神は元神を締め上げる
いつも穏やかな神、ジークがいきり立った様子でやってきたので、そっと元神はパソコンを閉じようとする。まさか仕事してるふりがばれて、ゲームばっかりしてるのかばれたか。
ジークは元神をとっちめようと思った。弱いはずのフィオルが攻撃力がすごく上がってた事だ。こんな事ができるとしたら、やり方も知らないジークにはとても無理だ。他にできる可能性があるとしたら元神ぐらいだった。
『一体何をしたのか?』
口調こそ冷静なものの、ジークは胸ぐら掴んで引き上げていた。
ジークの目には怒りがある。
今は神であるジークに何も言わずに何か勝手な動きをする事は許されない。それが良い事であっても、悪い事であってもだ。もし何かしたのであればだが、もはやこの元神が、何かしたとしか考えられない。
元神は
『な………なんでわかった。仕事サボってパソコンでソリティアして遊んでる事がばれるなんて……』
元神の仕事道具だと言って何やら置いてあった機械にはトランプが映し出されている。
ジークは
『なに⁉』
より、腹が立った。
元神は
『それじゃないとしたら……またグルメを巡るツアーに申し込もうとした事だろうか』
ジークは言葉を失った。なぜそんなにどこか遊ぶ事ばかり考えているのか。
ジークは
『真面目にやって下さい。あなたは神だった男です。その自覚はまだあるでしょう?』
元神は
『いや……だって昨日、神は自分だってジークが……俺はダメなんだろ……』
元神は肩を落とした。
そう、昨日のやり取りで、仕事に行き詰まり、自分の無力さを呪っていた元神のハートに一撃食らわせたらしい。しかし、神と言う役職をになった者がそういう事では困る。たとえ役職を辞退したとしてもだ。
ジークは
『あなたはもっと立派だったはずです。仕事にも意欲的に取り組んでいた。私が信じてきたあなたは何だったと言うのか。そんな人ではなかったはずだ』
憤った。そこに尊敬してた仕事に熱心な男の姿は微塵も感じなかったからだ。
元神はいつも自信に満ちて仕事にも誇りを持っていた。そのはずなのに、ここにいるのはその辺にいる腑抜けたおっさんだ。この人が神の仕事をしてたなんて信じられない。
元神は
『だってジーク……お前は1発で選んだ勇者がもう試練を3つもクリアしてるじゃないか。すごいよお前……それに比べて俺は……』
元神はしょんぼりとした枯れ葉のような風情を見せる。全力で頑張ったがゆえに男は自信も失っている。仕事に自信を無くした男は遊ぶのに全力を出そうとしてる。
ジークは
『何を言うのですか。あなたが選んだ神の戦士達……あの方々は立派な人達です。今はまだ私の選んだ勇者だけが輝いて見えるかもしれません。しかし、勇者は周りの支えがあってこそ。あなたのしてきた仕事が確かな物だとわかるはずです。現に彼女一人で勝ち上がって来た訳ではないでしょう。少し前のあなたならそこまで見えたはず』
フィオルが勝ち続けてきたのは決して彼女一人の力ではない。仲間にした戦士達が彼女に力を貸し、それは彼女が1人、試練と対峙した時もだ。ある時は供に積み上げ、ある時は見えない砥石となって鍛える。その力のない少女に力を与えたのは彼女達なのだ。
今の自分の仕事を責める男にはわかるはずもない。けど、ジークはわかってほしかった。神の仕事を、全力でやってきた元神には。
元神は
『それでもダメだー。グルメツアー行かせてくれ』
ダメだった。もう遊ぶ事に夢中だ。
ジークは
『なら、勇者のパラメーター変化……それついて言っていけ。』
かなり切れて、再び襟首掴んで引き上げた。
元神は
『ん?なんだと?なんの話だ』
何も知らないらしい。
ジークは
『パラメーターが変化した。攻撃力が10倍、体力が2倍。これが、何なのかわかりませんか?』
引き出せる情報は全部だしてから、せめて行け。ジークは元神をツアーに行かせてあげる気でいた。
元神は
『あー。武器だな。気付いてなかったのか?あの子ちゃんと装備した事なかったもんな。それできちんと補正かかったんだろ?』
ジークはビックリして、手から力が抜けた。
元神は
『まさか破格の性能つけたよな。その変わりに他のメンバーの武器がクソだろ。まぁ、バランス的あの子のステータス考えたら少しは補正入れてもいいけと、それにしても10倍はやばいだろ。』
ジークは自分でそんな事をしたなんて知らなかった。神の武器を作る時、そんな補正をかけられる事も、一言だって教えてくれなかった上に、でたらめなマニュアルにも書いてなかった。元神はわかった上でシレっと黙っていたのだ。
それなら、言ってくれればいいのに。
ジークは
『もう‼どこへでも行って下さい。知りません』
全然サポートしてくれない。サポートするって言ってたのに、困った後で教えてくれる。大切な事だ。歴代の神は戦士達にも平等に力を分け与えれるように分割して配分するのだ。
なのにまさか、武器を精製する上でこんな事がおこるなんて……知らずとは言え、勝手な物を作ってしまった。
あの最初に出会った時、怖がりなフィオルのために少し力を込めた。そう……あの時、ジークは動揺していた。フィオルの太ももを見たからだ。ジークはそう言う物に対しての耐性は持ち合わせていなかった。
ベッドでおびえてフトンかぶった少女のうかつにもめくり上がったネグリジェから見える足なんて、本人がそんな気なかったがゆえに恥ずかしい物だった。
ゆえに力を込めすぎた結果が二メートルの大きすぎる剣だ。
なんて事だ。全部自分のせいだ。そのせいでその他の武器があまりにも性能の弱い物になるなんて事まで目がいかなかった。
ジークは
『なんて事だ……』
あまりの衝撃にそこの椅子に座り込むのだった。
元神は
『あ……知らなかったんだ。ごめ。教えてなかったか』
最近特にちゃらんぽらんだ。
ジークは
『勇者は魔王に勝てるだろうか?』
聞くと元神は
『あーどうだろうな。防御がクソだからなんとも……五分五分かな』
元神からの意見だった。なんとも心もとない。けど、そんな意見でもジークにはありがたかった。この元神がなんの確証もなくフィオルを魔王の元へ行かそうと思ってる訳じゃない事もわかった。
魔王に勝てる確率は前より上がった。
それだけでも、神として日の浅いジークの心を落ち着かせる物にはなった。
元神は
『まぁ、今の所お前はパーフェクトだよ。俺はグルメを食べる。お前にはなんか甘い物買ってきてやろうか?たとえばチョコレートにするか。イライラしてるだろ』
ジークは
『お気遣いなく』
もはや、それにイラっとしたようだ。
元神はいい顔して旅だって行った。もはや、いても止めもしない。帰ってきてもあんまり仕事してないし……なので、神は結局一人でなんとか仕事片付けるのだった。




