出会い
スライムを潰すことに、慣れ、少しプチンッて感覚がくせになりそうなフィオル。街ももうすぐ。胸も高鳴って、早くフトンで眠りたい。疲れた体を引きずって、またプチン。ああ、やめられない、止まらない。
次なる街が見えてきた。
その長い桜色の髪を揺らしながら、剣を引きずることにもなれてきたフィオル。
レベルも3つくらい上がったせいか、フィオルの体力や防御力は上昇した。フィオルはご機嫌だ。どこにいても神がついていて、見てくれるのだ。村の人達も、勇者になったらきっと胸を張って帰れる日が来るのだろう。
わずかな別れは、再会を予感させる嬉しい兆しにかわった。それは、神との別れがそうさせたのかもしれない。
何はともあれ、フィオルは、数メートル先に現れたスライムに狙いをさだめて、サクッと轢きながら
ぷっちん。
「おこずかい。足りるかな…」
そんな不安を口にした。
街では、勇者が現れるのを今か今かと待ち続けて、昨日から、そろそろ、待つのが疲れた所だ。だから、うら若い15才少女が勇者だとは誰も気づかなかなったのだ。
歓迎の人達のそばを抜け、フィオルもまた、疲れたように歩き、そばを通ったときに、数名の男女がいい香りと、その儚いくらいの佇まいに見惚れた。
プルンとしたローズの唇に、ルビーのような潤んだ瞳。少し考え事をしてるかのように、うつむき加減で歩く。
押せば倒れてしまいそうな体に、プルンと弾けそうな柔らかさと、曲線。今は鎧で少し隠れてしまっていても、フィオルの女の子らしさは隠せない。
そんな中、宿屋を探していたら、
ドンッッ
肩をぶつけて、フィオルは突き飛ばされてしまった。
転がる。転がる。
そして、壁にゴン。
ヘッドショットも決まってクリティカルダメージを叩き出した。
「うきゅー」
フィオルは気絶した。
ふんわりと、柔らかい臭いが漂ってきた。
トントントン…
何かを切る音。懐かしい。少しの間、離れた母を思いだすなんて。
「お母さん…」
フィオルがそう言うと、
「はぁ?誰が誰の?」
台所の所で、金髪をひとつに束ねて、高々とポニーテールした女の子が見えた。部屋着のショートパンツからは健康的な足がのぞき、それはフィオルの物よりも太いもののキュッとしまって脚線美といってもいいのではないか。
「おいしそー」
フィオルは夢半分で、目の前に贅沢な骨付き肉でも出されたような気持ちだった。それを、脚線美の少女は
「ほらほら、起きろー。ったく、これだからお嬢さんはっ」
嫌味たっぷりでいうのだった。
フィオルは軽く伸びをして、たわわな胸をつきだした仕草に自分では気づかないまましていた。
それを見た脚線美の少女は
「あんたとは、仲良くなれない。絶対‼」
そう言ったのだった。少女のTシャツは、小山にスッキリだったからだ。
フィオルはいつの間にか着替えたティーシャツとショートパンツに気づいて、ベットから起き上がり、
「初めまして。私、フィオル、フレイムフォールと言います。」
立ち上がって背を伸ばしたフィオルのティーシャツはパツンとしていて、それなのに、チラリと見えるウエストはちゃんと細い。
「う…」
脚線美の女の子は負けたと思った。そして、それでも負けたと認めたくないがゆえに、堂々と名乗るのだ。
「アイラ、シャイニング」
金髪の少女はそう名乗った。
フィオルは
「素敵。光ね。とても健康的な光。」
そう言って笑う上品な口元には嫌味の欠片もなかった。
アイラは
「どこが。あたしの事、なにも知らないくせに」
ふてくされたようにいったので、フィオルは手を伸ばしながら、
「とてもキレイね。あなたの髪。こんなにキレイな髪、初めて見たわ」
そう言った。近付いてくるフィオルに、いつもだったら、さわるんじゃないって突っぱねたアイラも、なぜかフィオルにはそれが出来なかった。
フィオルが心から言ってくれたのがわかったからだ。だから、アイラは
「あ…ありがとよ」
そう言うのだった。フィオルは
「ふふ。サラサラ」
一時、さわり心地のいい初めて見る金色の髪を堪能するのだった。
それをさせていたアイラは
「ほら、嬢ちゃん飯は?腹へってんだろ?」
少し困った顔だ。フィオルは
「あっ、そうでした。私、宿探してて…」
うっかりして、こんな人様のうちに転がり込んでいるなんて…
と、このまま思い出して見たものの、色々思い出せないのだ。
なんで、ここで寝てたっけ?
フィオルが考え始めた時、アイラがお碗を二つもって、そこの木のテーブルにコトンと置いた。
「食べる?」
アイラは親子丼を差し出した。フィオルはニコッと笑って、
「はいっ」
久しぶりの食事に胸踊らせるのだった。
親子丼のようなシンプルな物が大好きなフィオルを餌付けする事に大成功したアイラ。アイラは言い出せない。その鳥みたいの、チクワだから。なんて…