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勇者少女のチートがすぎます。  作者: フローラルカオル
戦士は言葉数少なく
51/86

サプラーイズ?

フィオルは今日もトレントと戦っていた。

最初の大根切りが嘘のように筋がしっかりした夕方頃、レベルが上がった。攻撃力も一つ上がった。そして、剣の攻撃力の補正がかかると自動的に10上がるのだ。


レベル20

攻撃70、防御14、体力52、素早さ18、魔力42、運182


サーラは

「そろそろ、剣持てる」

そう言ったので、フィオルも頷く。背中の剣をゆっくりと引き抜いていく。剣はシャリっとした金属音を響かせ、それはフィオルの左の耳の近く響く。


サーラは静かに見守った。

きっと剣を持てるようになっただろう。そして、剣技も拙いながらもできるようになっていた。

最初に持っていたクセを治すだけで数日かかるだろうと思っていたのに、スピードや攻撃力の面ではまだまだでも、勘はいいらしい。


フィオルは集中する。


抜刀は150センチの剣で練習した。その比ではない重み。振るうだけで体を持っていかれるような鉄の塊。以前より鞘をすべる感覚が軽い。フィオルは最後、滑り出すスピードを、弧を描くようにその力を使って引き寄せる。


銀の鏡のようの美しい刀身が森の中、木漏れ日を反射させ、ギラリとひらめく。フィオルはその始めて剣として持つその刃と対峙した。

その剣はつい先日、フィオルの手首に信じられない過重をかけたそれではなく、重心を捉え、腕から肩、背中の肩甲骨の辺りまで一つの重さを分散して体の一部のようだ。

少し前まで振り回されていた重さを制する事ができなかったはずなのに、足の爪先さえも剣を支えているのがわかる。

全身が一つの武器になる感覚。フィオルは感嘆をもらし

「持てた……」



とたんに、近くの木がうねっと動く。


サーラが

「左。トレント‼」

そう言って自らの剣に手をかけた時、フィオルはその体を迷う事なく進めた。自ら飛び込んでいく。150センチの剣を扱うように、左から一閃する。


ザンッ


その空気すらも切り裂く一閃はトレントの木の体を薙いで真っ二つ。


フィオルは

「………っ」

今まで、できなかった一刀両断だ。一呼吸後に、ズダーンと、半分になったトレントの丸太のような木が地面に転がった。


サーラは

「上出来」

そう言った。


フィオルは嬉しさより前に、まだ何が起こったかわからない顔してしまった。


サーラは

「すべて仕上がってる。」

良くやったという具合だ。


フィオルはそれを見て

「すごい……使えた」

感動で震え出しそうだ。剣の先が揺れる。


サーラは

「明日試練する?」


その唐突な言葉に、フィオルは

「え?」

そんな気軽に?

明日遊びに行く?ぐらいのノリだ。

心の準備やなんかはまだまだできていないと言うのに。


サーラはひたすらニコニコして

「楽しみ」

そう言った。


フィオルは消え行くトレントを見ながら、明日こうなるのはどちらかといった気がした。なのに、目の前のサーラはまるで飴の包み紙を剥いた時のようなニコニコした顔なのだ。


フィオルは

「……そっか。明日……」


思ったよりずっと早かった。勇者としての使命は魔王を倒す事。ここで足踏みはしていられない。勝てる確証なんてない。それでも飛び込んでいく。自分の勇者としての使命。臆することのない勇気。それが奮い立つのを感じられた。


サーラの手を握り

「ええ。戦いましょう」

そう言ったら、フィオルの顔は少しキリッとしていた。でも目元はトローンとしてるので、キリッとしたのは眉根のあたりが寄っただけだった。


「ふふ」

サーラはもう片方の手で、フィオルの頭なでなでしてしまった。


フィオルは

「なんでですか?」

今、かっこいいシーンだったはずなのに……?


サーラは

「なんとなく」

ポンポンでしめた。











やはり子供として見られてる節があるような気がする。そんなに子供っぽいのかなぁ。フィオルは少しため息をついてしまう。サーラさんから見たら子供なのかな。サーラさん大人だもん。

フィオルはとぼとぼ戻ってきた。



宿に着くと、不思議な事に電気は着いてない。日が暮れて真っ暗だ。この街に来て、みんないないと言うのはちょっと変な気がする。何かあったのだろうか?


フィオルは電灯のスイッチに手をかける。


パチ



そしたら

「おめでとー」

マヤだ。


パーン


ふいにクラッカーが鳴り響く。


アイラが

「違うってば。おめでとーじゃなくて、サプラーイズっていうんじゃないのか?」


メイサは

「それもダサいわ」


あまり時間もなく帰って来たフィオルに、みんな作戦はグダグダだった。最初に言う言葉がすでにバラバラだ。

宿屋の部屋は飾り付けがされている。そして、窓の近くに布のかかった何かがある。


フィオルは

「どうしたの?これ」

まだまだクラッカーのパーンって音はビックリして、ドキドキしている。


マヤが

「そう、サプラーイズ」

パチパチ手を叩いて言う。


メイサはそんなマヤの前に出て、

「元気ないのかと思って景気付けよ。」

そう言った。


アイラは

「そうそう。驚くよー。さーみんなー」


そう言うと、アイラとメイサとマヤは布に手をかける。そして


「じゃーん」


三人の声が揃って、布が外される。

まさか白銀の光沢が現れる。金属のアーマーに、マント。ミニのスカートに見える腰回りの金属部分も防具としての性能しっかりしている。色を合わせたような太ももまであるグローブはロングブーツのよう。まるで勇者のようだ。


フィオルは

「すごーい」

勇者みたい。じゃなかった。勇者だった。


アイラは

「前の装備破れちゃっただろ?」


メイサも、

「これならきっと大丈夫よ。今のステータスなら扱えるんじゃないかしら?」


マヤも

「白銀かっこいいよね。着てみてー」

わいわいやっている。


フィオルは

「うん。すごい。被るのかな?」

サイズを調節できる金具が脇腹にあるのに気づかない。


アイラが

「ほらほら。ここ金具あるだろー?」

サイズは心配だったので装着を手伝う。カシャンカシャン言わせてセットしていく。


メイサは

「ちょっと。乱暴に扱わないで。違うでしょ。こうよ」

防具屋の娘は黙ってられない。キチンとやらないと壊れたり、痛んだりするからだ。勝ったばかりの物に傷とか絶対に許さない。力任せにやってはいけない。


フィオルは

「軽い」

まるでフィオルのための装備みたいで、可憐な女戦士だ。剣もしっかり背負えるし、それ用の金具もバッチリだ。性能の良さは存分に感じる。


メイサは

「ほとんど全財産使ったわ。試練が終わってもしばらくギルド生活と思ったらいいわ」



フィオルは一瞬でハニワのような顔になった。

サプラーイズ??

これ、やばいサプライズだ。



何はともあれ、フィオルは

「みんなありがとう。これで明日戦えるね」

それを聞いて、えっ?って顔をした人、二人。


フィオルはニコッと笑って

「明日サーラと試練で戦う事になっちゃって。心強いわ。ありがとう」

ルンとするフィオルを、メイサとアイラは視線を交わした。



え?やばくない?



やばいわ。



アイラはニコーっとして、

「で、ちょっとこの後美味しいイタリアンで生演奏聞ける店でディナーって流れだったんだけどー、今サラッと言ったよね?試練かどうとか?」


メイサは

「……」

静かにメガネを上げると、反射して、メイサの目元は見えなくなる。無言のこの表情はちょっと怖い。


フィオルは

「うん。この装備で。きっと勝つよ」

まさか強気の発言。


メイサが

「どこにそんな根拠があるの。なんでもっと作戦建てたりするまで待ってもらわなかったの?」

まさかお怒りだ。


フィオルはメイサの怒りももっとも。しかし、その怒りをニコリと柔らかな微笑みで包み込み、

「勝てるよ。見込みがあるの」


それは剣を使えるようになった自信もある。神に言われて、どちらも一撃で勝負が決まると言う話しのせいもある。しかしそれだけではない。


フィオルはいつもと違っていて、少し自信に満ちているようだった。フィオルは

「信じて……」

その不安そうなメイサに腕を伸ばす。そしたらその細い腕がメイサを抱き締める。


優しく抱き締められ、メイサは何も言わない。


フィオルは

「この試練が終わったら、私、もう一回り強くなれる気がするの。そして、試してみたいの。自分を信じてみたいの」

そんな優しい声がメイサの耳元で聞こえる。


春の風のように柔らかく、フィオルの腕が不安そうなメイサの髪を撫でる。少し離れ、フィオルは輝くような笑顔で

「メイサが信じてくれたら、私は強くなれるよ」


メイサは

「信じているわよ。いつだって」

少し不安そうにフィオルの肩に顔を埋めた。



マヤが目を潤ませ

「うらやまひぃ……」

感動してるふりしている。


アイラはやれやれと言った顔だ。


メイサがやっと離れた時、ほほが赤かった。


マヤが

「さぁ、次は私。あたし、お姫様抱っこがいい」

指定してきた。


フィオルは力も上がったので、

「こう?」

力を入れた割りにふわっとマヤの体は浮き上がる。


マヤは

「やー。こわーい」

きゃっきゃ言いながら笑ってる。フィオルがくるくる回ると、マントがフワリと広がった。


アイラがやれやれって顔で

「もー。店の予約の時間来ちゃう。走らないと間に合わないよー。生演奏ももうすぐだよ。遊んでないで行こー」

あたし今朝お尻ムギュッてされたからいいけどーなんて顔してたら


そしたらフィオルはマヤをおろし、

「うん。じゃあ行こっ」

アイラの手を軽くにぎった。そして、走り出した。




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