章タイトルを変更しました




