さざ波のよう
フィオルは目をつぶると眠りに落ちていく。
「はやっ」
まだ歯を磨いていたアイラはビックリする。
星の流れる音がする。神の夢を見る時はいつもそう。儚いまでの星の流れる音……
フィオルは目を開ける。そこはピンクの雲が一面に広がる世界。星の流れる紫の空、黄色く輝く星が流れて行く。
『久しぶりだね』
そんな声がした。フィオルは笑顔で振り替える。
「神‼」
その優しい面差しをした青年のまだ未熟な声変わりすらしてない声。少年は
『第4の試練を前に、みんなと心を一つにしたんだね』
そう言った。
フィオルは
「そう。私達はみんな進む事を選んだの。みんなも一緒だから大丈夫。だから当たって砕けるのも、全力で戦ったら悔いは残らないわ」
その瞳に、少し頼もしい光を宿す。
ちょっと前まできゃーきゃー言ってたはずなのに、一つ一つを力に変えて、成長しようとしてる。
神は、
『そうか。なら止めはしないよ。君の信じた道を行ってほしい』
自らの運命を選んだのだ。この勇者だけでなく、それぞれが。サーラもそうだ。戦士として戦いたいと日々思っている事を神である少年は知っている。
儚い少女の姿で戦う戦士達。今だかつてない、女の子ばかりで作られたパーティーは見た事がない。勇者に女の子が選ばれる事も始めてだった。それはあまり神として日の浅かった自分が招いた事だったが、選んだ事に間違いはなかったと思う。
勇者としての正義をこの目に感じられたから。
フィオルは
「けど、まだ試練が残ってるから、それからかな。もう少し勇者らしく胸を張れるのは」
ちょっと苦笑いしていた。
神は
『もう充分だよ。自信を持ってごらん。レベルが上がったら剣が持てる。一撃でも当たれば勝てるだろう。』
そう言った。
攻撃の補正がかかり、一気に10上がる。その攻撃力なら戦闘はもっと有利になるだろう。
フィオルは
「一撃……」
神は
『そう。だけど、それはフィオルも同じ。』
防御が弱いからだ。けど、神が言えるのもここまでだろう。ここから先は勇者である彼女が考えなくてはならない。スピードの対決となる。
スピードの早いサーラの動きをどう制し戦うか。それができずして先に進める事はない。神もまた信じる事にした。
フィオルは
「そっか。戦いはすぐそこだね。きっと」
そう言った。
神はどんな結末になっても受け入れようと思う。
そんな少年に、
「ほら、元気ないぞ?かーみ?」
フィオルはほっぺたをつついた。
神は笑ってしまう。自分はどんな顔してただろう。
『最近忙しくて。アシスタントがグルメ旅行に行ってしまったから』
思わず愚痴がこぼれる。
フィオルは
「グルメ旅行かー。いいなー」
神のアシスタントがいて、そして、グルメ旅行なる物に行くのも違和感をおぼえる。いや、それより……
すると、フィオルの眉がキューと寄っていく。
神が気づく。
『どうしたの?』
フィオルは
「ううん。」
グルメ旅行なんかに行くなんて、女の子のような気がする。フィオルのトローンとした目からはその、眉の寄った表情がどういった感情から来るのか創造できない。
『眉のここ、どうしたの?』
少年は言う。
フィオルは
「お土産にお菓子とか買ってくるのかな。その人」
等と言う。
神はチョコレート買ってこよっかなどと言った40才のオッサンを思い浮かべ
『そんな事言ってたね』
フィオルはガーンとした顔をした。
女の子だ。神のアシスタントは女の子で、グルメ旅行とか行っちゃうアクティブな子だ。これは間違いない。
しょんぼりしたフィオル。
神は
『……どうしたのだろう?フィオル』
聞いてみたけれど
フィオルは
「ううん。私もお菓子持ってこれたら良かったなって……」
そう言う事でもない。
神の一番近くにいるのが女の子って知ったのはなぜかショックだったのだ。
神は
『優しいね。その気持ちだけで、お菓子と同じくらい嬉しいよ』
優しく微笑んだ。
フィオルは少し意味深な瞳でそれを見て
「神こそ優しいよ……」
その優しさはアシスタントの女の子にも向いているのだろうか。
優しい微笑みも。
そう思うと、フィオルの心は今までなかったさざ波のように揺れるのだった。
女の子……かわいいのかな。
フィオルは少しため息をつく。
神のそばにいる優秀でグルメとかそんなのに敏感な女の子……そっか。うーん。




