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勇者少女のチートがすぎます。  作者: フローラルカオル
プロローグ
2/86

また旅立ちの時

夢なら覚めて…頭をかかえたフィオル。勇者の剣を見て、両親はまた、旅立ちを進めた。

「フィオルー頑張ってー!!」村の人達も二度目の声援。また泣いてしまうフィオル。そして、今日、二度目の旅立ちの時。

「せーの」


ズパン


思い切り降り下ろした剣が地面に向かって落ちる。よろめいた少女、フィオルは手をはなしてしまい

「あっ…」

吐息ととも横にたおれこんだ。


プヨンっ


揺れたのは、少女の育ちきった胸ではない。その剣の下で、スライムが汁となってじわじわと染み込んでいく。


「うう……汁……」

フィオルは気味の悪いものを見た……とばかりに後ずさった。フィオルは、昨日まで、毛虫も殺せない女の子だった。

かわいそう……

そんな感想をもらす女の子だったのだ。



優しい心で、モテない男の子にも優しかったフィオルは、村中の男の子から大切にされていた。ストーカーした男は村中の男にボコボコにされて、フィオルの平和は保たれるぐらいだった。



女子もフィオルには優しかった。かわいいのに、少し抜けていて、完璧ではなく、誰かの手を借りて、「いつも、助けてくれるんだね。ありがとう…」と、はにかみながら彼女に言われると母性をやたらくすぐられるのか、ほっておけないのだ。回りの女の子達は助けた事を心地よく思うのだ。





そんなフィオルが、今、スライムと対峙していた。


かわいそう…

剣重い…

でもスライム、怖い…


そんなフィオルに、スライムは触手を伸ばし、転ばせてから、やらしく絡もうとしたものだから、フィオルは誰もいない森の中で、やっと戦おうかと思ったのだ。


「こんなんで大丈夫なのかな…」

そう呟いたとたん


『魔王を倒せばいいんですよ』

声が聞こえた。


フィオルは命一杯ほっぺたを膨らまし、

「神、見てたの?」


スライムに転ばされて困っていたのに見て見ぬふり。もっと早く話しかけてくれればいいのに。

さびしかった。

そうやっていても、全然怒って見えないのは、元来の目元のトローンとしてるせいだろう。



『そろそろ、私は助言をやめなくてはなりません。本来、勇者に剣を与えるまでが私の任務。このままの道はあってます。進みなさい』


昨日はHP1で、ラストに、神が精神攻撃で決めてきたのだ。フィオルのご機嫌は斜めのようだ。


しかし、

「もう会えなくなっちゃうの…」

ふいに、フィオルはそう言って目を伏せた。そこにはもう、さっきまでの膨れっ面の少女はいなかった。


『仕方ないことです』


フィオルは

「このまま…私一人…?」


フィオルは家族に愛され、友達に愛されて育ってきた。そして、一人など、考えられぬくらい、フィオルもまた、愛をくれる人達を愛していたのだ。なのに、それは奪われてしまった。勇者という使命によって…

それでも、フィオルは今日、スライムを倒したのだ。勇者としての一歩を歩き始めた。そのフィオルにできた新しいつながりが切れてしまう。


『そうですね。もう少しいましょう』


あっさりと意見がくつがえった。フィオルの嬉しそうな顔。さっきまで、別れのさびしさを滲ませていた瞳がパアァと華やぐ。


「一緒にいてくれるの?ありがとう」

フィオルは嬉しそうだった。


『しかし、私は男だ。それでもいいのか?』


フィオルは傷付いた顔をした。声からして、女だと思っていた神は男だった。


「あーん。話がちがうー」

フィオルは泣きながら剣を引きずって走り出した。



(神が男ならあの寝室に現れた時、ちょっと太もも見られた)


女だと思っていたからスルーしてた問題が一気に浮上して、フィオルは瞳が潤んでほほが赤くなった。そして、その後、ぷくーっと膨れた。

南の町に向けて進んでいたフィオルだったが、時々スライムにも出くわす。フィオルは、剣をひきずったまま、ブチュンとスライムをその剣で轢くのだ。


フィオルのレベルが上がった。


フィオルは

「神のエッチ。着替えもみたんでしょ」

空に向かって言葉を投げかける。しかし、気まずさからか、言葉は返ってこない。


「…神?」

フィオルは不安になった顔をした。


「神…。ねぇ、神ったら」

フィオルは、あれが最後かと思うと、涙すら浮かんでしまう。だって、フィオルは、神が男だからといって、プイッとそっぽ向いたのだ。本当はそこまで怒っていなかった。だって太ももを見られたぐらい、ちょっと、『見る気はなかったんだよ』って言ってくれるだけでもいい。

最後になるなら、あんな態度、取るべきではなかった…


フィオルは落ち込んで

「嫌いになっちゃったかな」

そう言った。

それでも返事がないので、フィオルは空に向かって


「神ー。ありがとー。私本当は怒ってないよー。男の神も好きだよーちゃんと見ていてね……」

叫んだら、


『はいはい。じゃあ、ここで私の出番は終わり。頑張って下さいね。』


「神!」

フィオルは嬉しそうな顔をして、空に向かって手をふった。別れはさびしいけれど、きっと大丈夫。だってきっと空から見守っててくれる。

フィオルは再び剣を引きずりながら町を目指すのだった。






神と別れ、立派な勇者になると誓うフィオル。フィオルは突き進む。スライムを地味に轢きながら。

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